12-4. 幼馴染 vs お嬢様 リターンズ




「......ムカつく」



「......ムカつきますね」



「えー......オレなんか変なこと言った?」



「うふふ。なんだか楽しくなりそうねぇ。あ、そうだわ」



 何か思いついたみたいに手を叩いた結衣が、美姫の背後に回り込んで肩を掴んで不適な笑みを浮かべた。



「二人とも、ちょ〜っとだけ付き合ってくれない? 今から美姫ちゃんの夏用の服見に行くところだったのよ」



「ちょっと結衣さん!?」



「よかったわね〜。直接好み聞けちゃうかもよ? 今日の服だって会うわけでもないのに、あの人ってどんな服が好みなのかなって迷ってたし......もがっ!?」



 真っ赤な顔を不機嫌そうにゆがめた美姫が結衣の口を手で塞ぐ。



「ちょ〜っと、黙りましょうか結衣さん?」



「うふふっ。はーい」



 怒られてるというのに全く反省の色を感じさせない結衣が元気よく手をげて正臣に視線を向ける。



「ねぇいいでしょ、伏見くん?」



「まあ、凛子がいいなら。今オレ、こいつに荷物持ち頼まれてるんですよ」

 


「......いいよ。あたしも買い物の後服見ようとしてたし」



「え、そうだったの?」



 まさかそれにまで付き合わそうとしてたわけじゃないよな、と聞こうとしたが聞けなかった。


 睨み合う幼馴染とお嬢様。


 並々ならぬ雰囲気に思わず正臣の喉が鳴る。



「じゃあ決定! うふふ。楽しくなれ。私の休日!」



 不穏な雰囲気をかもし出す二人を尻目に、楽しそうに鼻歌混じでスキップする結衣に正臣は特大のため息を落とした。


 

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