短編 仕事を休んだ日の日記

@barimukicyan

日記


あまりにもだるい

きょうは低気圧なのか、やたら元気がない自分に腹が立つ

ベッドでぐったりしつつ職場に連絡を入れなければならないので

スマホを持ち、ぐったりし、を繰り返していた

頭が重くやる気もない、体調悪いのに電話しなきゃ休めないなんて...

うとうとしてきた

そのままだと寝そうだったのでさっさと電話をかけることにした

「はい、神奈川うんこ倉庫の中村です」

「あ、おはようございます、うん丸です

今日は風邪気味っぽくておやすみしたいのですが、すみません」

「はい、わかりました、ゆっくりやすんでくださいね」

「はい、すみません、失礼します」

今の職場は簡単に休めるところが魅力だ

最低賃金だしそれ以外に魅力はない。

まあ女性でもやりやすい軽作業なとこもいいか...


そのままねむってしまった



「今日の授業はここまでです、ではお疲れ様」

教科書とノートをまとめて教室に帰る、

わたしは人恋しくて友人に話しかけた

「ねえ、らき子~、日本史絶対寝ちゃうんだよなあ、なんでだろう」

日本史は移動教室なので自分のクラスに戻る道で友人のらき子と話す

らき子は鼻で笑いながら言った

「うん丸ちゃんは大体の授業で寝てるでしょw」

私は顔で友達を選んでいるのでらき子はかなりかわいい

鼻でわらってもかわいいねぇと

「まあそれはたしかに」


自然と私もにこやかに返した


らき子は真面目な顔で話す

「うん丸ちゃんはしっかり勉強すれば結構できると思うんだけどね」

「んなこと言われたってやる気がないもん、むりだよw」

「そっか~」

適当会話はそこで終わった



自分のクラスの教室に戻り、席にどかりと座る

「次の授業は数学か~」

授業表を見てつぶやく

あれ?この表、どこかでみたことあるな

どこだろう、別の所

あれ?なんかがおかしい


私は学生なんかじゃない、すべての記憶が蘇ってくる


私がもう30近いこと、もうらき子との接点は無いこと

高校の人間の名前などほとんど覚えていないこと


瞬時に私はこれが夢であることを理解した

これはよくあることで明晰夢だと思った

大体これを理解した瞬間夢の中の

曖昧で整合性が取れていない部分が露呈して

夢が覚めるのだが、今回はそうならない


私は存分に遊んでやろうと思った




今は私の本当の記憶と高校の記憶がミックスされている状態なのか

なぜか授業で何をやっているのかもわかったし、クラスの人間の名前もよく覚えていた

しかも本当感があった、でも夢って見てるときは正常な判断できないもんな

とおもいつつ

話しかけたことのない人に話しかけてみた

昭和くんだ、彼は東方が好きで消しゴムはんこをよく掘っていた

しかもかなり上手い

「昭和くん、消しゴムはんこ何個くらいつくったの?」

「え」

昭和くんはかなり狼狽えた様子だ、たしかに私がまともに男子に話かける

なんてことは高校時代あり得なかった

「あ~、そうだな」

昭和くんはゴソゴソと机の中を漁った

きれいなポーチを開けて

その中には大量の消しゴムはんこが入っていた

わたしは素直にびっくりした

「え、すっご~い!!

これぜんぶつくったの?

ちょっとぜんぶ押してみてよ」

昭和くんは心底嬉しそうな顔をして

「頑張ったんですよ」と全部のはんこをノートに押してくれた

その全部が精密にできていて、高校生にしてはすごいやつがいたもんだわ

とおもった、まあ夢だから覚めてから考えたら微妙なのかも?

と、そこで授業開始のチャイムが鳴った

私は「ありがとね」なんて高校時代では言うはずのないお礼を言って席に戻った


「今日は指数関数・対数関数の続きをやっていきます」

なまえは何となく分かる

あれ、高校の記憶を持っているはずなのにぜんぜんわかんない

ノートを見てみるとほとんどなにも書いてない

そうだ、そもそも数学できないんだった

というか、夢いつ覚めるん?


なのでこれからの計画を立てることにした

本来は私は何故か卒業間際であるここらへんで美術部に入るはずだ、

そこでたのしい美術部ライフを送る


でも夢ならいろいろ試してみたい、う~んどうしようかな

運動はできないし、やっぱりいちばんは人間関係かな

ということで気になる人物を書き出す


いそ丸、たしか好きだった人だ、かなりかわいい顔をしている

今の私なら落とせる!とかアホなことを考える

ちょうどとなりの席に居るしね。


「ではこの問題を解いてみてください、分からなかったら分かる人に聞いてもいいですよ」

ちょうどよく先生が自習っぽい時間にしてくれた。


みんなも雑談タイムが来たとばかりに教室がざわめく

思い立ったら即行動!

