12-3. 幼馴染 vs お嬢様 リターンズ




「あら伏見くん。お休みに奇遇ね」



 おっとりとした笑顔を向けた結衣の視線が正臣から隣の凛子に移る。



「ええっと、こちらの方は転校生の白壁凛子しらかべりんこさんね。初めまして九条院結衣くじょういんゆいです」



「あ、はい。よろしくお願いします」



 初対面なのに名前を言い当てられた凛子が慌てて結衣に頭を下げる。


 微笑む会長は凛子と正臣、そして美姫の順番に視線を泳がせた後、口元に手を当てた。



「......ひょっとして、お邪魔だったかしら?」



「いやいや、変な誤解しないでください。偶然そこでばったり会っただけです」


 

 さっきから微動だにせず目を細めて正臣を凝視ぎょうしする美姫が怖過ぎて、何故か会長ではなく美姫に向かって口が動く。



「私は何も聞いていませんが」



「や、なんか怒ってそうに見えたから」



「別に」



 プイッとそっぽを向いた美姫に結衣が例の肘ぐりぐり攻撃をして、「そんな顔しないのっ」とニヤニヤ顔でたしなめる。


 結衣の言う、そんな顔がどんな顔か気になったが、それよりも二人が手に下げている紙袋の方に興味を奪われた。



「その紙袋、有名な洋菓子店のやつですよね?」



「これ? そうそう! ほら、生徒会室に常備してる接客用のお菓子の賞味期限が切れちゃったでしょう? 今日は美姫ちゃんとその買い出しに来たの。ねぇ美姫ちゃん?」



 氷のような表情をいくばくか緩めた美姫がこくりと頷く。


 休日も生徒会のために時間を割くとは本当に頭が下がる。そう思ったあたりで、昨日スーツを借りたことを思い出す。



「そういえば昨日はスーツありがとうございました。ちゃんとクリーニングに出してから返しますので」



「あら。そんな気を使わなくてもいいのよ? というかあのスーツ、伏見くんにプレゼントしましょうか?」



「ええっ!? いやいや、あんな高そうなもの受け取れないです!」



「いいのいいの。どうせあれ父のお古で近々処分するつもりだったみたいだし。捨てるくらいなら着てくれる人に譲りたいわ。それに伏見くんに凄く似合ってたし。ねぇ、二人とも?」



 結衣が話を振った二人の方に目を向けるが、二人ともそっぽを向いてしまい何も言ってくれない。


 そんな二人の様子に結衣がうんうん、と首を縦に振る。



「二人とも無言の肯定ってことね」



 胸の前でポンと手を叩いて微笑む結衣に二人の視線が集まる。



「どうした? お前ら揃って顔赤いぞ」




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