第1話

第1章


冷たい空気の日々が続くようになってきた。俺の生活はいつもと変わらない。

チャイムの合図と同時に勢いよく教室を飛び出し、トイレに向かう。


そうここが俺の居場所。


誰の目にも止まらず、誰の邪魔もしない。

放課の時間は勿論のこと、昼ごはんもここで食べる。

誰にも邪魔されないこの空間が、学校での唯一の安息地だ。

しかしこの安息地を確保できたのも、最近のことである。少し前までは、あのゴミどもがここまで追いかけて悪戯を繰り返していた。だが次第に飽きてきたのか、悪戯は減っていった。

だから俺の安息地は確保された。



もとはといえば、すべて親父のせいである。あいつと二人で暮らし始めてからというもの、風呂にも碌に入れず、洋服もほぼ毎日同じ服を着ている。洗濯などほとんどしていない。こうなれば、言わずもがな同級生たちにどんな扱いをされるかわかるだろう。


俺の家庭環境を知っている人ならば、「あれ?母と兄は?」と思うだろう。言い忘れていたが、あいつらは家を出て行った。俺を置いて。優しい兄貴だと思っていたあいつは偽りであったのだ。


自分だけでもこの糞のような環境から逃げ出すために、母に媚びを売り、俺を庇うフリをしていただけだった。





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