9-1. Shall We Dance?



 迎賓館げいひんかんのバルコニーに連れ出された正臣は手すりに持たれる美姫の背中を見つめていた。


 湿気をはらんだ少し生暖かい空気が頬を撫でる。


 少々人混みに疲れていたので、そんな空気でも心地よく感じた。



「......それで、なんで正臣くんがダンスパーティーに参加してるんですか?」



 聞いてないんですけど。とデカデカと書かれた不満げな顔で振り向いた美姫に正臣は肩をすくめる。



「オレだって参加する気なんてなかったよ。会長にそそのかされたんだ」



「やっぱり結衣さんの仕業でしたか......それでそんな格好してるわけですね」



 眉を八の字にゆがめて不満げな顔で突然覗き込んできたので、正臣は慌てて美姫から距離を取る。



「やっぱこの格好、似合ってないか?」



 自分でも違和感があったので落ち着かないのが本音だ。



「なんかこの格好になってから、やけに周りの視線感じるんだよな」



 主に女子からと言葉にすると、不満げな表情そのままに、美姫の頬がプクッと膨れた。



「オレなんか変な事言ったか?」



「別になんでもないです。それに変でも、ないです......その.........かっこいいです......」



 そっぽを向いてポソポソと話すものだから、うまく聞き取れずに正臣は首をかしげる。


 珍しく機嫌の悪い美姫のせいにしてはいけないが、そろそろここからお暇してもいい頃合いなのかもしれない。


 無駄におめかししたこの格好を凛子や他のクラスメイトに見られてもバツが悪いし。



「じゃあオレ、そろそろ帰るわ」



「え。あ、あの! 待ってください!」


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