「ねえねえ、いそ丸くん

この問題わかる~?」

いそ丸の目が点になる、そらそうか

これまで恥ずかしさからか自分から話しかけるなんてことは

したことがない。

「ああ、わかるよ」

かなりの間を置いていそ丸から返事が来た

「じゃあ教えてよ~」

にこりと言ってみる

「やだ」


まあ仕方ない、これまでの自分の行いが悪すぎる

話しかけられれば無視をし、突然叩いたりもした

そりゃあ、正攻法では無理だ

だがだからこそ燃える!!!


そこから私は毎日いそ丸攻略にいそしんだ

とりあえず話しかけてみて、仲を少しでも深める


いそ丸は段々と打ち解けたようで、いそ丸のほうから

話しかけてくることもあるくらいになった

「うん丸、きょうはまっすぐ帰るのか?」

「あ~、どっちでも」

わたしはこの生活に慣れて割と普通にいそ丸と接していた

いそ丸は高校生にしてはなんだか大人びているなと感じた

当時の私が野蛮人過ぎただけでいそ丸は悪いやつじゃなかったんだな...

いそ丸が緊張しているように見えたので目を向けると目があった、

やっと口を開く

「ファミレスとか寄らねえ?」

おお、ついに来た!放課後デートイベントだっ!!

かなり好感度が高くなっているに違いな~~いっ!


「いいよ、どこのファミレスにする?ここらへんってなんかあったっけ?」

私は爆発する嬉しさを包み隠しもせずニッコニコで答えた

「おお、たしか近くにデニーズがあったはずだからそこにしよう」

私の笑顔を見てか、いそ丸もにこやかに答えた



スマホが鳴る音で目が覚める

見ていた夢の記憶はすぐさま消えようとしていたが、やたらリアルだったなぁと思い返す

深呼吸をして、体調が少し良くなったことを実感する

2時間ほど寝ていたようだ

珍しくLINEの通知が来ていた、


「いそ丸」

”あけましておめでとう

おそくなってごめん

最近はどうしてる?

今年も会って飲もうな!”


そうだ、いそ丸とは連絡先を交換して、年に1回飲みに行く仲だった

最近は彼女と別れたって言ってたっけな

あれ?私はいそ丸の連絡先なんて持ってたっけ?何かがおかしい気がする

そういえば、ディスコードは?あれ?ディスコードってなんだっけ、

あるはずのない記憶があったような気がした

でもそれはすぐさま消えていって、頑張っても思い出すことができなかった。


わたしはスマホでディスコードと検索してみた、すぐにみつかった

なんだろうこのアプリ、通話できるアプリかぁ

リビングに向かうと母がいた、

「体調はどう?」

「結構よくなったよ」

母が机の上を指差す

「そういえば、おばあちゃんの家に10年前からの手紙、来てたよ」

「ええ~?あーそういえば高校のときに書かされたかもw

何書いてあるんだろう、こわいなあ、変なこと書いてそうで」

封筒を雑に破き、中身を出す


「10年後のうん丸へ」

”今、28歳でしょうか?私は夢の中でこの手紙を書いています

今日は2014年の2月20日です

私は神奈川うんこ倉庫で最低賃金週4で働いていて

ディスコードをやりながら絵を書いたりする生活をしていた記憶があります

そして28歳の2024年の1月あたりに体調不良で休んだあと、眠りにつき

いつのまにか高校時代の長い夢を見ています、夢の中だから何やってもええやろといろいろ

やっていますが、あまりにも覚めなくて若干怖いです。

「なんだこれ~w

ふざけすぎじゃん」

母も興味深そうに見てくるので手紙を渡してベッドに戻った


でもディスコードはいつできたんだっけ?

ウィキペディアで調べると2015年5月13日とあった

今は2024年1月12日だ、この手紙を書いたのは2014年の2月20日?

本当だとしたらさっきの夢と合致しすぎてる

ディスコードについてわたしも起きた瞬間に考えた

それだけは覚えてる、でもそれだけだ

あとは忘れてしまった。

手紙が本当だとしたら私の記憶に無いことをこの手紙の私は知っている

私は今東京うんこ商事で事務の正社員だ。

私は神奈川うんこ倉庫についても調べてみた、

2年前にできた会社じゃないか、どうして10年前の私が知っているんだ?


わたしは怖くなったが、どうしようもないので、忘備録としてここに書き込んでおく。


2024年1月12日15:51 うん丸著

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