4.幼馴染、襲来
教室につくと、
立ち尽くす正臣に気づいた美姫が笑顔を
「おはようございます正臣くん。いい朝ですね」
「......おはよう。オレにとってはいい朝ではないな」
女子が、美姫が正臣の席に座っている。
それだけでも心臓に悪いのに、美姫と目が合った瞬間、昨日の居残り掃除の記憶がフラッシュバックして心臓が普段より早く脈打って嫌になる。
そんな正臣の気持ちなんて
「おい、そっから
「あ、そういえば今日転校生がやってくるみたいですよ」
「転校生?」
「はい。転校生。桜花に転校生なんてすごく珍しいです」
「ふーん」
幼稚舎からここに通う美姫が言うんだからそうなんだろう。
まあ、普通の学校に通ってた正臣にとっても転校生は珍しいのだが。
「ご存知の通りうちの学校、中途入学にかなり冷たいですからね。編入試験もかなり難しいって噂ですし。しかも六月ですよ?」
「確かに四月とかじゃなくて、六月に転校してくるってのは珍しいかもな。......てか、このまま話し続ける気?」
登校してくたびれてるのに、何が悲しくて自分の席を見つめたまま立ち続けなければならんのか。
「私はいいですけど?」
「オレはイヤだよ」
「はぁ。仕方ないですねぇ」
正臣の席から優雅に美姫が立ち上がる。
「どうぞ。席、あっためておきましたよ」
すれ違い様、正臣の耳元に右手で輪っかを作って美姫が
美姫がさっきまで座っていた席を見つめて思わず口に溜まっていた
「どうしたんですか? 座らないんですか? せっかく退いてあげたのに」
背中から聞こえる跳ねるような楽しげな声にありったけの恨みを込めた視線を送りつける。
「......今、座ろうと思ってたところだ」
振り向いた先にあった、からかうような挑発的な美姫の瞳から逃れるように視線を逸らす。
「ひょっとして、変なこと想像してますか?」
「はぁっ!? してないしっ!」
この温もりが美姫のものだと思うと、落ち着きかけていた心音が再び騒ぎ始めて胸が苦しくなる。
「ねぇ正臣くん、私の温もり、感じますか?」
「......べ、別に?」
「顔真っ赤ですよ?」
「うっさいわっ!」
たまにはビシッと文句でも言ってやろうとした所で始業を告げるチャイムが鳴った。
それと同時に騒がしかった教室の
「みんなおはよう。知ってる人もいるかも知れんが、今日転校生がこのクラスに転入する事になった。入っていいぞ」
「はい」
廊下から聞こえた女性の声に、心臓が跳ねたのがわかった。
忘れもしない。いや、忘れられない声。
間違いであって欲しい。
だが現れた転校生の姿が正臣のそんな願いを粉々に粉砕する。
美姫とは対照的な腰まで伸びる黒のストレートの髪を揺らしながら歩く少女が、教壇に立ってこちらに向き直る。
「初めまして。
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