12 ご奉仕の時間 >> FIRST ORDER ④
「うあ、ああ……」
そして、その絡繰り仕立ての大百足に襲われているのは──青髪の少女。
何のことはない。
これ自体は、何も間違っていない。
その上で。
「あ、ああ~! 生徒会の方! 誤解ですわ! 誤解! アレは遊びですのよ! わたくし達、鬼ごっこをして遊んでいただけなんですのよ!」
身の丈と比較するのも馬鹿らしくなるくらい巨大な百足ロボに対し、
「いやぁ、お手数おかけして申し訳ありませんわ。ちょっと熱が入りすぎたせいで誤解を生んでしまいましたのね。今度からは気を付けますので、どうかこの場は……」
「な、何言ってるんだぞ、オマエ……。わたしはオマエのこと……」
「わーわー! 勘違いされてしまうようなこと言わないでくださいまし!」
何事かを言いかけた
「……ごめんなさい。アナタの事情、後から師匠に……
でも、と
「それでもやっぱり、わたくしはアナタのことを放ってはおけませんわ。だって、アナタが苦しんでいるって知ってしまったから」
そんな理由で。
それだけの理由で、
先ほどまで一方的に追い掛け回され、命からがら逃げていたはずの相手に対して。
彼女の瞳を真っ直ぐに見据えて、もう一度手を差し伸べる。
「だから……『仲間』じゃなくたって良い。助けられたなんて思わなくて良い。今はただ、私のワガママに付き合って」
「……オマエ…………」
「──
と。
見ると、二人のやりとりを見ていた『メガセンチピード』がギギギ、と不気味な音を立てて二人に向かって上体を持ち上げているところだった。
『……警告。違反生徒取り締まり中の干渉は一般生徒には認められていません。退避しない場合は、妨害行為として取り締まり対象と見做します』
「え、ええぇ!? 今の流れはわたくしの度量に免じて
「それを自分で言えちゃうトコが、お前の良いところだよ。
慌てふためく一般お嬢様を背にして、メイドが戦闘態勢に入る。
臨戦態勢の獣の唸り声じみて低い声色で、
「そもそも襲撃のタイミングが良すぎると思わなかったのか? 襲撃犯が
……向こうも、こっちの
『メガセンチピード』が、その巨体全体をまるで大きな鞭のように振り下ろす。
対する
ゴッガァァァン!!!! と。
まるで重機か何かの駆動音かと錯覚するほどの凄絶な轟音が、『ウラノツカサ』の廊下に響き渡る。
衝突の衝撃で軌道をズラされた『メガセンチピード』の一撃は、
──当然、その背後にいる二人にも、危害は加わらない。
あっさりと脅威を退けた戦闘メイドは、何でもないように背後に守る自分の主人に呼びかける。
「一応言っておくが」
パズルのピースを一つひとつ集めるような調子で、
「そいつはお嬢様を襲った下手人で、守る理由なんか何一つねェ。
そもそも、これから『生徒会』と一戦構えるってんだ。そいつを見捨てて陽動に使った方が、多分
むしろ、そいつを庇えば
…………その上で、聞くぞ」
まるで、主人の意を問う従者のように。
あるいは、協力を申し出る友人のように。
「
だから、
「決まっていますわ。アレは単なるお友達同士のじゃれ合いです。それを悪用して不当に
……わたくしは、無実の彼女を守りたい!
「────仰せのままに、お嬢様」
したがって、
今日一番に楽しそうな──それでいて猛獣のように好戦的な笑みを浮かべて、不良気味のコスプレメイドは宣言した。
「それじゃあ、『ご奉仕』の時間だ!!」
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