12-1. 幼馴染 vs お嬢様 リターンズ





「で、なに買うんだ?」



 凛子と一緒に適当なレストランで昼食を済ませた正臣は隣を歩く凛子に声を掛ける。



「ここよここ」



 連れて来られたのは家具や小物を取り揃えるインテリアショップだ。


 なんでこんな所に? という顔になっていたんだろう、凛子が正臣の顔を見て肩をすくめた。



「あたしさ、最近一人暮らし始めたんだよねー」



「え、そうなの?」



「うん。ほら、桜花ってあたし達の家から遠いじゃん?」



 確かに凛子の自宅の近くに住んでいる正臣からしても、桜花は少し遠いと感じる。


 だが、せいぜい電車を乗り継いで片道1時間程度だ。一人暮らしという重たい決断を下すほどの距離では決してない。


 というか、そもそも何故凛子は桜花に編入したのだろうか。


 凛子的には一人暮らしするほど遠く、編入試験が難関と言われる桜花に。



「そういうわけだから調理器具が不足しててさ。ちょっと手伝ってよ」



「......まあいいけど」



 聞きたいことが山ほどあるが、凛子がずんずん店内に進んで行くので、仕方なく疑問を無理やり飲み下して後に続く。



「へー、結構色んなのあるのねー。こんなにあると迷っちゃうね」



 フライパンを持ち比べて正臣に微笑む凛子に「別に」とぶっきらぼうに答えて顔を逸らす。


 初恋の魔力は恐ろしいなとつくづく思う。


 あんなに酷いことされた上、三年も経つのに、凛子の笑顔を見ただけで心音が早まってしまうのだから。


 だからこそ、やっぱり聞かずにはいられない。



「なあ、なんで桜花に転校してきたんだよ?」



 正臣が通っている事をおそらく知っていただろう、桜花に編入した訳を。



「さあ、なんでだと思う?」



「質問に質問で返すな」



「厳しーなぁ。......何となくって言ったら?」



「ふざけるなよ」



 真剣に見つめる正臣の視線から逃れるようにフライパンに視線を落とした凛子がポツリと呟く。



「......忘れ物を取りに来た、って感じかな?」



「忘れ物?」



「そ。忘れ物。大事なね......多分、正臣にはわからないと思うよ」



 忘れ物。


 それが何をさしているかはわからないが、何となく正臣に関係している。そんな気がした。



「逆に聞きたいんだけど、正臣はあの子とどんな関係なの?」

 


「あの子?」



「あのお人形みたいに綺麗なお嬢様」



「ああ、美姫のこと?」



「ふーん、それで誰か伝わっちゃうんだ」



 フライパンから顔を上げてニヤリと笑う凛子に恥ずかしくなって、正臣はそっぽを向くしかなかった。



「付き合ってんの?」



「はあっ!? だからなんでそうなる!?」



 昨日詰め寄ってきた男子共といい、なんでそういう結論になるのか説明して欲しい。




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