第4話 扱いづらいパートナー
『クロヌイさ〜ん♪』
向こうからルサが走ってやってきた。
『この間言われた通り、「ちゃんとした魔法使いが入ってくるまでお店はお休みします。」って言ってきたよ!』
『俺は提案しただけで実行しろとまでは言ってないぞ。』
『え〜⁈私の事思って言ってくれたんじゃないのぉ〜⁈』
『異性の気持ちを汲み取れるほど俺はできてねェよ。』
『でも!私は嬉しかったよ!』
ハイハイとクロヌイは適当に返事した。
『私は!ウレシカッタ!!ウレシカッタぁぁぁ!!!』
『分かったから黙れ!犬耳!』
クロヌイはルサを連れて人目のつかない路地裏に入った。
『コレ着ろ。』
クロヌイはパンパンのリュックサックから何かを取り出してルサに渡した。
『何コレ?』
『衛生管理局の制服だ。』
『何で?』
『水商売店に怪しまれる事なく内部調査するんだったら客になるか衛生管理局の輩を演じるかの2択だからだ。』
『内部調査するの?他店の?』
質問しかしてこないルサにクロヌイは若干イライラしていた。
『いいか?一度しか言わない、よく聞け。今からお前は俺と色んな店を回る。そして、そこで商売してる女の股に片っ端からこの綿を入れて粘液を採取しろ。以上だ。』
クロヌイは少しだけルサを睨みながら言った。
『一つだけ…質問いい?』
『さっさと言え。』
『その…女の子が嫌がったらどうするの?』
『そのためにお前がいるんだろ。』
クロヌイにそう言われた途端ルサの脳内に色んなイメージが浮き上がってきた。
『オホッ…♡悪くありませんなぁ…』
『分かったらさっさと行くぞ。』
◇◇◇◇◇
『いらっしゃいませ〜!』
『あの衛生管理局の者なんですけども、オーナーさんっていらっしゃいますでしょうか?』
クロヌイは偽物の衛生管理局関係者のバッチを見せながら言った。
『衛生局の方ですね!少々お待ちください!』
受付の妖精はオーナーを呼ぶために店の奥へと入って行った。
『クロヌイさんって凄いね!マジの管理局の人じゃん!』
『黙ってろ。』
しばらくするとオーナーらしきガタイの良いゴブリンが出てきた。
『いつもご苦労様です。立ち話もなんですからどうぞコチラへ。』
『ありがとうございます。』
『アザっス!』
適当な返事をしたルサをクロヌイは静かに睨んだ。
案内されたのはオーナーの自室でシャンデリアや自画像も飾られ、高そうな食器も小綺麗に棚に並べられており高級宿のようだった。
『さぁさぁ、遠慮なさらず腰をお掛けください。』
『ありがとうございます。』
『それで今回はどのようなご用件でしょうか?』
『それがですね、最近この辺りで新種の性病が流行りつつあるそうなんですよ。その病の蔓延を未然に防ぐために従業員の方達にご協力して頂きたく本日伺った所存です。』
『そんなんですか!いや〜私とした事が存じ上げていませんでした。しかし、私もこの店のオーナーなので調査に協力的じゃない子に関しては目を瞑って頂きたいです。』
『もちろん検査は私の助手が1人で行うため営業を妨害するような行為は一切致しません。』
『それはコチラとしても非常に助かります。』
『それでは早速助手が作業に入りますので…』
バタンっ
クロヌイが説明を終える前にルサは検査キットを持って部屋を出て行っていた。
『おなごッ♪おなごッ♪元気な女子はおらんかねぇ〜♪』
ルサがスキップしながら人を探していると角からいきなり誰かが飛び出してきた。
『ゴボッ!!』
ぶつかったと思いきやそこは水の中。ルサがぶつかったのはスライムの風俗女だった。
『あっ!すいませ〜ん!』
『っぷッは〜!!』
『お怪我ないですか?』
『あ、ありがとうゴザマス!』
『見ない顔…もしかして新入りさん?』
『あっ、イヤ…違うんです!ワタクシ衛生管理局の者です!変なビョーキが流行ってるので検査しにきました!』
『「病気」ですか?何それ怖い…』
『コワイヨネっ!ヨカッタラアナタモケンサスルゥ?』
ルサはスライムの女性を前にして妄想が止まらなくなった。
『私はスライムなので病気には耐性があるんです。でも他の子とかはどうなんだろ…よかったらみんな集めます?』
『えっ!!いいの⁈』
『はい、この時間帯ならまだ誰も仕事してませんし。』
数分後、あっという間にこの店で働く10人の異なる種族の従業員が集まった。
『そ、ソレではみなさん…ま、股を…ひ、ひ、ヒライテクダサイ…』
ルサはニヤつきが隠せずにいた。
『あ、あの〜…それ私たちが自分でした方が早くないですか?』
『へっ?』
『いや、アナタが一人一人やるより私たちが各々やったやつをアナタに提出した方が効率いいんじゃない?って話。』
そう言われてルサの脳は思考活動を停止した。
30分ほどしてルサは最初に案内されたオーナーの自室に戻ってきた。
『もう終わりましたか!早いですね!』
クロヌイも「お疲れ様」の一言ぐらいは言おうと思っていたがルサの表情を見て言う気が失せてしまった。
『クロヌイ…さん…わたし、私は…』
『なるほどこの店の従業員さん達は特に異常がなかったのか。オーナーさん調査は以上になります。ご協力ありがとうございました。』
クロヌイはそう言ってルサの手を引きながら急いで退店した。
『頼む…この仕事してる間は「ルサ」を押し殺してくれないか?』
『ムリだよクロヌイさん…だって目の前にあるのに触れもしないなんて…』
クロヌイは今になって人選をしくじったと痛感したがここでルサを手放す訳にはいかなかった。
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