だったのに


やっぱストーカーか?

決めつけはよくないけど、ストーカーが犯人って考えた方が辻褄が合う。

となると、前回ストーカー未遂した隣のクラスの男子。

実際にストーカーしてる正体不明な人。

先日告白してフラれた愛が重そうな矢田やだくん。


いや、愛が重そうなのは完全に偏見なんだけど。

ごめんね、矢田くん。


「難しそうな顔して、どうしたの?」

「ごめん。ちょっと考え事してて」


考えてもどうしようもできないけど...

体育も終わり、六限目の科学。これさえ乗り切れば!!

いや、放課後も気を付けなきゃダメか。


「あれ?柚歩ちゃんは?」

「更衣室に忘れ物したって、戻りに行ったよ」

「さっき手洗うとき、ハンカチないって更衣室に置いてきちゃったかもって」


驚きのあまり、手に持っていたビーカーを落とす。


「ちょ、江里!何してんの!!」

「ごめん!私も更衣室に忘れ物した!!」

「は!!?」


皆の声を無視して、廊下を走る。

忘れてた。昼休みから体調が悪いって言って、保健室に行った矢田くん。

まだ犯人って決まった訳じゃないけど。

事故だとしても、危険しかない。早く行かなきゃ!


「柚歩ちゃん!!」


息を切らしながら、更衣室のドアを開ける。

誰もいない。でも行くときに誰とも会わなかった。


「南側階段...?」


北側と南側、更衣室から近いのは北側だけど、化学室は南側からの方が近い。

更衣室のことしか考えてなかったから、北側の方使って来ちゃった。

五階の更衣室、三階の化学室...絶対危ない!!


南側階段の方に行くと、柚歩ちゃんがいた。

よかった。まだ何も起こってない。

あれ?宮前くんもいる。

宮前くんも忘れ物したのかな?


そんな呑気なことを考えてる場合ではなかった。

柚歩ちゃんが宮前くんに背中を押されて、階段から落ちる.......


「柚歩ちゃん!!」


どうにか間に合い、柚歩ちゃんの手を掴めた...けど、勢いとかそういうのでこのままじゃ私も落ちちゃう。どうしたら......


「二人とも大丈夫?」


私ごと引っ張って、階段から遠ざけさせる宮前くん。

待って。脳がバグりそう。


「ごめん、宮前。なんか誰かに押されたみたいな感じになっちゃって」

「もうしっかりしなよ」


さっきのは幻覚?宮前くんが柚歩ちゃんのこと、押してたよね?


「江里ちゃんもごめんね」

「ううん。怪我がないならいいんだけど...」

「それが...さっきので足捻ったぽくて.......」

「保健室行こう。ついてくから」

「大丈夫だよ。保健室すぐそこだし」


いや、確かにすぐそこだけど。


「それよりも、宮前も江里ちゃんも早く授業戻らないと。あの先生怒ったら怖いんだから」

「でも.......」

「いいから、いいから」


その宮前くんもなんで、ここにいるの?


「じゃあ、行こっか。越前さん」

「......うん」



これは結局のところ、未来を変えることができたと見ていいのだろうか。

昨日、占い師の老婆と会った場所を通ってみるけれど、誰もいない。

夢だったのかな?

朝慌ててカバンの中に入れた万華鏡を取り出そうとするけど、どこにもない。

狐につままれるって、こういうことか......


早く帰ろ。ここ、人通りないうえに暗いし、なんか怖い。


「越前さん」


後ろから声がする。デジャブだなこれ。


「なに?宮前くん」


聞くべきか...それとも触れないべきか...


「今日は本当に越前さんに驚かされたよ」


もしかしてこれは、向こうからその話題振ってくれた?

ってか、言い方的にこれはまさかの犯人宮前くんか........

なんだろ。このクラスの優等生の闇を見てしまったような。


「えっと、いくらなんでも好きな人を殺すというのは...その......」

「好きな人?殺す?」


『俺が好きなのは越前さんだけど』


え.......少女漫画?

の割には重い!ちょっと重い!!


「早乙女が前から邪魔だったから」


乙女ゲームとかのエンディングで、このまま監禁バッドエンドって見たことあるんだけど、流石にそうはならないよね?

どうにか危機一髪でもいいから、回避したい.......


「越前さんは俺のこと、好き?」


そう言って、宮前くんの顔が近づく。

逃げ切れる自信ないかも........



これは私が取り巻きEから████になった話。

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取り巻き女子Eのとある日 曲輪ヨウ @kuruwa_yo_u

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