26日目(金曜日)
「翔平、ちょっといいかい」
昼休み。
珍しくあかねさんが神妙な顔つきでお弁当を渡してきた。
なんだろう、すごく気になる。
「な、なんですか?」
「実はね。昨日テレビで観たんだけど、男ってのは女に『あーん』してもらうのが嬉しいらしいね」
「………」
えー……。
なにそれ。
なんの番組?
そんなの人にもよると思うんだけど……。
「だからさ、今日はあたいが翔平に『あーん』で食べさせてあげるよ」
なんかすんごいこと言い出した!
なんかすんごいこと言い出した!
大事な事なので二回言いました。
「え、えっと……。いや、いいです」
「なんで?」
いや、なんで? と言われましても。
「た、単純に恥ずかしいと言いますか……。怖いと言いますか……」
普通に嫌です。とは言えなかった。
すると後ろで聞いていた弥吉さんが案の定、吠えた。
「んだとゴルアアァッ! テメエもういっぺん言ってみろコラ! 姐さんの『あーん』が恥ずかしいだとコラ!」
「ひいっ!」
なんでこの人はいつもあかねさん絡みになると吠えるの?
「弥吉ぃ!」
「へい、姐さん」
「翔平を怖がらすんじゃないよ」
「へ、へい、さーせん」
すごすごと引っ込む弥吉さん。
むしろ弥吉さんを黙らせられるあかねさんのほうが怖い……。
あかねさんは「ふう」とため息をついて言った。
「しょうがないねぇ。翔平が恥ずかしいって言うんじゃ」
「す、すいません。でも、いつもお弁当ありがとうございます……」
「じゃあさ、あたいに『あーん』しておくれよ」
「………」
なんかすんごいこと言い出した!
なんかすんごいこと言い出した!
大事な事なので2回言いました。
「あ、あーんですか……?」
「うん。ほら、あーん」
「………」
本気だ、この人。
口を開けてなんか期待する目で僕を見つめてる。
これは拒否ったら何をされるかわからないぞ。
僕はあかねさんのお弁当から比較的『あーん』しやすそうなミートボールをつかんだ。
「は、はい、あーん……」
「あーん」
口を開けたあかねさんにミートボールを放り込む。
なんだろう、この羞恥プレイ。
「お、美味しいですか?」
尋ねるとあかねさんは顔を真っ赤にしながら「うん……」と答えた。
うほう!
「あかねさん、もう一つ、どうですか?」
「……いただくよ」
「はい、あーん」
「あーん」
ああ、これはクセになりそう。
ちっちゃなお口にミートボールを放り込むたびに、あかねさんが恥ずかしそうに口をもごもごさせている。
か、か、か、かわいい!
顔を真っ赤にしたあかねさんを見るたびに叫びたくなってくる。
「あかねさん、もう一つどうです!?」
「ああ」
今度はだし巻き玉子を箸でつかんであかねさんの口に入れてあげる。
「んふっ」とか言いながら頬張るあかねさん。
ヤっバい!
なんかドキドキしちゃう!
あかねさんは口をおさえながらもごもごさせて言った。
「し、翔平も食べなよ」
「僕はいいです」
「なんでだい?」
「あかねさんを見てるほうが楽しいですから」
「………!!!!!」
瞬間、あかねさんはもごもごと口を動かしながら顔を真っ赤にして叫んだ。
「や、や、や、
「へい、姐さん!?」
「ほ、ほ、ほ、
「へ、へい、姐さん」
「あとは頼んだ!」
「へい、お気をつけて!」
そう言ってあかねさんは教室を出て行ってしまった。
ええー……。
残りのお弁当は?
~告白されるまであと4日~
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