9日目(火曜日)
「おや、翔平じゃないか」
なんてことだ。
この日、僕は通学途中であろうことか特攻服女とリーゼント頭に遭遇してしまった。
特攻服女の手にはしっかりと弁当箱が握られている。
「2年A組の向井翔平! おはようだぜゴルアァ!」
「お、おはようございます……」
こんな住宅街のど真ん中で僕のフルネームとクラス名を叫ばないでくれないかなあ。
「まさかこんなところで会うとはねえ」
「あ、あはは……。そうですね」
「今日の占い、何位だったかねえ」
「姐さんの星座、確か12位だったっス!」
「ふふ、最高じゃないか」
いや、最低ですよ。
ワーストです。
ちなみに僕も最下位だった。
あれ?
ってことはこの特攻服女、僕と同じ射手座?
「翔平、ここで会ったのも何かの縁だ。学校まで送ってってあげるよ」
「ど、どうも……」
嫌だとも言えず、僕は両隣に特攻服女とリーゼント頭を連れながら歩く羽目になった。
もう最悪だった。
リーゼント頭なんて片っ端から通行人に
「どけやコラ。姐さんのお通りだ」
とか言ってビビらせてるし。
特攻服女は特攻服女で
「見せもんじゃないよ! あっち行きな!」
とか言ってるし。
これ、絶対端から見たら不良に連行されてる高校生だよね。
大丈夫かな。
通報されないかな。
ブルブル震えながら通学路を歩いていると、ちょうどそこへ学級委員長が通りかかった。
いいタイミングで通りかかってくれたよ、学級委員長!
これで「僕、この人と行きますんで」って言って別れられるよ!
「おーい、学級委員長ー!」
泣きながら手を振ると、学級委員長は僕を見るなりギョッとしてダッシュで逃げて行った。
「って、学級委員長おおおぉぉぉッ!?」
うそおおおおおぉぉっ!?
なんで逃げるのおおおおぉぉ!?
「学級委員長ー! 学級委員長ーーーッ!」
学級委員長は一度も振り返ることなく、路地の角に消えた。
マ、マジかあいつ……。
クラスメイト見捨てやがったよ……。
「ん? 誰だったんだい? 知り合いかい?」
一瞬で消えた学級委員長のことを聞かれ、僕は思わず「いえ、人違いでした」と答えるしかなかった。
くっそー、覚えてろよ学級委員長。
「それよりもさ、翔平」
「は、はい? なんでしょう」
「せっかくなんだから、ゆっくり歩こうじゃないか」
「ゆ、ゆっくり?」
「だって翔平とこうやって歩けるチャンス……じゃなくて、機会なんて滅多にないからね」
「………」
この人はどれだけこの地獄を引き延ばそうというのか。
するとリーゼント頭が「あれえ?」と言った。
「姐さん、いつも誰かと歩くときは『遅い!』って言ってどつくのに、翔平はいいんですかい?」
瞬間。
リーゼント頭は空高く吹っ飛ばされていた。
特攻服女のアッパーが炸裂したらしい。
恐ろしすぎるよ、この人……。
「ふふ、翔平。ゆっくり歩こう」
「は、はい……」
もはや僕には抵抗する勇気はありませんでした。
~告白されるまであと21日~
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