取り巻き女子Eのとある日
曲輪ヨウ
私は
突然だが、私はクラスのマドンナである
「それじゃあ皆、また明日」
「また明日ね、柚歩」
「またね、柚ちゃん」
「今晩、電話するねー」
「遅刻すんなよ、柚」
「また明日ー」
これは早乙女柚歩含め、その取り巻き五人の会話だ。どれが私か分かる?
答えは一番下の台詞。私は取り巻きの中でも下っ端なのだ。
必要最低限だが会話が成り立ち、尚且つ他の子の邪魔をしない台詞が求められる。
下手なテストより難しいが、慣れてしまえば呼吸と同じ。
こんな簡単なことで、学校内で安全な地位にいられるというのはとても有難いことだと思う。柚歩ちゃんは普通にいい子だし。
下手な子の取り巻きになったら、いじめに加担させられる場合もあるし。
なんてぶつぶつと考えながら、一人で歩いていると
「ちょいと、そこのお嬢さん」
誰かに話しかけられた。しゃがれた老婆の声。
振り返ると、いかにも怪しそうな占い師であろう老婆がいた。
占いをするための道具、机に椅子。占いと書かれた看板。
あれ?この道って、さっき通ったときは何も無かったよね?
というか、誰もいなかったはず........
「私...ですか?」
「そう、貴方」
私以外、周りに誰もいない。
それでも自分かどうか確認するのは、この状況がまるでドラマのワンシーンのようだから。それもホラー系の。
その手の類の導入部分としては、ありきたりだと思う。
「すみません。私急いでるので」
逃げるが勝ちだ。早く帰ろう。
「待ちなさいな。“
「え......?」
私まだ名乗ってないよね?
この人は別に知り合いでも何でもないはずだし。
ただの初対面のはず.......
「あんた、もうすぐ大変なことになるよ」
ああ.......これは聞かなきゃいけない感じか。
「大変なことって、なんですか?」
そう聞くと、老婆はどこからか万華鏡を取り出す。
「これはね、未来が見えるんだよ......と言っても、次の日起こることが少しだけ見える程度だけどね」
胡散臭い!!すごく胡散臭い!!!
でも、次の日に起こることが見えるのは謎にリアルだな。
「ひとつ、千円。どうだい?買うかい?」
「いえ、結構です......」
ぼったくりだ。絶対。
誰がこんなのにひっかかるか。小学生じゃあるまいし。
「このままじゃ、あんたやあんたの身近な人が死んじゃうよ」
胡散臭いはずなのに、妙に説得力がある口調。
もしかして、昔テレビで見た“買わなきゃ殺してやる”的なやつか?
「はあ......分かりました。買います、買いますから」
「まいどあり」
老婆に千円札を手渡し、万華鏡を受け取る。
結構綺麗だなと目線を手の中のそれに落としていた。
「あの.......」
顔を上げると、もうそこに老婆はいなかった。
机や椅子、看板も消えていた。
もしかしてこれ、マジでヤバいやつなのでは?
・
家に帰り、自分の部屋で恐る恐る万華鏡を覗く。
真っ暗で何も見えやしない。
なんだ。やっぱり、パチモンか。
そう少しの間、安堵していると...あ、そう来る?マジ?
ゆっくりとどこかの景色が映し出される。
顔の部分だけが見えない男の子。
夕焼け。暗い部屋。
色んな景色が映っては消える。
目がチカチカする.......
あれ?これ、学校の階段?
映っては消えてを繰り返していたが、漸く止まり、一枚の静止画が映し出される。
学校の階段から落ちて、頭から血を流す柚歩ちゃんの姿。
怖くなって、思わず万華鏡から目を離して、一度万華鏡を机の上に置く。
事故?それとも、誰かに突き落とされた?
いや、柚歩ちゃんは誰かに恨まれるような子じゃない。
それよりも、老婆の言っていた“次の日起こることが見える”というのが本当ならば、柚歩ちゃんは明日死ぬかもしれない。
死ななくても頭から血が出てたし、重傷であることに変わりはない。
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