「無垢と経験の歌(Songs of Innocence and of Experience)」(その4)
果てしなく続く真紅の空間に、真っ白なガーデンテーブルと椅子の色彩が映える。
その椅子に双子の少女が腰かけており、双子故の共鳴か空中に浮く奇妙な額縁を眺めて時折「うふふ」と静かに、同じように笑う。
額装されているのは時山爾子こと「
「あの
「そうねアリス、もうわたしたちの光は見えない」
「見えているのに見えない、不思議な感情ね」
「そうよ。でも、見せる分は全て見せた。アリス、違って?」
「その通りよ。ここからは、あいつらも知らないこと… そうよねプラン?」
常に
他の
二人が表立った行動をしないのは、
「プラン、そろそろ来るわ」
「ええ、アリス。そろそろね」
二人はこの空間に接近する存在を感知すると、扉が開くようにそこには古代神話に生きた半人半獣の種族を思わせる異形の戦士が三騎、並び立っていた。いずれも満身創痍でありながら、凛とした雰囲気を保つのは戦士の矜持というべきだろう。
「無理難題を言って申し訳なかったわ…
「念もない事です。これは貴女達でなければ成し得ない…」
三騎はその名の通り、双子が黒木環那に発現させた
彼らは、
開戦の原因を知る人間はおろか情報記録も一切消滅しても継続される戦乱、科学の超発達により兵器と人間の境界を曖昧にした世界である。
「不完全な第四次幻想の
破壊したと思しき断面には、所々に黒曜石のような花弁が花開いており、表面にはコールタールで出来た真正粘菌のようなものが根を張って脈打っている。
「紛れもない
この
目的は、完全第一次幻想の
普段は秘匿されているが、時折発見されては別文明の遺跡であるとか一種の信仰を生み出す存在にもなっている。
「その様子だと、自己防衛機能もまだ健在、といったところかしら?」
「ええ、敵方に相当打撃を与えたるも壊滅するに至らず。現在、我が方は三騎です」
「百騎の精鋭がそれだけに… ご健闘を感謝します」
古今を問わず王に
「微力ながら、お二人の悲願成就の一助とならんことを…」
「十分すぎるわ。ねぇ、そうでしょうアリス?」
「そうねプラン、これを増殖炉にできれば…」
「ええ、アリスの言う通り」
これが一部でも手に入ったことは大戦果だった。
以前に
最終目的はもう一人の「
「新しい王とともに、
「そうねアリス。新たな力を生み出しては滅ぼす… そんな暴君は排除しなければならない…」
「忠誠と崇拝は違うわ… これは救済の技法、王もまた例外なく」
「お二人とも、我々の役目は終わりました。これにて…」
「ここに留まるつもりはないかしら?」
「アリスの言う通り。生きながらえた命、むざむざ捨てることはないわ」
「有難きお言葉ですが、我々は死ぬのではなく未来に向けて脱出するのです」
「未来へ?」
「はい。五十六億と七千万年の先で、新たな王の再臨と拝顔の栄を賜ることを…」
そう言い残して
「彼らと再会できるかしら。アリス?」
「プラン、それは私たちの働き次第よ。そして…」
「ええ、判ってるわアリス。
プランがそう言うと、未発現となっている三体の
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