14-2.オレのこと、パシリと勘違いしてませんか?
「それで正臣くんは夏休み何か予定などあるのですか?」
「オレも特にないな。図書館に通って勉強でもするかな」
勉強が好きで暇さえあれば参考書を広げている正臣にとって、図書館はタダで勉強できる最高の場所だ。
予定がない正臣にとって、どうしようもなく長い夏休みでかなりお世話になることが予想された。
「まったく、灰色の青春ですね」
「そういうお前はどうなんだよ?」
「さあ? どうでしょうね」
人に予定を聞いておいてはぐらかされた事に少し思うところがあったが、別に美姫の予定を聞いたとて大した反応は出来そうにないので流しておく。
「......そっか。図書館かぁ。ふふっ」
一人で笑う美姫に首を傾げて正臣は机の上に出ている私物を鞄に片付け始める。
定期考査最終日は午前中でカリキュラムが終わる。
今日はテストで疲れた身体を
「......なんか、珍しく浮かれてますね?」
「まあな。正直、こうやってお前と話してる時間も
話しかける美姫に目もくれず片付け終えた正臣は鞄を
むうっという、隣から聞こえた
「そんなに早く帰りたいんですか?」
「ああ。ちょっと予定があるからな。今日は家でゆっくりコーヒーを飲むって決めてるんだ」
じゃあな、と美姫に吐き捨てて教室を出ようと歩み始めた時だった。
不意に鳴った全校放送の合図を告げるチャイムの音に、騒がしかった教室が静まり返る。
『全校生徒の皆さん。定期考査、お疲れ様でした。生徒会より連絡します』
スピーカー越しでもよく通るおっとりとした落ち着く声。
声の主が桜花学院の会長である結衣だとわかると同時に嫌な予感がする。
『二年A組、
クラスの男子から集まる憎悪の視線。
固まる正臣の肩をふわりと叩いた美姫が顔を覗き込んでくる。そして顔はどこか人を小馬鹿にしたような表情で、正臣をイラっとさせる。
「残念でしたねー。コーヒー、私にも淹れてくれますか? 生徒会室で」
このやろう。
憎たらしさをたっぷりと含んだ美姫の声音に正臣のこめかみがピクリと動いた。
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