11日目(木曜日)

「今日は転校生を紹介する」


 朝のホームルーム。

 担任の先生が唐突にそんなことを言ってきた。

 2学期のこの時期に転校してくるなんて珍しい。

 当然、クラス中が嬉しそうにざわついた。


「男ですか!? 女ですか!?」

「どこから来た人ですか!?」

「日本人!?」


 ワイワイ騒ぐ僕らの前に現れたのは……。


鷲尾わしおあかねだ、よろしく」

轟沢とどろきざわ弥吉やきちだぜ、ゴルアァ!」

「………」


 転校してきたのがあの特攻服女とリーゼント頭だった。

 一気に教室が静まり返った。

 それはもう面白いほどに。


「え、えーと……なんか急に転校が決まったらしく、学校側も受け入れ準備ができない状態での転校となりましたが、みんな仲良くするように」


 先生もしどろもどろで説明している。

 ああ、きっと職員室に乗り込んで脅迫でもしたんだろうな。

 それで転校を許す学校もどうかと思うけど。


 特攻服女は特攻服ではなくセーラー服だった。

 リーゼント頭も学ランを着ている。

 どこから用意したんだろう。

 しかも似合いすぎている。


 特攻服女は壇上で矢島さんに顔を向けると、不敵な笑みを浮かべた。


「ふふ、たかえちゃん。あたしらも今日からこのクラスの一員だ。もう部外者とは言わせないよ」


 そしてそんな矢島さんは「ふええ」と泣きそうな顔をしながら震えていた。

 ああ、可哀想に……。

 リーゼント頭にいたっては「おう? 文句あっかコラ」とか凄んでるし。


「弥吉」

「へい、姐さん」

「たかえちゃんを怖がらすんじゃないよ。あたいの大事なダチなんだからね」

「へ? ダチって……」

「昨日の強敵てきは今日の戦友ともって言うじゃないか」

「ああ、なるほど! さすが姐さん! よかったな、あんた。姐さんがダチ認定してくれるヤツなんざ、片手で数えるくらいだぜ」


 それは単に友達が少ないというやつじゃ……。

 と、きっと誰もが思ったことだろう。

 矢島さんは「ふあー」と魂が抜けたような顔になっていた。


「それよりも翔平」

「は、はい?」

「これでようやく正々堂々とお弁当が渡せるね。今日の分だよ」


 どこから出てきたんだ、その弁当。

 特攻服女の手から大きなお弁当箱が握られていた。


「え、えーと……。鷲尾さん、今はホームルームの時間だから……」


 先生がしどろもどろでたしなめるように言うと、特攻服女は「あ?」と睨みつけた。

 こ、怖……。


「あ、いえ、なんでもないです……。よかったな、翔平!」


 先生、弱っ。

 もうちょっと大人の威厳を見せてほしいんですけど!


「あ、ありがたく頂戴いたします」

「ふふ、ちゃんと心を込めて作ったからね。お昼になったら一緒に食べよう」


 今度は僕が「ふあー」となる番だった。



~告白されるまであと19日~

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