第1話
第1章
冷たい空気の日々が続くようになってきた。俺の生活はいつもと変わらない。
チャイムの合図と同時に勢いよく教室を飛び出し、トイレに向かう。
そうここが俺の居場所。
誰の目にも止まらず、誰の邪魔もしない。
放課の時間は勿論のこと、昼ごはんもここで食べる。
誰にも邪魔されないこの空間が、学校での唯一の安息地だ。
しかしこの安息地を確保できたのも、最近のことである。少し前までは、あのゴミどもがここまで追いかけて悪戯を繰り返していた。だが次第に飽きてきたのか、悪戯は減っていった。
だから俺の安息地は確保された。
もとはといえば、すべて親父のせいである。あいつと二人で暮らし始めてからというもの、風呂にも碌に入れず、洋服もほぼ毎日同じ服を着ている。洗濯などほとんどしていない。こうなれば、言わずもがな同級生たちにどんな扱いをされるかわかるだろう。
俺の家庭環境を知っている人ならば、「あれ?母と兄は?」と思うだろう。言い忘れていたが、あいつらは家を出て行った。俺を置いて。優しい兄貴だと思っていたあいつは偽りであったのだ。
自分だけでもこの糞のような環境から逃げ出すために、母に媚びを売り、俺を庇うフリをしていただけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます