第17話

 オリバー様と同じブロンドでツインテールのこの少女は、オリバー様の妹であるオリエル王女様。

 ゴッドサウス王国では我が儘王女と呼ばれている。


「なんだいオリエル、愛しい我が妹よ。侍女が居なくなったのは、僕が必要ないと判断したからだよ?」


「居るわよ!これから私の着替えは誰にさせればいいのよ!」


「僕の侍女を貸してあげよう。ミスティ」


「はいオリバー様」


 オリバー様の横から急に銀髪の女性が現れた。

 魔法?

 彼女が現れるとき魔力は感じた。

 でも五大魔法属性のどれでもなかった。

 オリジナルの固有魔法?


「ミスティ!?い、いやよ!?ミスティ厳しいのに!?」


「でもオリエル、愛しい我が妹よ?君、僕の許可無く国庫の金を使ったよね?」


「それはお母様が使って良いと言ったからよ!」


「あのクソバ・・・母上は頭が悪いんだ。君は賢いからわかるよね?」


「えぇ!私は賢いもの!」


「じゃあこれからは無駄な散財はやめてくれるね?毎日1着ドレスを買えるくらいのお小遣いは出してるんだよ」


「えぇわかったわ!」


「じゃあ、ミスティに着替えを任せていいね?」


「もちろんよお兄様!」


 頭が痛くなる会話だ。

 恐らくミスティさんは彼女に取って怖い人なのだろう。

 だから嫌がったのに、別の話に持って行って持ち上げられてそのままオリバー様の望みに持って行った。

 誰が考えてもおかしな会話だとわかるのに、違和感なんて感じる間もなく話を終えた。


「いいんですか?」


「妹はまだ12歳だよ。我儘もそのうち落ち着くさ」


「寛容だな。あいつは阿婆擦れだろ?多数の貴族令息に手を出してるって聞くぜ?」


「別に肉体関係を結んでないなら問題ないよ。ミスティが影でついてるし」


「いやそれは・・・別にいいのか?」


「ダメよグレン。オリバー様がおかしいこと言ってだけだからね?」


 肉体関係があろうとなかろうと、誠実でないとダメなはずよ。

 

「酷いな~僕はいつでも誠実さ」


「オリバー様、でしたら早く婚約者を決めてください」


「考えておくよ。それよりもだ」


 やっと本題に入れるようだ。

 今日ここに来たのは、帝国の動向や今後の私の形振りについて。

 

「どうやら帝国は共和国への侵攻を考えてるらしいんだ」


 共和国って言うと、確か国王陛下が外交に行ってるとこよね?


「共和国って、お前の親父が今外交に行ってるところじゃねーか」


「そうだ。だから僕としてはこの侵攻はなんとしても阻止したいんだ」


 確かにその侵攻に国王陛下が巻き込まれる可能性もある。

 共和国を見捨てる選択肢もあるけど、それは殿下は考えていないようだった。


「それで俺達がそこに行くって訳か」


「稲妻にとっても悪い話じゃないよ。これを功績にすることで、この国の後ろ盾をつけ、国籍を発行する」


 なるほど。

 確かに何もしないままではこの国にいること叶わない。

 けれど、この国のトップを救ったとなれば話は別ね。

 でも待って。


「俺達ってまさかグレンも?」


「一人で行けば裏切りと取られる可能性もあるんだ。グレンにはどんなことがあっても稲妻と行動を共にさせるって言ってあるし、問題ないよね?」


「あぁ、それは望むところだ」


「でも迷惑じゃない?」


「何を今更。護衛役を受けた時からルルに対してのことなんて迷惑なんて思ってないさ」


「そっか、ありがとうグレン」


 グレンに甘えてばかりだから、何か恩返しができたらいいわね。

 今度欲しいものがあれば聞いてみようかな。

 でもグレンの買えないもので私が買えるものってあるかな?


「言わなくてもわかると思うけど、今回は僕は同行できない」

 

「そりゃ陛下が万が一殺された場合、この国があの王妃の支配下になるしな」


「そうだ。あのバカ上が権力を握れば3日でこの国は潰れるよ」


 そこまで?

 実際私は留学中にオリエル様とはお会いしたことあるけど、王妃様にはないのよね。


「そういやルルはまだあの馬鹿に会ったことなかったよな」


「いやでも、酷さは理解してるわよ」


「なぁ、今お前の母さんーーー」


 オリバー様がかつて無いほど顔を歪ませていた。

 そういえばさっきもクソババァって言いかけてたし。


「グレン、まだ出国するまでには期間があるからね。あのクソババァとは嫌でも会うよ。今はグレンの母ヒスイに護衛を任せてるからね」


「げっ!?母さんストレス溜まってそうだ。会いたくねぇ」


 ヒスイさんが!?

 でもヒスイさんが護衛って、王妃の所業耐えれるのかな?

 私の知る限り、彼女はかなり短気だと思うんだけど。


「因みに共和国に君達以外にヒスイの部隊と行くからね?」


「え・・・母さんの部隊かよぉぉ」


 私はオリバー様がニヤリと少しだけ口角を上げたのを見逃さない。

 あれはわざとだ。

 多分王妃の所業がオリバー様にもストレスになってるから八つ当たりしてるんだろうなぁ。


「アハハ、君が三年も国を開けていた恨みはここで晴らさせてもらうよ!」


「くっ、事実だから何も言えねぇ」


「何もかもほっぽり出してね!まぁこれからはかなりこき使ってくからね。覚悟しておいてよ」


 可哀想に。

 まぁ私の為にグレンは3年も開けることになったんだしサポートしないと。


「何人事みたいに見てるの?稲妻、君の事もコキ使わせてもらうからね?」


「え、あ、その、はい・・・」


 私もこれからグレンと一緒にオリバー様の手足となって働かされるのかと思うと、少しだけ憂鬱になりながらも嬉しい気持ちになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る