20日目(土曜日)~side.学級委員長~
僕の名前は
2年A組の学級委員長だ。
最近、僕はおかしいのかもしれない。
先日転校してきたヤバい二人組。
鷲尾あかねさんと、なんとかかんとかくん(ごめん、名前覚えてない)。
男のほうはいいとして、女子の鷲尾あかねさんを見ると心臓がどきどきする。
別に病気でもなんでもない。
熱を測っても平熱だったし。
でも鷲尾あかねさんを見るたびに体中が熱くなるんだ。
いったいこれはなんだろう。
正直、最初の頃は怖すぎてまともに見ることができなかった。
でも同じクラスになって彼女を見るうちに、なんか心がギューッと締め付けられるような痛さを感じた。
いったいこれはなんだろう。
図書館で調べてもわからなかった。
親に聞いてもはぐらかされた。
先生に聞いても「ふじゅんいせいこうゆうはダメだぞ」とかなんとかよくわからないことを言われた。
いったいこれはなんだろう。
「そりゃ恋だな」
昔から仲の良い公園のおじさんにその話をすると、おじさんはそんなことを教えてくれた。
「恋?」
「んだ。そりゃ恋だ」
おじさんは大量の豆を手に、公園の鳩にエサをあげていた。
公園の鳩に豆をあげるのがおじさんの唯一の楽しみらしい。
僕は即座におじさんの言葉を否定した。
「いくらおじさんの言葉でも、それは違うと思います。僕は恋なんてしたことありませんし、したいと思ったこともありませんから」
「なんだぼうず。おまえ高2にもなって恋のひとつも知らねえのか?」
おじさんの周りに鳩がたくさん寄ってくる。
ヤバいくらい寄ってきている。
「恋という概念は知ってます。でも僕の思ってる恋とは違う気がするんです」
「17のガキが何を言ってやがんでい。いいか、恋ってーのはな……(ぽっぽー)」
「………」
肝心の部分が鳩の声でかき消された。
『恋ってーのはな』のあと、なんだろう。
「おじさん、大事な部分が聞こえなかったんですけど」
「ああ? 聞いてなかったのか? しょうがねえな、もう一度言うぞ。恋ってーのはな……(ぽっぽー)」
「………」
また鳩の声でかき消された。
『恋ってーのは』のあとを聞きたいのに。
「おじさん、また鳩の声で最後が聞こえなかったんですけど」
「ああ? またか? しゃーねえな。いいか、恋ってーのはな……(ぽっぽー)」
鳩!
鳩ウザい!
「おじさん、鳩どうにかできませんか?」
「(ぽっぽー)ああ? なんだって? (ぽっぽー)」
「おじさんの声! 鳩のせいで聞こえないんですけど!」
「(ぽっぽー)ああ? (ぽっぽー)」
とりあえず豆まくのやめてほしい。
どんどん鳩が集まってきて、もはやおじさんの身体が隠れてしまっている。
「おじさん! 僕の声、聞こえてます!?」
「(ぽっぽー)(ぽっぽー)ダメ(ぽっぽー)」
「………」
かろうじて「ダメ」という言葉だけ聞こえた。
おじさんも何が楽しくてこんなになるまで鳩に豆をあげてるんだろう。
結局、僕はおじさんから「恋ってーのは」の続きを聞くことはできなかった。
今度しっかりと鷲尾あかねさんを観察して僕のこの症状の正体を突き止めようと思う。
~告白されるまであと10日~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます