第11話「ひとりにしてくれ(Emak Bakia)」
「ひとりにしてくれ(Emak Bakia)」(その1)
「何か変だよな…」
これも
ルシール・オックスブラッドとナンシー・フェルジから共有された
総合文化祭が終わった翌日、先ずは
これは過去の美堂敬介の一件を考えれば「そういうこと」だろうと相応の覚悟と共に面会した。
しかし、その実際は「文化祭の展示活動における会計帳簿の記載不備」を期日までに再計算の上で是正と提出の指導を受けて終わった。余談だが、この不備はすべて河上が「万事抜かりなく」と豪語した箇所だ。河上がつかまらなかったため、呼び出された。
昨日は昨日で
館内はガラガラにも関わらず近寄って来たので、暗がりに密室という状況から「この距離で仕掛けてくるとしたら
これにはたまらず、映画が終わってから声をかけたが「ああ、ごめん。道理でキャラメルにしては塩っぽいと思った」と本当に公家のように鷹揚な調子で謝罪と弁償に応じた。
そして今、現在進行形で高等部工業科二年生の
彼の能力が何か予想もできなかったが、随分とせっかちな性格なのはよく判った。
「
一日を終えた海藤は自室でくつろぎつつ、そんなふうに考えていた。
これまで接触した連中は、自分を「
「知らないというより、切り取られているというのが正しいかも」
何となく観測しているネットワークのトラフィックが瞬間的に増加したと思ったら案の定だった。海藤が「その声は」と言う前に、ルシールとナンシーが例の情報通信網を使った瞬間移動で姿を現した。
「ええと… お茶でも淹れますか?」
「お気遣いなく。ここ数日の三人の動きから、ちょっとね」
「ルシールの言う通り。そして三人が真面目に週報を提出してたから助かったわ」
そこでナンシーは自分の能力であるアナログ媒体からの情報と記憶の抽出、それをまとめた
すると、例の三人たちの記憶から
この接触から
「戦力を分散の上で秘匿、よほど追い詰められているってことでしょうか?」
「そうね。若しくは裏で何かしているか… いずれにせよ貴方の身辺警護は必須よ」
「そこでナンシーの御高説の間に、端末からDALIの遠隔起動と呼出可能にしておいたわ」
ルシールの一言に彼女は「もう!」という様子だったが、海藤の携帯端末にいつの間にか見知らぬアプリケーションが追加されていた。
認証は音声と光彩を用いるシンプルなものだが、電子情報の異能を持つ彼女の謹製と言うことならば、おそらくコーディングを解析することは無論、不正な第三者利用も不可能だろう。
「前の四体は追加兵装搭載で既に配備済み、夜間は光学迷彩を展開して自律起動で周囲警戒を実施… 追加の個体も展開予定よ」
「な、何と言えばいいのか… ありがとうございます」
「ところでルシール、一つ聞きたいんだけど」
「どうして貴女がここで質問するのよ?」
「これ、一体お幾ら?」
「一応、戦車よりは若干安いとだけ言っておくわ」
そんな代物をポンと用意手配できるG.F.Oと局長である
「あらあら、本物のダリと同じく
ナンシーの一言とルシールの反応に、これは笑っていいのかどうなのか判断に困ってしまう海藤であった。
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