危機一髪【カクヨムコン9創作フェス】

結音(Yuine)

かみひとえ

 消しゴムを忘れた。


 大変だ。


 こんな時に何をやっているのだ、自分!


 自分を責めた。


 責めたけれど…


 責めたところで状況は何も変わらない。


 慌ててしまうのは、よくない。


 落ち着け!


 落ち着くんだ。



 すー


 はー


 腕を上げて……は、できないから。

 とりあえず、自分の席で。

 解答用紙を見つめながら。


 深呼吸。


 落ち着け!

 落ち着くんだ。


 やらかしてしまった解答用紙を

 穴が空くほど 見て

 見て

 見て


 視界の端に

 小さな消しゴムを捉えた。


 あった!


 シャープペンシルの頭に

 ちょこんと 乗った 消しゴム。


 申し訳程度に、存在している それ。


 シャー芯が飛び出さないように 蓋代わりにくっついているだけのものだと 思っていたけど。


 こんな時に

 役立つなんて!


 助かった……

 

 ボクは、その 小さな小さな消しゴムに 助けられたよ、今日。


 これぞ、危機一髪?!


 あ!

「カンイッパツ」のパツの字も「髪」だ。

 間一髪。

 よし。

 選択肢は正しいものを選べ、だったかな。

 うん、できた。

「髪」だ。 


 まさに 髪の毛ほどのシャー芯を押さえている 小さな消しゴムに

 ボクは 今日 救われた。




 ……そんな、夢を見た。


 ――……


 共通テスト1日目の朝。

 ボクは、目覚めると 

 夢の中での教訓を元に

 筆箱に 消しゴムを2個入れた。



 親からは、

 弁当と一緒に 鉛筆も渡された。

「合格」と彫ってある

 五角形の鉛筆。







 試験会場に着いて、

 自分の番号の席に 座って。


 机の上に出した 消ゴム2個と

 愛用のシャープペンシル、

 受験票を 確認しながら。


 鉛筆を ぎゅっと 握り締めた。






 そういえば、

 鞄に付けられた御守も 五角形であったことを思い出した。












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