第4話 アンとマシュウの出会いの場 ブライトリバー駅
アン・シャーリーは、陽気に叔母さんとの別れを振る舞っているが、内心少し心配もある。それは誰しも経験するはずだろう。土地柄とか気候とかはそう大した差は生じない。
一番は人間関係が一新する。いわばリセットされるのである。今まで住み慣れた場所で人間関係もまずまずなら、そこから異土地には動きたくないのが普通である。
しかし彼女の諸事情は、まだ不透明であり彼女自身は異土地での暮らしを逆に望んでいた。それを望むなりの値する理由があるからだのだ。
レイチェル婦人はマリラの家から帰る最中、諦め切った表情で坂道を下り心配そうにひとり呟く。
「はぁ」と溜息をつき
「まるで夢を見てるようだ。それにどう考えても可哀想なのは、その孤児(みなしご)の子供だ。マリラとマシュウーは子供のことについて何にもわかちゃいないんだもの」と緩やかな坂を降り歩き家路へつく途中だった。
先程と言ってる事が若干食い違うのはリンド婦人の癖のある性格がそうしてる事だろう。
子供の心配とさらに老夫婦の心配…一番は自身の心配をしてみるのもよい。それができれば他に目移りしないはずだ。余計なお世話をする事がリンド婦人である。
しかし、それが彼女の欠点でもあり長所でもある。
「あの二人が子供を育てるなんて…」
その想いは止めどりなく、湧いてくるのであった。
ブライトリバー駅のプラットホームで少女アンは、迎えを待ち侘びてプラットホーム端に土嚢が数個置いてある上へ脚を組み座り汽車が来た方角を手のひらで頬を支えて肘を鞄について眺めては駅の出入れ口をチラッと見渡すのであった。
そしてまだ誰も来てない事を確認して、土壌から立ち上がりスタスタと小走りに線路の上を片腕を水平に伸ばし歩いて見せた。
再びチラッと駅の改札口に顔を向け確認した。やっぱりと思い、まだ誰も迎えに来てない事を確認して顔を真っ直ぐに向き直り鞄を持つ腕と両方の腕を水平にバランスをとる。
アンはその場で居ても立っても居られない何か体を動かして気を紛らわせなければ、そう今の心が早るのを抑えられないのだった。
駅の周辺は長閑で小鳥のさえずりが数羽響き渡っていた。
マシューカスバートは馬車を駅に向けゆっくりと移動していた。そして紳士服のポケットよりペンダント型の時計を取り出し、時刻を再確認するが、老眼なので顔をやや時計から離して見ていた。老眼になればそうなるのだ。そしてまだ大丈夫といった具合だった。
アンは再びプラットホームの上に置いてる土壌に座り同じく汽車が来た方角を眺めていた。すると線路の反対側には緑茂った木々が並びその中に極めて目立っていた桜の木が花を白く咲かせていた。アンはその桜の木に何かを感じ取っていた。
6月になる春先はこれから周りは桜の花が満開になるであろうと想像を廻らすのだった。それはとても素晴らしい事だ気分が高揚するに違いないと。
これからの先また同じ季節に、この桜の木々の素晴らしい桃色白色の花達を私は観ることができるのね。と感無量の気持ちでいっぱいだった。
あ〜なんて素晴らしいのかしら…
そして馬車はとうとう駅舎に到着し、マシュウは馬車から降りて駅舎に向かって重たそうな腰を挙げゆっくりと歩を踏み出した。
直接出入り口がプラットホームになっており、さらに段差も2段板の階段があり角で靴に付いた土汚れを落として入場した。
プラットホームに入って来たマシュウにアンは、はぁっと気付き笑顔になって土壌から立ち上がって少し近づき紳士の男性の様子を伺った。その紳士は当然マシュウのことだ。
アンとマシュウが初めて面と向かったのであったが…マシュウは当然男の子を探しているためアンと顔をあわすが一向に声を掛けるつもりはなかった。
普通は挨拶ぐらい交わしても良さそうだがマシュウのことだキノコが嫌いなため、全力で無視した。以前にも言ったがキノコとは女性のことでマシュウの比喩的な例えである。
他の誰かが少女と待ち合わせでもしてるのだろうぐらいの気持ちでプラットホームの木製のベンチに腰を据えた。
これが少女とマシュウの初顔合わせであったのだが、男の子を探すマシュウに取ってはこの少女 アンは他人事でしか眼に映し出されてない。
マシュウはのんびり屋であったため、しばらくと言ってもほんの数秒、自身の正論に自信を持っていたが…ある何か違和感を感じ始めるのであった。
その違和感こそが、アンとマシュウの始まりとなるのであった。
赤毛のアン ネオまさよし @jackie2023
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