第36話 番外編 夢のような時間のあと..①

注意! この話は番外編です!

時系列としては第32話の大地が立花に『たかたかちゃんねる』について

話した後の立花目線の話になります!


先にそこから読んでおくと話が理解しやすいと思います


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「今日は楽しかった じゃあまた明日」

「ちょっ!ちょっと!まだ話が..!」


私は鷹藤くんの言葉を待たずそのまま電車から降りた

今思えば凄く申し訳ないことをしたと思う

せっかく鷹藤くんが勇気を出して本当のことを話してくれたのに私は逃げたのだから


「...」

気がつくと私はすでに自分の部屋の前に立っていた

駅から家までは記憶が無い 頭にモヤがかかったみたいな感じだったと思う


ガチャ


「っ!」


部屋のドアを開けた途端 思わず腰が抜けてしまう

その時初めてこれまでの状況を再認識した



「『たかたかちゃんねる』ってさ俺なんだ」


(これって夢じゃ無いよね..)


さっき鷹藤くんの口から出た言葉が衝撃すぎていまだに理解が追いつかない


でもこれは夢じゃ無い だって昼間の鷹藤くんと手を繋いだ時の肌の温度..

優しい暖かさは本物だったから


「...」


私はスマホを取り出してマイチューブを開く

当然1番上に出てくるのは『たかたかちゃんねる』の動画..

私はスマホのスピーカーを耳に当て声をよく聞いてみる


「.....はぁ」


「なんで私気づかなかったんだろ..」


初めて意識して聞いてみると間違いなく鷹藤くんの喋り方だって分かる

声が加工されているとはいえこれは完全に彼の声だった


胸がどんどん熱くなる 意識すればするほど頭がぐるぐるしてしょうがない


そんな時、ドアがコンコンとノックされた


「お姉ちゃーん 帰ったのー?」


「えっ!?す、涼風!?どうして..」


びっくりして思わずスマホの音量を下げる

もう..いきなり呼ばれると心臓に悪いって..


「ちょうどお風呂入ろうとしたらお姉ちゃんの部屋から声が聞こえたから!

 帰ってたなら教えてくれても良いのにー!」


「ご、ごめん.. わ、私.. すっかり忘れてて!」


「もう!心配したんだよ!私もお母さんも!」


「ご、ごめん..」


確かに返った事を知らせなかったのは悪かったと思う

しかしなんか涼風がさっきからグイグイ来るような?

いつもならこれっぽっちのことであまり怒らないのに..


「私怒っちゃった!私のお願いを聞いてくれたら許してあげる!」


「え、ええ...!? お願いって何!?」


やっぱりなんかおかしい..

怒っているはずなのに明らかに涼風のテンションが高い..

コレは悪巧みをしている時の涼風だ..


「それはね...」


☆★☆★


「ふんふんふーん♪」

「こらっ 動いたらちゃんと洗えないでしょ!」

「へへへ..だってお姉ちゃんとお風呂入るの久しぶりだから..!」

「もうっ!なんか高いものとか買わされるかと思ってびっくりしたよ..」


涼風のお願い..それは一緒にお風呂に入る事だった


「そんなの要らないよ!ただ...」

「ただ...?」


「今日のデート!どうだったの!?」


「えっ!?」


「お姉ちゃんと大地お兄さん..どこまで行ったの!?き、キスとか..」


「ち、ちょっと待って! 何でそんな事..!」


「だって行ってきたんでしょ..?遊園地..2人で..!」


「ち、ちょっと..! お、落ち着いて!」


何か聞いて来るかと思えばこの話...

さっきからグイグイと来る訳はコレだったのか..


「た、確かに..遊園地は言ったけど..

 き、キスはしてないから! キスは..」


「..キスはって事はそれ以外はしたって事..?」


鋭いな今の小学生は.. やっぱり涼風も恋バナが気になるお年頃なんだろう


「..手は繋いだ それに『あーん』とか...」


「えっ!? す、凄い..! お、大人だ..」


涼風の大人の基準がよく分からないが確かに今日1日で大きく進展したのは確かだ

それに最後のピアノ..確かに鷹藤くんは分かってくれた 私の音を


「じゃ、じゃあ.. 大地お兄さんとは付き合ったって事..?」


「えっ..?」


「だってそんなのもうカップルじゃん!

 お姉ちゃんだって大地お兄さんの事好きでしょ!?」


「好き..なのかな..」


「ほえ?」


「涼風 一回湯船入ろっか 体も洗ったし」

「えっ?う、うん..」


好き..確かにこの気持ちは間違いない

でも私が本当に好きなのはの鷹藤くんなんだろう..


☆★☆★


「ふぅ.. あったまる〜」

「ち、ちょっと涼風..!ち、近いよ!」

「ええ〜だってお風呂狭いんだからしょうがないじゃーん!」


狭い湯船だとどうしても体をくっ付けないと2人は入らない..


「何か幼稚園の頃みたい!一緒にお風呂入るのとか!」

「確かに..しばらく一緒に入って無かったもんね」


しばらく入らないうちに気がつけば私は高校生になっていた

あんなにちっちゃかった涼風だってもう小学生..

全く時間が経つのは早過ぎると思う


「..涼風って彼氏とかいるの?」


「え...!?な、何で!」

「いいじゃない 涼風のそう言う話あまり聞いた事ないし..」


さっきまではずっとこっちが質問攻めされてたんだ

今度はこっちの番だ


「....いるよ..」


「え..」


「は、恥ずかしいよ..こんな話..」


私..冗談のつもりで聞いたのに.!

少し頬を赤らめながら手で顔を覆うその姿は間違いなく恋する乙女だった


「ほ、本当....に..!?」


まさかあんなに小さかった涼風が..

私は女の子だから『娘に彼氏ができた時の父親』ってやつの気持ちが今までは分からなかったけどきっとこういう気持ちなんだろう..


「彼氏ってど、どういう人なの..?」


「えっとね..優しくて、カッコよくて、運動神経が良くて..

 一緒にいると安心感というか..常に私の事を見てくれて..

 そして..凄く可愛いの!!」


なんか変な気がする..

確かに男子にも可愛いという感情を抱く事はあると思うがそれでいてカッコいい..?


「ねぇ涼風.. それって..」


「うん.. 鷹藤つばめちゃん.. 私の彼氏だよ..」


「...」


さっきの驚きを返して欲しい.. まさかとは思ったが...

私は無言で涼風の脇の下をくすぐる


「..!えっ..ちょ!ちょっと!!ははっ!!はははは!!」


「涼風ー!?」


「あははっ!!ご、ごめんって!!じょ、冗談だから!!」


「全く.. 」


「ふぅ.. 冗談だったのに..」


「冗談でも言っていいことと悪いことがあるよ!」


「むぅ..」


しかしこうやって涼風とはしゃぐのは久しぶりな気がする

まさかこんな話をする日が来るなんて思ってもいなかった


「ねぇ涼風..」


「うん?どうしたの?」


「ちょっとお姉ちゃんの恋バナを聞いてくれない?」


「..!! も、もちろん!!」


「ふふっ.. えっとね..」


そうして私は涼風に今日あったこと..これまでの事を話した





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