15-2.急募! 恋人役モニター




「ま、まあ......でもなんだって自分に?」



 そう言われるとちょっと興味が湧いてくるのだが、急にこんな美味い仕事が回ってくると変に勘繰かんぐってしまう。



「いつも生徒会の汚れ仕事ばっかり伏見くんには頼んでるから、たまにはこういうのもいいかなって思ったんだけど......」



 しおらしく項垂うなだれる結衣。


 なんというか疑ってしまって、とても申し訳ない気持ちになってしまった。



「会長、頭上げてください」



 潤んだ瞳をたずさえて顔を上げた結衣にドキリとする。


 この人も超絶美少女なんだよなぁと思い出したように正臣はひとつ咳払いをした。



「わかりました。それくらいのお願いなら引き受けさせていただきます」



「本当!? ありがとう伏見くん! と、いう事だから頼むわね美姫ちゃん」



「はい?」



 潤んだ瞳を引っ込めた笑顔の結衣が、コーヒーをすする美姫の肩を叩く。


 状況を全く理解できていないのか、美姫の口からボケっとした声が漏れている。



「あれ? 言ってなかったっけ、このモニター役は高校生カップル、つまり恋人想定で募集されてたから、男女一人ずつの選出だったのよ」



「「なっ......」」



 ニヤニヤしながら述べた結衣の衝撃発言に、正臣と美姫の声が見事にハモってしまう。



「きゃっ。さすがお似合いね」



 結果、何か壮絶な勘違いをしている気がする結衣を喜ばせてしまった正臣は、慌てて先ほどの承諾を取り消すために激しく首を左右に振ってみせる。



「やっぱりなしで! 恋人......? さすがに美姫もそんなモニター役イヤだよな!?」



「.........まあ、私生徒会役員ですし? 断る理由はないっていうか......」



「なにぃ!?」



 まさかの裏切り。


 正臣からそっぽを向いた役立たずの美姫を無視して結衣に詰め寄るが、ポケットからスマホを取り出し、耳に当てた結衣に右手を突き出されて思わず正臣は動きを止めてしまう。



「.........私です。夏祭りのプレのモニター役決まりました。桜花学院二年A組の伏見正臣と早乙女美姫よ。よろしく」



 いつものおふざけムードゼロで電話した結衣がスマホをポケットに戻すと、破顔してピースサインを正臣に向けた。



「えへ。てことで伏見くん、美姫ちゃんのエスコート、よろしくね」



 そんな結衣の表情に本日2回目、正臣のこめかみがストレスでピクリと動くのであった。

 

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