第29話
詰め所では一足先に、私達と一緒に宮殿に入ったヒスイさんが居た。
ミハイル様を始めとする魔道士団の皆さんが遠征に向けて準備をしている。
「お、第三師団の面倒ごとは終わったかい?」
「あぁ。第三師団でさっき切った団員の補充は、俺がメンバー選出していいって言ってたが、誰でも良いのか?」
「いいよ!他のメンバーも彼らほど酷くはないにしても、つらいだろ?」
「仕事を少しでも任せられる程度はいて欲しかったな」
そっか、さっきのメンバーが極端に酷かっただけでほかの人たちもそこまで優秀な人じゃ無いんだ。
ガウリ様はそれだけ気苦労されているのね。
「グレン、ルルシア。お前達は俺の部隊に入れ」
「え、私達ですか?」
「おいおい、俺はイガラシ財閥を継ぐ予定なんだぜ?」
そうだ。
私はともかくグレンはイガラシ財閥の次期商会長。
今回は私の為に同行してるけど、本来は王国軍に所属してはいない。
「構わん。臨時でグレンとルルシアには副団長とその補佐をしてもらいたい。今年は俺とオリバー殿下以外使えん」
「自分で言うのかよ」
「私としては願ったり叶ったりです」
この遠征後の事を考えると魔道士団に所属するのも悪い選択肢じゃないわよね。
陛下の状況も気になるけど、この国での生活も安定させないと。
まぁ今回はオリバー様の計らいで同行させてもらうから、入団テストもしないとだけど。
「いいですよねミハイル様」
「構わんが、グレンくんとルルシア嬢はヒスイの部隊に同行させると聞いていたが・・・」
そう言ってミハイル様はオリバー様の方を見るが、オリバー様もこれは予想していたのか首を縦に振っていた。
「いいよ。本当ならヒスイの部隊に入れるつもりだったけど、まぁガウリの部隊のが二人をコキ・・・呼び出しやすいからね」
コキ使うって言おうとしてた。
まぁコキ使われるのは目に見えてたし諦めてはいるけどね。
「じゃあ二人ともよろしく頼むぞ」
「あいよ」
「よろしくお願いします」
「さて、じゃあ二人の配置も決まったところで今回の作戦概要だよ!」
ヒスイさんが、机に地図を広げた。
王国から共和国は馬を飛ばして1時間ほどらしい。
敵の部隊はオリバー様の密偵により把握出来ているが、密偵が相手の支配下になったためそれ以降の情報は皆無。
追加で部隊編成されたら色々と困るわね。
「共和国付近に兵を先行させたところによると敵の数は概ね予想通りだ」
「え、そうなんですか?でもそれは敵がよっぽど自信があるって事ですかね?」
「さぁね。ルルシアちゃんに確認してもらいたいが、聖騎士の家系の部隊だけ予定よりずっと多いそうで、それは聖騎士の兵の詳細を知っていれば教えてほしい」
私は聖騎士の家とは余り関わりあいをしていないから、どれくらいの全容かはわからない。
だから力に慣れないと思うのだけど。
「聖騎士の部隊は100名ほどだ。ユーリしか確認出来ていないから、息子のカインは連れてきてはいないんだろう」
「100って言うとカインのお父さんの専属部隊の数くらいですかね?」
陛下に見せて貰った資料を思い出してみるが、確かに100名の聖騎士部隊と記されていたはず。
グレンも含めてこちらを凝視している。
え、私なんか変なこと言った?
「・・・そうか。じゃあ聖騎士の部隊はフルメンバーということか」
「向こうの人数は聖騎士の部隊が1番多いからね。逆に聖女の護衛が剣婦のみと言うのも気になる」
「え?」
ゴールドマリーの護衛が一人だけ!?
あれだけ囲われていたのに、それをシュナイダーが許したって言うの?
いや、ゴールドマリー自体もそんな状況で癇癪を起こさないのはおかしい。
「どうした?ルルシア、お前が1番帝国の情報に精通してる。なにかあるなら言ってみろ」
ミハイル様が、私が考えていることを察して話を振ってくれた。
これは共有しておくべき事よね。
「私が把握してるゴールドマリー・・・聖女の情報が合致しません」
「それは俺もだな。聖女は堕胎を繰り返すほど男遊びをしていた女だ。それも婚約者持ちを。だってのに護衛が女一人ってありえるのか?」
グレンの言うとおりで、彼女が男を侍らさないイメージを持てない。
少なくともどこかに隠れ潜んでいると見ても良いかもしれない。
「二人がそう言うなら、警戒はしておこう。追加の部隊の参戦もありえるということだな」
「まぁ、少なくとも今は一人だ。あたし達が追加の部隊が来る前に撤退に追い込めればいいってこったね」
今の情報だけでは、敵が潜んでるかどうかも確信が持てないし良い落としどころかな?
余り警戒しすぎて作戦に支障が出てもしょうがない。
今回は撤退させるのがメインなのだから、方法くらいいくらでもある。
「今回の作戦はあたしとミハイルとラフィールの三人で敵の主要の一人を殺害、撤退を促す事だ。帝国の領地で駐屯している以上、駐屯地を攻撃すれば戦争になりかねない。あたし達の任務はあくまで帝国軍の撤退だからね」
あれ?
でも共和国と隣接する領地って確か今は空白だったはず。
森だらけで魔物も多くて帝国的には手放しても問題ない場所だと思うけど。
戦争に発展するのかな?
「剣婦アースが現在別荘にしている土地だ。個人的にでも王国に報復に来れば、奴の"支配"の魔の手が迫るからな。くれぐれも深追いはしないように」
そうなんだ。
私が知らない情報までもう把握出来てるんだ。
「特にグレンくんとルルシア嬢はガウリの護衛だ。前に出るなよ」
「あぁ了解したぜ元帥」
「わかりました」
ガウリ様の幻惑魔法がこの遠征の要だ。
その護衛って事は崩れた瞬間作戦失敗を意味してる。
責任重大な仕事を任されたわ。
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