昨今、転生モノのメタ潮流の中、架空のゲームや架空のライトノベルに転生する作品も当たり前になってきました。
噛ませ犬だとか悪役令嬢だとかのお決まりの役割を押し付けられたキャラクターがそれに抗う姿はもうどこででも見れます。
しかし果たして転生モノのポテンシャルとはそんなものだっただろうか!! 否!!
「役割の打破」だけが創作物転生のするべきことか!?
原作とはそもそも面白いから二次創作の原作たり得た、その面白さに参入して磨き上げたい、それが二次創作転生ではないのか!?
架空ではない原作に対する転生モノ二次創作の世界ではもっと自由かつ熱い展開がやられているのではないか!
しかしそれを一次創作で再現しようとするには、そもそも「面白そうな原作」を用意する必要がありました。
そんな本末転倒なことをする人が出るだろうか? 架空原作などステロタイプを用意しておく方が作者にも読者にも優しくないか?
架空原作を面白くできるならそっちの方を書いた方がよくて、わざわざそれを架空にしたままで本編を面白くすることなど出来るのか?
出来た作品がありました。これです。
陰陽術の式神とロボティクスの融合によるオカルト×テクノロジーの世界。
間違いなくそれをそのまま書いても外連味があって面白いだろう設定を、「原作」として惜しみなく使う贅沢さ。
その設定を活かして異能バトルとして高いレベルで組み上げたテクニカルな戦闘描写。
転生モノとしても当然レベルが高く、『原作』の登場人物よりも転生者の数の方が多い(というか実質『原作』キャラの出番はゼロだ)という異常な多重転生状況を器用に捌ききっています。
まさかそんな奴が転生してくる!?そんな奴に転生している!?と、「転生」には色んなものがあるんだぜと見せつけてくるそのレパートリー。
作者の二次創作転生文脈に対しての造詣の深さが至る所で感じられます。
架空原作もの・多重転生もの・異能バトルもの、三方面全部でのハイクオリティ。
間違いなくそれらのジャンルとしての金字塔になれると太鼓判を押せる強さです。
「架空原作の二次創作」という、相当ぶっ飛んだジャンルの作品。
「架空の電撃文庫作品」で「その世界に転生してしまったファン(100人以上)」が暗躍・奔走する話のライン自体が珍しく、かつ面白い。
……仮に読者が電撃文庫作品に転生したとして。
「細部まで凝った面白い話」とは「どの場所、どの時間軸にも逃げ場がない危険イベントしかない世界」となる。
そして読者は(一部生前からガンギマッた変態を除き)普通の人間だから、恐慌状態にも陥るし、原作イベント自体を壊してでも未然に防ごうと努力する、と。
学園での異能バトルを行う「とある魔術の禁書目録」「魔法科高校の劣等生」的方向の世界も、転生者にとっては死が身近なデスゲーム、さしずめ「ソードアート・オンライン」でしかない。