第3話家族

 ロロさんの話によると、あの時は偶然に通りかかったとのことだった。

 キキと同じ頭をしてる子どもが歩いてる、と僕を見ていたところ、突然の事故発生だったらしい。


「両手で荷物を抱えてたから、思わず首の後をくわえてしまったのにゃ」


 ロロさんは口を大きくあけて、鋭い歯を指さして言った。見た目は愛嬌のある丸顔をしてるのだが、さすがに歯は鋭くとがっていた。



「助かったけど何が起こったのかわかりませんでしたよ」

 僕が言うと、、ロロさんは苦笑いした。


「アラタをくわえていたから、説明できなかったのにゃ。どこで離せばいいかわからにゃかったから、つい屋敷まで連れてきてしまったのにゃ」


 最後にロロさんは、キキに会わせてみたかったのもあるにゃ、と、付け加えた。


 ロロさんの奥さん、ララさんはベージュ色の可愛いケット・シーだった。

 六人、匹? の息子さんも紹介してもらったが、末っ子のキキ以外は、三つ子と双子で、みんなロロさんと同じもふもふの黒い毛並みだった



 キキはお母さんのララさん似で、頭だけちょびっとロロさんに似たらしい。


「キキはちょっと仲間はずれの気分だったのにゃ」

 ロロさんはキキを引き寄せて、もふもふのお腹に抱き込んで言った。


「どんにゃ姿でも我輩の息子に変わりないのにゃ。みんな可愛い。奥さんと同じ色の毛並なんだから、末っ子が特別可愛いのにゃ」


「ほんと、父にゃん」

 キキはもふもふから顔を上げて、ロロさんを見た。


「本当にゃとも」


 僕はちょっとキキがうらやましくなった。

 僕の父親はロロみたいに優しくなかったけれど。黙って見守ってくれる人だった。

 時々、大きな手で頭をぐりぐりして『大きくなったな』って笑っていたっけ。


 母さんはいつも口うるさくて、ウザいなと思ってたけど、料理はうまかった。今になってわかるな。うるさく言うのは僕を心配していたんだって。


 離れてみないとわからなかった。僕がどんなに守られていたか。

 今となってはもう遅いんだけど。もっとたくさん話しておけばよかったと後悔してる。


「アラタ、どうしたのにゃ」

 キキが僕をみて心配そうに言った、


「え?」


「目から水がでているのにゃ、魔法か?」

 キキが首をかしげた。


 僕は気づかないうちに泣いていたらしい。あわてて手で目をこすった。


「ダメにゃ、こすったら目が痛くなるにゃ」


 ロロさんは、やわらかい布を出して僕の涙をぬぐってくれた。

 そしたらよけい泣きたくなって、僕は実際には十六歳にもなっているというのに、ロロさんのお腹にかじりついて大泣きしてしまった。


 キキも僕に寄り添って、一緒にロロさんの腕の中に収まった。

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