三人称視点における「モノローグ」について
三人称視点、書いてる?
一人称視点よりは、初心者向けだと僕は思うんだ。よく一人称視点を初心者向けとして紹介する記事があるけど、正直「嘘だろ?」と思うんだよ。
一人称視点は主人公が見たもの、知っていることしか描けない。視界に入ってはいるけど、地元の風景のようなただ漫然と流れていくようなのは書きにくい。そんなのいちいち、気にして生きている人、なかなかいないからね。
だから難しいと思うんだけど、一人称視点には主人公の心情を直接描けるという大きな大きなメリットがある。
じゃあ三人称はというと、直接描けないこともない。
ただ、一人称視点より直接描こうとすると難しくなるんだよ。
三人称視点にも、主人公の心情を直接描く「モノローグ」がある。
色々な方法があるよ。
ライトノベルだと、()の中に入れてしまうのをよく見るね。
同じようなのに、「――」を文頭に入れるというのもある。
昔の作品だとラノベ以外でも見かけたけど、80年代以降の作品ではあまり見たことがない。現代においては、ラノベ的な書き方だと言われている。
これは、地の文と分かれるうえに、「」と違って心の中のセリフだということがわかりやすいのがいい。読者には一番やさしいスタイル。
ただ、セリフと同じで、あまり長いと読みにくいのが難点だよね。
次に、地の文に書いちゃう方法があるよ。
――――。
タケシは地面を強く踏みしめ、拳を握る。対するヒデキを注意深く観察し、不思議に思った。
どうして、奴は動かない? さっきから妙だ。奴はスピードで圧倒してくるタイプだったはずなのに、動きが無さすぎる。いや、躊躇うことはない。俺には圧倒的なまでの膂力がある。勝てるはずだ!
タケシは半ば自分に言い聞かせるように念じながら、拳を放った。
――――。
この地の文に入れ込む方法は、結構多くの人が使っている。Web小説だけじゃなく、本屋に並ぶライトノベルやライト文芸、一般文芸でもよく見るよ。むしろ文芸のほうがよく見るかもしれないね。
この方法、実はかなり難しいよ。
ある程度の文章力がないと、違和感が出てきてしまう。一時的に文体が乱れるからね。変な文章になることがあるんだ。
前提の文章と、それを受ける文章の二つで挟むと、比較的整理される気がする。
上の文章で前提になっているのは「不思議に思った」の部分。タケシが不思議に思っているという前提を示してから、何をどう不思議に思っているのかをモノローグで表している。
受ける文章は、「半ば自分に言い聞かせるように念じながら」の部分。念じていた内容が、モノローグの部分になる。
こうしてサンドイッチすると、ちょっと整理されるかな。
ただ、多用するとくどい。どうしても「思った」「念じた」「思案した」とかが並ぶからね。くどさを軽減するために、同義語を効果的に使う必要がある。これは、Webライターでもよく使う小技だよ。
だけど、それにも限界があるし、効果的に使えないとくどい文章より読みにくくなることがあるのがネック。
うん、難しい!
だけど、面白い方法でもあるよ。
個々人の表現力とか、表現の癖とかが結構出るから。
まあ、読み手に慣れを要するから、読者にとっては少し読みにくいかもしれないけどね……。この手の表現に慣れていないと、うまい人の文章でも読みにくく感じちゃうんだよ。
また、以下の文章みたいな書き方もある。
――――。
タケシは、地面を強く踏みしめ、拳を握る。対するヒデキを注意深く観察し、不思議に思った。彼はスピードで相手を圧倒する戦闘スタイルを好む。
しかし、目の前の男はただじっとタケシを見据えるだけだ。
奴め、なにか企んでいるんじゃないか――タケシは思った。
――――。
最後の一文が、モノローグだね。
もしこれが地の文なら、「彼は何かを企んでいるのではないか、とタケシは思った。」みたいな文章になると思う。前半で対戦相手のヒデキのことを地の文で「彼」と表現している。奴というのはタケシが対戦相手のことを指すときの言葉遣いだから、ここはモノローグになる。
これは適当に書いた文章だからアレだけど、実際の小説の場合は「タケシがヒデキを指すときに奴という言葉を使うこと」がこの文以外の部分でも描かれるだろう。「奴にだけは負けたくない」とセリフを作ってみたりね。
そうして、地の文とモノローグの違いを自然と演出しつつ、地の文にサラッと入れ込む方法。
ただ、これもやっぱり長文だと使いにくくなるんだよね。
地の文の文章の流れをあまり切りたくはないときで、かつ冷静な心情では使いやすいんじゃないかと思う。
まあ、どの方法もそれだけを多用するとくどくなるから、結局のところは使い分けるのがいいのかも。
ただし、あまり多種多様な方法を一作品で使いすぎると、わかりにくくなるから注意しないといけないけどね。二つくらいがいいんじゃないかな。
そういうようなことを文章があまり上手ではない僕が、考えてみた。
僕は長年ライターの仕事ばかりやってきたから、ライター的な文章ならほどほどに上手なんだけど、小説的な文章となると上手じゃないんだ。
だからこそ、こうして考えることは大事だと思った深夜だった。
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