18-3.半分こ




「壮観だな」



「ですね」



 テーブルの上はまさにパーティ状態。


 所狭ところせましと並ぶ魅惑のお祭りラインナップに思わず腹が鳴る。


 この量となると、さすがに正臣一人では食べきれない。


 シェア前提の量なのだが、正臣の心は落ち着いていた。


 なんというか、吹っ切れた。


 シェアと言っても箸は別だ。そもそもそこまで気にすることもなかったのかもしれない。



「んじゃ食べるか」



 椅子に腰掛けて、気になっていた焼そばを口にする。


 お祭りらしい濃い味付けがたまらない。



「どうした? 食べないのか」



 何故か席につかずに食べる正臣に視線を向ける美姫に声をかける。



「......なんか急に余裕ですね。あんまり面白くないです」



「おいコラ」



 抗議の視線を意に返さず、美姫は頬をプクリと膨らませたまま正臣の対面に優雅に腰を下ろす。



「とりあえず焼そば食べる?」



 頬を膨らませる美姫に絶品焼そばの入ったトレイを差し出すが、美姫はそっぽを向いて受け取ってくれない。



「.........正臣くんのせいで逆に私が意識しちゃったじゃないですか......」



「どうした?」



 横を向いてぽそぽそとささやくので美姫がなにを言ったか聞こえずに首を傾げる。



「別にいいですっ! ......焼そば食べますっ!」



 受け取るというか奪い取った美姫は、焼そばに視線を落として少し固まった後、焼そばを上品にすすった。



「あ、美味しい......」



「だろ? 多分このたこ焼きも美味いと思う」



 お嬢様育ちの美姫の庶民の味付けが合うか心配だったがホッとして、その勢いでたこ焼きをオススメする。


 ジッとたこ焼きを見つめた美姫がチラリと正臣の方に視線を向ける。


 視線の意図が分からず首を傾げると、席を立った美姫がちょこんと正臣の隣に腰掛ける。


 そしてたこ焼きを自身の箸で掴むと、左手をそええて正臣の口元に近づけてくる。



「......食べますか?」



「なんでそうなる!?」



「なんか私だけドキドキするの、しゃくなんですもん......」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る