第26話
グレンが個人的にマシバ様からもらった屋敷でこの三日間を過ごした。
マリアやガウリ様、それにヒスイさんやモモさんにマシバ様やグンジョーも遊びに来た。
屋敷が広すぎてほとんどすることがなかった。
「ルルシア。息子を頼むよ」
「はい、マシバ様」
「そんな心配しなくても・・・」
「お前は時より抜けてるところがあるしな。それにグンジョーは王国軍のメンバーじゃないから動向はできないんだ」
そういうとグンジョーも横から頷きながらモモさんと一緒にこちらに来る。
「そうだぞ。ガウリ様の手伝いをするのは良いが、自分の身体も大切にしろよ」
「わかってるさ、グン兄。グン兄もモモを大事にしろよ」
「言われなくても」
二人はそう言いながら拳を合わせた。
男同士の別れって感じね。
もしかしたら帰って来れないかもしれないもの。
「まぁルルシアちゃんとグレンはあたしが死ぬ気で守るから安心しな」
「お前も生きて帰って来いよ」
そういうとヒスイさんとマシバ様は口づけを交わす。
流石に皆が見てる前なのに大胆過ぎるわ。
「流石に恥ずかしいぞ息子として」
「キャーえっちです」
「モモさん、これくらいでえっちなんて行ったらその先なんて」
「その先、ですか?」
モモさんはキョトンと首を傾げる。
えぇ・・・
グンジョーに目を当てるが綺麗に目を反らした。
思わずため息が出る。
グンジョーに呆れてるとマリアがこちらを指さして、大きな声で叫ぶ。
「いいかしらルル!貴女は絶対に生きて帰ること!ワタクシの友人ともあろうお方が、死んで帰ってくるなんて許されませんわ!」
「ふふっ、そうね」
マリアとはこの三日間ですっかり仲良くなり、あっという間に時が経ったわ。
どうやらマリアは極度の箱入りであり、マリアのお父さんのニコライ様が男は浮気して初めて甲斐性が生まれると言う妄言と、お母さんのセオトコス様も女は拳で浮気を止めるものなのと言う教えからこうなったらしい。
でも話してみたら可愛らしい人で、ガウリ様さえ絡まなければ至極マトモな人間だった。
「おいガウリ。この三日間、お前の婚約者にルルが取られてたんだが」
「俺が知るか!ルルシアには助けられた。俺も師団長としての執務が大変だが、毎日マリアが押しかけてきて面倒だった」
「お前、ちょっとは婚約者に気を遣えよ。政略とは言っても、これから夫婦になるのに」
「もちろん二人で過ごす時間は作っているさ。だがあいつの所為で女性団員が入団してくれなくて困っている。魔法師団の団員はここでしか出会いがないからな。酒屋に入り浸れて、平民とトラブルも何度かあってだな・・・」
「そりゃ、マリア様が悪いって訳じゃないだろ」
「わかってる。第三師団は俺みたいな若輩者が団長になったからって舐められてるんだ。貴族子息が居ない唯一の隊だから、年齢が序列と思って居る奴らばかりだ。今回の共和国への遠征に団員を連れて行くのも、オリバー様が悩んだ上に決めたんだ・・・最悪だよ全く」
「あー、苦労してんな。ドンマイ」
あっちはあっちで男の友情を育んでた感じだ。
グレンもどうやら、ガウリ様の第三師団の事務処理を手伝っていたらしい。
「ルル、くれぐれもガウリ様に付くネズミには注意して」
「マリア、ガウリ様はそんな不誠実じゃないわよ?」
「わかってますわ。そうじゃないんですの」
「そうじゃない?」
「ガウリ様の部隊は、ちょっと難があるのですわ」
平民だけで組んでる部隊でしょ。
確かに実力主義と言えば聞こえが良いけど、国に尽くすって意味合いで言うなら貴族よりは薄い。
だから裏切りやスパイが紛れ込んでる可能性がある。
でもそれはヒスイさんやオリバー様にも言われた。
絶対に信用してはいけないって。
平民にも国の為に尽くす人は多いと信じたいけれど、世の中そんなに甘くはないとも理解してる。
「大丈夫よ。私も事前に言われてるし」
「そう、ならいいですわ。それにルルもですわよ。貴女の母国が相手だもの。足下を掬われないように!」
「えぇ。最も、私のことを詳しく知ってる人間なんてそんなに居ないから大丈夫よ」
騎士団長やアハト様が来たら動揺するかも知れないけれど、それでも私は王国軍として遠征に向かうんだから。
だから覚悟は出来てる。
「私は、例え陛下が相手だとしてもちゃんと殺すわ」
「・・・ルル」
マリアが少しだけ悲しそうな顔をした。
心配してくれてるのね。
マリアは私の手を掴む。
「ワタクシは貴女の味方ですわよ。だからもう一度言うわ絶対に帰って来なさい」
「うん。王国よりもこの国の方が大事な人が多いもの」
「そう・・・こんな辛気くさい雰囲気は良くないですわ!行ってきなさい!帰ったら、貴族令嬢を集めてお茶会するからね!ワタクシ、貴女の服を用意しときますからね!」
「えぇ、ちょっと恥ずかしいけど楽しみにしてるわ」
私はマリアにお尻を叩かれた。
まるでお母さんね。
そして宮殿に向かう馬車に乗って、グレンの屋敷を後にした。
「すごいなルルシア。マリアは同姓の友人は少ないんだ。俺からも感謝する」
「感謝しないでくださいよ。私はマリアと友達になりたくてなったんですから」
「あぁ、そうだな」
私はここに戻って来る。
だから負けないわ。
今回同行の部隊との顔合わせのために、私達は宮殿へと向かった。
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