第3話 スペンサー婦人からの贈り物

 その頃アンはすでに汽車に乗っていた窓際から流れる風景を眺めていた。アンは今迎え入れようしてる婦人二人の会話が自分の事を遠くで議論してる事をしるよしもない。


 きっと良い人達に違いないと希望を膨らませ自身に言い聞かせて気持ちを静めた。


「それで今日…」レイチェルは徐々に理解を示すようになる。


「え…スペンサーの奥さんが電報を下さってねぇ」すると


 コーンとネジ式壁掛け時計から時刻を知らせる音が鳴った。壁掛け時計の音が一つ彼女らにとって一息つくきっかけになり、リンド婦人は落ち着きを戻すきっかけにもなるが…


「あら もう汽車の着く時間だ」マリラは編み物をしながら壁掛け時計に目をやった。


 ブライトリバー駅に汽笛を鳴らしながら汽車はスピードを徐々に落とし止まろうとしていた。車輪軸から白い蒸気が噴出される。カンカンカンカンと遮断機の音が継続的に鳴る。汽車が駅に到着する合図でもあった。


「ブライトリバーブライトリバー」と駅長は声を汽車と駅構内に出来るだけ通るように発声させた。


 汽車の客車ドアからプラットフォームへ一人の少女が降りたった。そのすぐ後ろから婦人も降りて駅長さんに声掛けして何やら話をして、すぐに少女に声掛けた。


 アンと一緒に降りた婦人こそが今マリラ婦人二人の話題を集めてるスペンサー婦人だった。


 スペンサー婦人の気品に満ちた容姿とそして清楚な身なりである事が、アンがここまで育ったことで不審人物でない事の証明になるのだろう。しかし、若干アンも性格の軸が普通とはかけ離れてるのであるが、それにいついては物語が進むにつれてそれが解き放される。


「いいわね。迎えが来るまでここを動くんじゃありませんよ」そう言いながらスペンサー婦人は汽車に乗った。


 婦人は駅長さんに事情を簡潔に伝え女の子をしばらく駅構内で見守ってくださるよう懇願した。


「ええ。叔母さん」と少女はスペンサー婦人に頷き、そして周りの長閑な田舎の風景を眺め駅中央へ駆け出そうとした刹那、トランクを落とし荷物がばらけたと同時に汽車が出発したのだった。


 慌てて少女は荷物をそのままにし立ち上がり叔母さんに顔を向けた。


「叔母さんありがとう」

 アンは元気よく腕を高く挙げ手を振って微笑んだ。


「シャーリー元気でね。お行儀に気をつけて、良い子になるんですよ」車窓を開きスペンサー婦人は笑顔で手を振った。乗った汽車は黒煙を排出しながら遠のいて行った。


 アンはひとりになった事で顔を引き締めてから微笑み、ばらけた荷物をトランクに入れたのだった。


 ブライトリバー駅は田舎にある駅で駅舎は小さい、プラットホームも木板張りで地面との高低差がさほどない。ホームから線路に降りようと思えば、いとも簡単に降り立つことができる構造になってる。


 そしてあの二人の婦人はと言うと


「ねえマリラ、はっきり言わせてもらえば、あんた達はどんでもない真似をしでかそうとしているんだよ。身も知らずの子を家に入れる…それも人頼みで」リンド婦人は心配で居てもたってもいられずの発言であった。

 

「そりゃあ…私も気がかりだったよ。だけどねぇスペンサーの奥さんは信用の置ける人だし、今度のことについちゃ兄さんが酷く熱心でねぇ」と編み物を続け時々目線がレイチェルにそして編み物へと戻る。


 レイチェルは少し声を荒げて過去に街の住人が孤児院から引き取った子供について語った。


「だけど孤児院の子はいけないよ。つい先日だってモリソンの孤児院から来た子がやったて聞いたけどね…井戸の中に毒薬を投げ込んだんだよ」と興奮した様子で語った。

 

 真相はなんでも張本人しかわからない。情報は人から人へ伝わってどこかで歪曲され捏造される事もある。


 人伝え連想ゲームのように

 

 一番は自身の目で見て聞いて感じる事が大切であるのだが、本当か嘘か測る事のできない情報は鵜呑みになりがちだ。

 

 あとはどこまで信じる気持ちがあるかであるが詐欺まがいのあるこの世の中ではその人の顔や一言々や動作を事細かく観察するのが予防策に繋がる。


 怪しさが一欠片もあれば信用に値しない。だがその点スペンサー婦人への信頼性はリンド婦人を抜かすかも知れないが、天秤に掛けてはならない。


 それを見かねてマリラはレイチェルに顔を向けるが一向に冷静で編み物を続けた。さらに


「寸前のところで一家全滅しかけたって言うじゃないか」レイチェルの鼻の穴はやや膨らむ。もうマシュウもマニラもきっとその子に殺されるに違いないと半分確信してるのである。


 マリラもリンド婦人が扱う情報には、信憑性にたる物差しがどこかにあればいいがと思う。時々そう思った。だが友達が言ってる事は大事に胸にしまう。リンド婦人は私の事を心配で言ってくれてるのは充分に理解できた。


「最もそれは女の子だったて言うしね」とレイチェルは上目遣いになり少し肩の力を落とした。あぁ〜神様どうかどうかこの二人に御慈悲を分け与えくださいませと心で祈るのみだった。


「あら…うちは女の子を貰うんじゃないんだよ。まさか女の子なんか」と自信気である。


 今駅に降り立った人物が女の子である事をまだ知らない。それを知ってしまえば…さてどうマリラの感情が動くかであるのだが…


 マリラとマシュウが孤児院から譲り受ける子は果たして天使になるのか悪魔の申し子になるのか?既に賽は投げられたのだった。

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