18-2.半分こ




「あー、てかそろそろ腹減らない? なんか食べないか?」



 気を紛らわせるため、魅惑の香りをただよわせる屋台の方に視線を移す。



「そうですね。食べましょう。ええっと、事前に調べてきたんです。お祭りの定番と言えば、たこ焼きイカ焼きに焼そば、リンゴ飴と綿菓子にチョコバナナ。それと......」



「おいおい! どんだけ食べるつもりだ!?」



「お祭りはみんなで食べ物をシェアするんですよね?」



「それなに知識?」



「ネットですが?」



 予習済みですっ、と胸を張る美姫に思わず正臣は右手で顔をおおう。



「シェアってつまり......」



「半分こ、ですね」



「オレとお前で?」



「............ううっ」



 ここまで話してやっと気づいたようで、うめいた美姫の顔にじわじわと羞恥しゅうちの色がにじんでいき、隠すようにうつむかれてしまう。


 その仕草に、正臣にも恥ずかしさが伝染してしまい、顔を逸らす。



「......そういうのは仲のいい会長達と本番の夏祭りにやってくれ」



「......別に」



「え?」



「別に私は正臣くんと半分こ、イヤじゃ無いですけどね......」



「は?」


 

 美姫が指をさす先には座って食べられる飲食スペース。



「......好きなもの取ってきて、あそこでシェアしませんか? 私は甘いもの取ってきますので」



 正臣の意見も聞かず、美姫は草履ぞうりを鳴らして屋台の方に行ってしまった。


 意識し過ぎなのだろうか?


 美姫の背中に一つ首を傾げて、正臣はソースの香りの立ち込める屋台へ向かうのだった。




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