第2話『放課後に』

「はあ、やっとつまんねー授業がおわったぜ」

 翔太は久しぶりの学校が終わり、文句をつぶやきながら、家に帰っていた。

 「宮田翔太か……面白い人間だ……。」

 翔太が聞いたことのない声がした後ろの方を見ると、電信棒の陰に隠れている心を見つけた。

 「なに、尾行してきてんだよ。」

 翔太が心に詰め寄った。

 「び……尾行してるわけじゃないよ……、だ……だって僕ら家近くだろ……?」

 目が泳ぎながら、必死に弁明をしていた。

 心は中学生ぐらいの時からよく年齢より幼く見えると言われており、高校1年生の冬になってもその幼い顔は健在であったため、少し罪悪感を覚えた翔太はオレに構うんじゃねえと吐き捨て、そのまま走り去った。

 どうしてこうなってしまったのか……心は少し昔のことを思い出していた。

 翔太と出会ったのは小学1年生の時だった。

 心は昔から少し体が弱く休みがちだった。

 そのせいでクラスから無視されるというようないじめを受けていた。

 それに対し、翔太は異議を唱え、いじめの主犯格のもとに行き、思いっきり殴った。

 そのことで、先生に長々と説教をされたりはしたが、いじめは少しずつ収まっていった。

 心は翔太に対してどうしてあんなことをしてくれたのか疑問に思い、聞いてみた。

「父さんが言っていたんだよ。自分の信じた正義は曲げることなく貫き通せってな。」

 そこから翔太と心は唯一無二の親友となっていった。

 しかしあの日が訪れた。

 両親が殺害された翔太は誰ともかかわろうとせず、心もまたどう接すればいいのか分からなくなってしまったのである。

 そのせいでずっと二人の関係はこじれたままなのである。

 「どうにかしないとな……」

 心は一人、そうつぶやいた。

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