第2話

ある日、教室で机に向かっていた僕の後ろから、クラスのリーダー格の男子が近づいてきた。


「おい、また母親と兄貴に捨てられたんだって?哀れだな、お前。」


その言葉に、教室中が笑い声で満たされた。僕は拳を握りしめ、怒りを抑えるのに必死だった。


「何か言えよ、負け犬!」別の男子がノートを奪い取り、破り捨てる。


その瞬間、教室のドアが開き、幼馴染の菜々子が入ってきた。彼女はクラスの人気者で、誰に対しても優しい。菜々子は僕の状況を知っていて、いつも心配してくれていた。


「やめなさい!」菜々子が強い口調で言った。「何をしているの、ひどすぎる!」


菜々子の登場にクラスメートたちは一瞬ひるんだが、リーダー格の男子は肩をすくめて笑った。


「何だよ、菜々子。こいつのためにそんなに怒ることないだろ?」


「関係ないでしょ!」菜々子は僕の方を向き、優しく手を差し伸べた。「大丈夫?」


僕は頷くしかなかった。彼女の存在が、わずかな救いだった。家でも学校でも孤立していた僕にとって、菜々子だけが心の支えだった。


放課後、菜々子はいつも僕を見つけ出し、話しかけてくれた。今日も例外ではなかった。彼女は僕の横に座り、静かに話しかけた。


「大変だったね。お父さんのこと、何かできることないかな?」


僕は首を振り、目を伏せた。「ありがとう、菜々子。でも、これは僕の問題だから。」


「そんなこと言わないで。私はいつでも力になりたいと思ってるから。」


菜々子の言葉は、僕の心に温かい灯をともしてくれた。しかし、それでも父親の暴力と学校でのいじめは止むことなく続いた。僕は日々、復讐の念を募らせながら生きていた。


兄貴と母親への復讐を胸に秘め、僕は次第に冷酷な決意を固めていった。しかし、菜々子だけはその冷たさを和らげる唯一の存在であり続けた。彼女の優しさが、僕を完全に闇に堕ちることから守っていたのかもしれない。


それでも、復讐の炎は消えることなく燃え続けていた。菜々子の心配や優しさに感謝しつつも、僕の心は兄貴への復讐を忘れることはできなかった。やがて、その時が来るのをじっと待ち続けるしかなかった。

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