ただの取り巻き


どうしよう、どうしようなんて考えていたら、いつの間にか朝になっていた。

マジでガチで、どうしよう......

そもそも、未来って変えれるものなの?

アニメや漫画じゃあるまいし、そんな力が私みたいなのにあるわけないじゃん。


でも知ってしまったからには、なんとかしなきゃって思っちゃうし。


「おはよう、江里ちゃん」

「おはよ、柚歩ちゃん」


相変わらず、今日も眩しいな。美人は。

美人の笑顔って、並み大抵のものは浄化しちゃうんじゃないかな?

たまに浄化しきれてないのか、ストーカーとか生まれてるけど。


ん?もしかしてストーカーか?

ヤンデレタイプのストーカーが、僕と付き合ってくれないならいっそ...みたいな?

ないよな?誰かないと言ってくれ!!

もうなんか、全てを疑いの目で見ちゃうよ........


「おはよう、越前さん」


うだうだと考えていたら、後ろから朝にはぴったりな爽やかボイスが聞こえてきた。


「おはよう、宮前みやまえくん」


宮前祐弥ゆうや。柚歩ちゃんとは対になる存在。

つまるところ、イケメンである。

宮前くんと柚歩ちゃんはお似合いだと、クラスどころか全校生徒の間で言われている。私や他の柚歩ちゃんの取り巻きの子、クラスメイトはいつになったら二人は付き合うんだと思っている。


「おはよう、早乙女」

「宮前、おはよ。寝ぐせついてるよ」

「え?ホント?どこどこ?」


少女漫画のワンシーンのような光景が始まった。

いつもなら空気を読んで先に教室に向かうのだが、今日ばかりはそうもいかない。

柚歩ちゃんには悪いけど、今日一日は傍にずっといよう。

いつ何が起きても、対処できるようにせねば......


それにしても宮前くんと柚歩ちゃんって、こうして改めて見ると本当にお似合いだなと思う。イケメンと美女。顔だけでなく、二人とも性格まで良い。

朝から目の保養だな。これは。



私の心配をよそに時間は驚くほど早く流れ、昼休みが始まった。

でもはっきり言って、これからが大変なんだ。

一限目から四限目まで、移動教室はなかったが、五限目は体育。

そして六限目は化学。今日は実験をするから、いつものように教室でとはいかない。


それよりも、昼休みということで新たな問題が発生している。それは......


「柚歩、購買行こう」


そう、これだ。

柚歩ちゃんはいつもお弁当を持ってきているが、他の子が購買に行くとなるとそれについていくタイプ。

女子特有の小さなグループ作って、グループ内の一人が行動を起こすと全員でついていく謎の習性。今ほどこの習性が嫌だと思ったことはない。


だが、有難いことに柚歩ちゃんは押しに弱い。


「柚歩ちゃん、一緒に先に食べてようよ」

「あれ?珍しいじゃん。江里、今日は弁当なんだ」

「う、うん。お母さんが張り切っちゃって...」


噓だ。お母さんは今日、弁当なんか作ってない。

昨日の夕飯の残りとストックされている冷凍食品、五時起きで作ったおにぎりと卵焼き。これらを詰め込んだ弁当。

愛情なんて、これっぽちも入ってません!添加物なら入ってるけど!!


「じゃあ私、江里ちゃんと一緒に待ってるね」

「りょーかい」

「.......あれ?」

「どしたの、柚?」

「お弁当持ってきたはずなのに......」


え?そんなことある?

こんな日に限って、忘れてきたのか......


「ドジだなー」

「じゃあ、柚も行こう」

「うん」


ヤバいヤバい。私達のクラスの教室は四階にある。

対して購買は一階。階段から落ちて大怪我、もしくは死亡...


「私も行っていい?」

「いいよ」

「寂しがりやだなぁ、江里は」

「あはは......」


よかった。女子の謎の習性あって、ホントよかった。


「何食べるー?」

「ってか、五限目体育じゃん。だる」


皆で色んなことを喋りながら、階段を降りていく。

会話は穏やかだが、内心は全く穏やかじゃない。


「ねえ、柚歩はどう思う?」

「私は..........わっ」


突然、視界から消える柚歩ちゃん。

でも柚歩ちゃんの腕が見えたから、それを必死に掴んだ。


「大丈夫!!?」

「あ、ありがとう。江里ちゃん」


階段が濡れてる。滑ったのか...

でもなんで、階段が濡れてるの?

それもピンポイントで、柚歩ちゃんが歩いている場所だけが水で濡れている。


ふと後ろを振り返ると、誰かが立ち去って行ったのを見た。

少ししか見えなかったけど、男子だ。制服が見えたから生徒なのも確定。

二次元なら立ち去って行った男子が犯人だけど、偶然の可能性もあるし。


「本当にありがとう、江里ちゃん。危機一髪だったよ」

「いいよ、いいよ。それよりも怪我とかない?」


まだ警戒するに越したことはない...か。

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