第8話

メインサーバールーム兼メインコントロールルームの目の前に着いたのはいいが、山盛りの消化中のスライムと崩れかけたゼリー状のスライムの死骸やらで入ることができなかった。


仕方がないので隣の非常電源が設置している空調管理ルームからメインサーバーコントロールルームに入室することにした。


ドアを開けると、独特なダクト音らしき重低音轟音が僕の耳をつんざいた、思わず目までつむり耳をひっぱたくように両手ふさいだ。


キーンと耳鳴りしながらも片目をまぶしそうな太陽を見るように見開いた。しかし、暗闇の空調管理ルームは電源ボタンに表示モニターやら機器のメーター類などの灯りがついているが、時折、光に集まる蛾のような物体がチラチラと横切っている。


段々と夜目に慣れてきた僕は両目で計器類に飛び移り何かをしているものを息を止めながら観察した。


怪しげな何の正体いや形が判った瞬間、塞いでいる口で無理やりひゃっくりをするごとくビクッとしてしまった。震える口を開きながら静かにアイちゃんに小声で話しをする。


「アイちゃん。左右の手首がつながったような蜘蛛?指が蜘蛛の足のように這いまわって計器や機器を操作しているよ。」


「アース様安心してください。普通のタランチュラタイプの蜘蛛もいますから、それにまだまだ種類はいますのであたたかい目で見てくださいね。ほらほら、アース様の両肩にも2、3匹すでに乗っているでしょ。主人に懐くかわいらしい蜘蛛は嫌いですか?」


キラーンと右肩に乗っていた数匹蜘蛛の冷たい複眼の光沢が計器の光で輝きが増した瞬間、僕は目の前が真っ白になりの意識が飛んでしまった。


あのいわれぬ質感を無造作につかんでしまった後悔と、ヒンヤリとしたおでこを冷やしてくれていたスライムに感謝しながら、つぶさないように床に置いた僕は目の前にあの蜘蛛ではなく、蜂の巣をつついたわけでもないのに大量の蜂がブンブン威嚇音らしき羽音を立てている光景を目の当たりにしてもう一度意識を飛ばしてしまった。


そして、意識を取り戻したとき、数匹の蜂に首筋に針を打たれて続けていた。


意識が戻った僕にアイちゃんは笑っているようだった。


「大丈夫ですかアース様。スピAIに特殊回復薬を投与させたから安心してください。ここにいるゴーレムハンドスパイダー10匹は私が作った【スパイダAIメン】ゴーレムシリーズの特殊工作部隊の一分隊です。そして、蜂達2000匹は【FAILYスピAI】インセクトシリーズの特殊工作部も今回の作戦で迅速に施設や装備、通信網、輸送路などを破壊することで、敵の戦力を削減することを目的に配置したんです。敵はすでに排除済みです。もちろん、各国がこの状況下で送り込んできた第一波のスパイウイルスやスパイウエアやスパイキッドなど諸々、情報漏洩につながるスパイAIまで駆逐しましたのでこの研究所にもはや敵はおりません。」


ウフフ。風邪ひかないように入口横にあるロッカーから防寒着を出して着てね。マジで熱出るよ。」


いつの間にか空調管理ルームのいくつか電灯がついていた。部屋の中は少しどころかかなり冷えており、天井からは数センチのつららが天井いっぱい突き出しており、壁には薄っすらと薄氷がついている。空調コントロールする機器からか若干の排熱が出ておりこの部屋の空気中には水分はなく、もはや乾燥しきっている状態なので喉がカサカサするような気がする。


体の調子を気にしながらそろりそろりとロッカーに近づきゆっくりとロッカーの一つをあけると、マイナス貯蔵庫で着るような冷凍倉庫用の防寒着どころか宇宙服のような極寒地仕様防寒着がフル装備のセットが常備してあった。


「酸素ボンベと頭から足先まで密封状態になる空調付き防寒着なんて必要なの?」


「ここからマスターサーバールームに入ればわかるよ。メインコントロールルームはその先だからね。ヒヒヒ。」


悪い笑みを浮かべたようなアイちゃんがまた僕を脅かそうとしているのかな。


気にしないように僕はマスターサーバールームにつながる重工な扉を開けて入った。


そこは創造を絶する光景が広がっていたのだった。

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