13-3.ファッションショー




「二人とも、服は選んだわね。早速お着替お願いします!」



 結衣に頷いた二人が素直に更衣室に入ってカーテンを閉める。


 なんというか、非常に居心地が悪い。


 当然、更衣室の中は見えないのだが、しゅるりしゅるりと布がこすれる音がここまで聞こえてくるため、いやおうでも更衣室の中を想像してしまい、心臓が強く脈打ち始める。



「あの会長、オレちょっと......」



「お待ちなさい」



 この場は刺激が強すぎるので逃げようとしたのだが、笑顔の結衣に襟首えりくびを掴まれてしまいそれは叶わない。



「ねぇ、伏見くん」



「......なんですか?」



「さっき美姫ちゃんと何かあったの?」



「へえっ!?」



 我ながらわかりやすく動転してしまうと、正臣の声に反応したのか、美姫が入っている方の更衣室からもなにか落としたような派手な音が鳴る。



「やっぱりね。くぅ〜。全く、油断も隙もなく青春するんだからぁ。お姉さん嬉しくなっちゃう。この、このぉ!」



「......本当にとっても嬉しそうですね」



「で、何があったの?」



 言えない。会話の流れでつい美姫に美人と言ってしまったとは。


 言い淀んでいると、脇腹グリグリ攻撃を仕掛けてきた結衣が、早よ言えと言わんばかりにどんどんその攻撃の威力を増していき、遂には耐えきれない領域まで差し掛かってしまう。



「わ、わかりました! 言います! 言いますから!」



 観念して悲鳴を上げた途端、美姫の入っている更衣室のカーテンが開く。



「ダメ! 正臣くん言わなくていいですから!」



 真っ赤な顔だけカーテンから出した美姫の姿が正臣にあらぬ妄想を抱かせる。


 固まる正臣と目が合うと、美姫は真っ赤な顔を更に沸騰ふっとうさせ、カーテンの中に引っ込ませた。



「そんなに、見ないで下さい......」



 何故か妙になまめかしい声を上げた美姫に、正臣は頭を壁にぶつけてなんとか自我を取り戻す。


 そんな二人に交互に視線を送っていた結衣がニンマリと笑う。



「これは後で美姫ちゃんから根掘り葉掘り聞かないとだねぇ......」



「やめて下さい。マジで」



 まるで映画の悪役みたいにニンマリと笑う結衣に、怒りを込めて睨みをかせてみるが、全く効果はなさそうだ。



「......着替え、終わったけど」



 そうこうしている内に、凛子の入った試着室のカーテンが開いた。



「あの、どう、かな......?」



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