5日目(金曜日)

「2年A組の向井翔平! おはようだぜ、ゴルアァッ!」


 今日も元気いっぱいにリーゼント頭がやってきた。

 そしていつものように学級委員長にメンチを切っている。


「元気だったか? お? こら」


 元気どころか今にも死にそうだ。

 学級委員長が。

 ぶるぶる震えて目に涙まで浮かべている。


「元気だったかって聞いてんだろうが、ゴルアァッ!」

「ひいいっ、ぜんぜん元気じゃないですー!」


 学級委員長の心の叫びが聞こえたところで、僕は手を挙げた。


「……あの」

「ああん?」

「向井翔平は僕です……」

「………」


 学級委員長と僕を交互に見つめるリーゼント頭。

 そして学級委員長にすごんでいた顔をこちらに向けた。


「チッ、替え玉たぁやるじゃねえか」


 替え玉って……。


「いいか、テメエこら。姐さんの目は誤魔化せても、あっしの目は誤魔化されねえぞゴルアァッ!」

「………」


 どうしよう、ツッコミどころが多すぎて何も言えない。

 ひとつハッキリしてるのは、この人の目を誤魔化そうと思ったらめっちゃ簡単そうだということだ。


「弥吉」


 その時、しびれを切らしたのか特攻服女が颯爽と現れた。

 今日はいつにも増して登場が早い(気がする)。


「姐さん」

「いつまで廊下で待たせんだい」

「すいやせん、姐さん」


 別に待ってなくてもいいのに。

 って、おそらくクラスの誰もが思ったことだろう。


「翔平、久しぶりだね」

「は、はい。昨日ぶりですね……」

「今日はちゃんとお弁当、作ってきたよ」

「あ、ありがとうございます……」


 そう言って傷だらけのその手からお弁当を受け取る。

 ……なんか、傷増えてません?


「翔平の嫌いなブロッコリーやセロリや酢の物は抜いておいたからね」

「は、はあ……」


 そもそもお弁当を頼んだ記憶がないんですけど。


「わざわざ姐さんがブロッコリーやセロリや酢の物を除外にした料理を検索して作ったんだぜコラ。感謝しろよコラ」

「あ、ありがとうございます」


 っていうか、ブロッコリーやセロリや酢の物を除外した料理って、山ほどあるよね。

 むしろブロッコリーやセロリや酢の物を使った料理のほうが作るの大変だと思うんだけど。


「弥吉!」

「へい、姐さん!」

「余計な事言うんじゃないよ!」

「す、すいやせん……」


 あ、なんか本気で怒ってる。

 言って欲しくなかったみたい。


「すまないね。こいつの言ったことは気にしないでおくれ」


 わざわざ検索してまで料理を作ったということだろうか。

 それとも感謝しろって言ったことだろうか。


 とりあえず僕は「わかりました」と言ってその手からお弁当を受け取った。


「ふふ、じゃあね」


 そう言って嵐のように去って行く特攻服女。

 もうほんと、何が何だかわからないです。



~告白されるまであと25日~

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