むっず!一人称むっず!

なんか、創作論を読み漁ると、「初心者には一人称がおすすめ!」というのを結構目にするんだけどさ……。


初心者に一人称、きつくない?


昔、ラノベの編集者さんと話をする機会があったけど、彼女は真逆のことを話していた。


「新人賞に応募してくる人、明らかに初心者なのに一人称視点が多くてね。一人称は実は難しいから、初心者には向かないんだよ」


確かに、一人称視点は難しい。


僕も今、初の一人称視点小説を書いている。一人称が初、ファンタジーも初、長編も初と初だらけの今作、一人称視点にかなり苦心した。


一人称の難しさは、色々ある。



まず、「主人公の知っていることしか書けない」ということだ。


たとえば主人公が科学技術が進んでない世界にいる設定で、そこに異世界人が来てスマホを見せたとする。


知らないから、地の文に「スマホ」とは書けない。


黒く反射する板状の物体とか、何か別の言い方をする必要がある。



さらに、「情景描写が難しい」という難しさもある。


一人称視点の地の文は、主人公のモノローグのようなもの。主人公を通じて、彼または彼女が見聞きしたことしか書けない。情景描写をしまくると、やけにキョロキョロしている主人公になってしまう。


そのうえ、たとえば「地元」の描写がしにくくなる。地元を歩いているとき、いちいち「草木が生い茂って」とか「自然豊かな」とか考えないからね。



そして、「文体」の難しさもある。


地の文と会話文の文体というか口調があまりにかけ離れていると、なんだか違和感があるよね。心のなかではすごく冷静だけど、会話では感情豊かな人みたいになることがある。



こういうさまざまな難しさがあるのにも関わらず、初心者は一人称を選びがちらしい。


編集者さんが辟易とした様子で、語っていたのが印象に深く残っている。


三人称視点で書けることが、一人称視点では書けない。もちろん、逆のこともあるんだろうけど、三人称視点のほうが初心者向きなのは僕も同感だ。一人称を実際に書いてみて、彼女の言っていたことを本当の意味で理解した。


まじでムズい。


地の文に強めの制限がかかるのが、本当に難しい。


地の文を書くときは常に、主人公らしい文体を意識する必要があるし、主人公の知識を意識する必要がある。主人公の視界、聴覚、心理状況なども考察しないといけない。


焦ってるときなのに情景描写してたら、焦ってる感出ないからね。目を泳がせているときに妙なところに視線が行くだろうから「なんでそこ?」みたいなところを描写するとか、そういうのも考える必要がある。


三人称視点に比べて、考えることが多すぎるんじゃ!


初心者に勧めてる人が多いのは、罠か!? 罠なんか!?


へっへっへ……難しいのを勧めてやったぜ……これでライバルを減らせる……みたいな罠なんか!?


ただ、一人称のほうがWeb小説向きだとは思うよ。実際ね。


三人称と違って、小難しい言い回しになりにくいし、心情を直接表現できるのがいい。他人の心情は直接表現できない分、主人公に関しては直接表現できる。悲しい、寂しい、嬉しいとか書いちゃえる。


他人の心情に関しては「のように見える」とか、断定しない形にしないといけないけどね。あとは普通に表情の変化や動きで魅せる書き方になる。


主人公の心情を直接的に表現できる分、読者に感情移入させやすくなるというメリットはかなりデカい。


あと、一人称は「しっかり書かれていれば」読みやすい。


読者側に与える影響、という意味でのメリットがあまりにもデカすぎんだろ……。


しっかり書くのが難しい、という話でね。


結構あるんです。


僕は、偉そうなことを言える立場じゃないのは理解しとる。


ばってんくさ、やけに主人公がキョロキョロしとったり、頭いい設定やなかとに物知りやったりしとう一人称小説、ネット上にゴロゴロ転がっとうけんね。


読者側のメリットだけで選ぶとは、実はバリ危険ったい。



せやけどね……。


一人称小説、書くのばり楽しい。


くっそ楽しい。


楽しいよおおおおお! うええええええん!


情緒不安定か。


楽しいから勧めたい気持ちがわかるよおおおお!


みんな、楽しいから勧めてるのか! そうなのか!?

罠やなかとね!? そげんね!? よかった!


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