第16話

「初めての赤子の対人戦は黄金水による放尿プレイってあるあるだよね。驚いてネイルが剝がれそうになったよ。」


「あんた、赤子の大きさを確認しようとしたんだろう」


「何言ってんのよ。ハハハ。でも、ちょっと大きくて被ってなかったらびっくりしたけど、のぞきこんだわけじゃないよ。」


「良いものもってるなら将来安泰だね。ハハハ。」


・・・・・・


冗談をいいながら僕を優しく大きな胸で抱きしめつように抱っこをしてくれる白大鬼娘のハクさん。


ハクさんを囲み和気あいあいと語る鬼嫁ともいえる鬼畜な集団。もとい賽の河原の互助会というべき妖と人間たちの一組織だ。この仮想世界におけるチュートリアルの舞台にもなっているこの場所はれっきとしたこのMMORPGにおける幽世の一地域である。


創り出したNPC達同様にゲームの舞台となる仮想世界で死んだ場合における復活までの待機所の側面もあるが復活したくない者や復活できない者もここにいる。


本人達に言わせれば、現世より幽世のほうがいいらしい。なぜならば、現世ともいえる仮想世界でいやがらせやいじめにあったり、惨く殺されたり、事情はそれぞれあるがここにいたほうが同じ境遇で気兼ねなく、気の利いた人も多く人間らし過ごせるらしい。


例えばこのまま未練も捨て天国でも地獄に行っても、もしかしたら天国にいけても私を助けてくれなかった人がいたら、もしくはその人が天国にきたら。もしくは地獄に行ってもは惨いことをした人達がいる、もしくは来るとしたら、見て見ぬ人が住む現世に輪廻するより、ここにいたほうがましである。※NPC達の声から抜粋※


どの世界でも井戸端会議は最高の娯楽である。赤ちゃんになった僕を肴として、さまざまなあんな話やあ~れ~みたいな話に、ホーホーほーというようなこのMMORPGのまめ情報から攻略情報はもとよりこの世界線以外の話までここにいれば下手な情報を自分でかき集めるよりか確かである。


だってここは【死人に口有り】のホットスポットだからだ。


本来は死者たちにとっては地獄にしろ天国に向かう通り道。素通りする場所なのにも関わらずゴシップネタに飢えた妖やらここに腰を据えて住み始めた者たちからすれば情報取得という名をかりたある種のナンパスポットであった。


そんな感じで聞けた情報によるとこのMMORPGのシステムの規格は汎用バージョンなのか研究所以外のMMORPGにも限定的ながら接続可能らしい。それにバックドアらしきものがあり時折ヤバいモノが発生する場合があるそうだ。こんなことは開発者やバグ取の専門家からすればあるあるなのかもしれないがコールドスリープ中の攻略者たちからすればクレームの対象である。まぁ耳の痛い話である。


なので、今回、僕や医療カプセルに入った幼女の心の崩壊を喰いとめている防衛本能を具現化した物を仮想世界に送り込んだアイちゃんの手口が何となくわかってしまった。


そんなことより、イレギュラー用チュートリアルとして設定された債の河原だが、初期の頃に比べると相当変更が加えられたそうだ。いや、正しくは様相が人々や妖達の交流により変容したせいだ。


簡単に説明されていたの聞いたのだが納得しまった。


なぜならば近くに住む童子たちが賽の河原近くの草原に建てられた小さな学校のようなところで勉強をしていたのだ。赤ちゃんの僕を抱っこしているハクが賽の河原から連れてきてくれたのである。


教鞭をとってる女教師はよく見ると豊満な胸を押さえつけるようなワイシャツとパンツスーツに鞭をもって教えていた。


「ひと昔前は親より早く死んだ子供は賽の河原で石を積み石塔を朝から晩まで積んでいました。それを難癖をつけては壊す仕事を請け負った妖達もいました。ある時、貶められた若い聖女が現れました。聖女になる前は公爵令嬢だったそうです。生きている時の黒歴史はわがままし放題の悪役令嬢で天下に名を馳せましたが学園に入学してからは素敵な王子様達に出会いがきっかけとなり心を入れ替えて、いつしか聖女といわれるまでになりました。それからは人々からの信頼が厚くなり人望にも恵まれました。しかし、因果応報というべきか言われもない罪で断罪されて塔に幽閉されてしまいました。しかし人生は谷あり山ありというもので、聖女を助けろと革命が起き幽閉された塔から解放され逃げ延びました。その後の人生も順風満帆とはいえませんが革命の指導者となった聖女は人生を全うしたのです。そんな、誇り高い聖女がここ、賽の河原で理不尽に石積をする幼子を救うべく立ち上がったのです。そして何年もこの地で一人ひとり説得し続けてこの地は別の形として成り立ち始めました。互助会もその一部で・・・・・・」


イレギュラーチュートリアルを攻略した聖女の子孫が僕を抱っこしている大白鬼娘ハクである。この賽河原で互助会の現在の会長だと教えてくれた。そして、飴を僕の口に入れながら、現在の状況を独り言のように吐露している。


「いい大男いないかな。少しくらい頭の悪いくらいが私にはちょうどいいんだけどな。基本的ここに賽の意河原に出稼ぎに来る妖は小物なんだよな。この前話した糞鬼は銭に汚く貧乏で弱いものいじめが大好きな奴で思わず手が出ちまったんだよ。母様に怒られたけど父様はよしよししてくれたからいけど、どっかにハンサムなイケオジでもいないかな。でも、こんな赤ちゃん抱いていたらモテないよな~。この際、見知らぬ赤子を育ててショタ道を究めるかな。」


どんな世界でも心に一本の芯がなければ続かないものである。2、3年だけでも良いからとりあえず何もできない俺の面倒を見てくれと願う僕であった。

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