11 ご奉仕の時間 >> FIRST ORDER ③
「……さて、それじゃあこれからのことについて話そうか」
そんな二人を微笑ましそうに眺めつつ、
「とりあえず、
問題は生徒会長の狙いだ。
「……『計画』ですの?」
「そそ。アイツ、前世から企み事大好きだったからな。絶対に、何かしらの『計画』があるはずだ。だから、それを知っておきたい」
まるで世間話でもするみたいに言って、
ずしん、と両腕で大きな胸を押し上げるような態勢をとった
「具体的には、トレイシー=ピースヘイヴンの側近レベルの『生徒会』役員の頭脳を確保できれば最高だ」
なんてことを、しれっと言い始めた。
「頭脳を確保……そ、それってもしかして、拉致ってこと!? そんなこと本当にできますの……?」
「まぁ、できるかどうかで言えば余裕だろうが……」
実現性にすら想像が及ばない一般お嬢様とは対照的に、先ほどしれっと転生者を完封した戦闘メイドは渋々といった感じで首筋に手を当てて、
「だが、気は進まねェな」
そう断言した。
方法の実現性を認めた上で──なお、
強固な意志を瞳に浮かべながら、決意のメイドはやる気なさげに言う。
「捕まえて尋問するってことだろ? そいつは
「あー、違う違う。流石にそこまで手段を選ばないつもりもないさ」
吐き捨てるように言う
「俺の霊能が関係する話だ。俺のシキガミクスは情報の抜き取りもできるわけ。だから拉致までする必要はなくて……対象に触れるだけで問題ない。それならどう?」
「……なるほど」
『詳しい内容は企業秘密だから、二人にも教えられないけどね』──と嘯きながらの
拉致ではなく、接触。
「それじゃ、生徒会室に乗り込むか? 陽動が要るだろ」
「陽動もメイドのやることではありませんわよね?」
一転して乗り気になる戦闘メイド。
ニヤリと笑っているところにツッコミを入れる
ご主人様として、いつかメイドの職分についてちゃんと話し合いたいと思う
「あ、あの~。イラストレーター・オオカミシブキの名前を使って対抗の噂を流すのは駄目ですの?」
仕方がないので、
「何も、相手の計画を全部知る必要はないと思いますの。というかその為に生徒会室に乗り込むとか危なすぎるし……。
たとえば、噂を書き換えてしまえば相手の計画は狂いますわよね? それでも目的は果たせるのではなくて?
何も生徒会室に乗り込まなくても……」
「お前は戦闘の危険を避けたいだけだろ」
「ど、どうですのっ!?」
「うーん、難しいだろうねえ」
「向こうの方が噂の流布に割ける人員も、使用しているネームバリューも上だ。
下手をすれば、『
「…………じゃ~やっぱり乗り込むしかありませんわね~……」
肩を落としながら、
「……いや、別に
「それじゃ
「アイツ、神様憑きだから気にしなくていいんだが……」
本当に渋々という形ではあるが、
ともあれ、方針は固まった。
それによってピースヘイヴンが『原作者』としてのネームバリューを利用してデマを流してまで進めたがっていた『計画』を暴く。
その為に、各々が行動を開始しようとした矢先。
「うわァァあああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?」
と、少々色気のない少女の悲鳴が、廊下から響いてくる。
部室から、一〇〇メートルほど先。
そこにいたのは、地下鉄のホームのようなだだっ広い廊下ですらも窮屈さを感じさせるような体躯の、巨大な百足だった。
いいや。
より正確には、巨大な百足の妖怪『大百足』──を思わせるロボットである。
黒光りする光沢と、大量に伸びる鋭い脚。
生物的な動きは、機体に刻まれた『MM-Mega_Centipede』というロゴがなければ、本当に異形の化け物にしか見えないかもしれない。
まるで、怪異と見紛うような機械。
それが、今まさに少女に向かって襲い掛かろうとしていた。
ただし、別に異常事態というわけではない。
それを証明するように、人工の大百足はその機体から自動音声らしき感情を感じさせない言葉を発する。
『こちらは「ウラノツカサ生徒会執行部」です。シキガミクスによる暴行事件の容疑者として、生徒会室まで同行を願います』
その機体の名は、『シキガミクス・メガセンチピード』。
『生徒会』が所有する汎用シキガミクスの一機で、怪異・大百足をモチーフにした『ミスティックミメティクス』シリーズの一つである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます