第35話 ピンクの頭になるのも仕方がない

いきなりだが男なら理解してくれるだろう

俺の気持ちを..


いきなり憧れの女子に家に行きたいって言われた俺の気持ちを..


勿論初めは考えた きっと大切な話とかそういうのだって..

ただの友達同士の交流だって..


でも昼休みが終わる前の立花さんからのキッス..

あれはもう..その..何というか..

考えになっても仕方ないと思うのだ


ちなみに俺鷹藤大地はこれまで付き合った回数は0回

恋愛や青春じゃなくどうやったら美味しい料理が作れるかに時間を

費やす非モテだった訳だ


だからこそいきなり女子にあんな素振りされたらそりゃあ頭がピンクにも

なるって話だ 気持ち悪いかもしれないがぜひ理解してもらいたい


だからこそ今日立花さんがうちに来たいと言った時は考えた..


『もしかしたら今日で俺は俺じゃなくなるかも..!』と


☆★☆★☆


「ただいまー..って誰もいないか..」


時間は午後16時ごろ

いつものなら家には同じく学校帰りのつばめがいるのだが

今日はアイツは習い事に行っている


本当ならこれから夕方まで爆睡をかまして夕食の準備に備えるところだが

今日はいつもと違う だって..


「お、お邪魔します..」


立花香澄さん.. 学校一可愛い美女が家に来ているのだから


別に立花さんが来るのは初めてじゃない

それどころか毎週うちで料理教室をしているもんだから男子グループの奴らよりは

家に来た回数が多いのは間違いない


しかし今日はいつもの料理教室とは違う..

どうやら立花さんが自らうちに来てやりたい事があると言うのだ


何もない家で申し訳ないがとりあえず一旦俺の部屋に入ってもらう


「鷹藤くんの部屋..凄いね..!作業部屋って感じ!」

「ま、まぁこれでも一応マイチューバーだからね..」


あまり俺の部屋は紹介した事が無かったがベット、机の他に大きなパソコン、

それと動画の撮影に使うカメラを置いている

どれも今の俺にとっては欠かすことのできない物たちである


「それで立花さん..何で家に..?」


興味津々で部屋の機材を見ている立花さんには悪いが本題に入らせて頂こう


「そうだった!私ついつい夢中で..!」


「えっとね..その..」


「...っ!やっぱり..ちょっと恥ずかしいな..」


この話になった途端急に頬を赤らめおどおどしている

この反応..!やっぱり..


「えっとね..!私..ずっと..ずっと..」


(..ゴクリ)


「たかたかちゃんねるの撮影をこの目で見たかったの..!!!」


「....」


「.........」


「...え?」


「ずっと好きだった『たかたかちゃんねる』が鷹藤くんだったって知って..

抑えられなかったの..この感情が..まさか推しがこんなに近くに居たなんて!」



「だから..その..」


「お願い..したいなぁって...」


☆★☆★☆


「..アッツ!!!! これヤバいって!火傷するって!!」


何故だ..? 何で俺は夕方からカメラの前でパスタを作っているんだ..?


(こっちかよ!!!!)


こんなの予想できるわけが無い

まさか動画の撮影現場が見たいだなんて

さっきまでの俺のドキドキを返して欲しいものである


(でも..)


「ふふっ..! あはは..!」


(っ..まぁ本人が喜んでいるならいっか..)



こんなに大笑いする立花さんはあまり見たことが無い..

やっぱり俺の動画が彼女の力になっていると思うと嬉しくて堪らない


全く..この笑顔を見ているとさっきまでやましい事を考えていた俺をぶっ飛ばしたくなる 恥ずかしい..


動画を撮影し初めてから30分 とりあえず完成だ


「..じゃあ今日はここまで!また明日っ!!」


ピッ


カメラを止めキチンと撮れていたかさっと確認する


「一応これで終わりだけど..これで良いの?」


「...ごい..」


「すっっっごい良い!!面白かったー!!本当に!!」


「そ、それは..良かったけど そんなに..?」


「うん!やっぱり動画で見るよりも迫力があって..カメラ回ってない時とかの表情も

 凄くかっこよかったよ!」



どうやら本人は大満足のようである


「鷹藤くんありがとう!私の夢を叶えてくれて..!」


「..いや 俺の方もずっと立花さんには悪いと思ってたから..

 まだまだ全然だけど..返せれて良かったと思うよ」


「鷹藤くん..」


「えっ..? って!わっ!た、立花さん!?」


「そういうのはもう無しって言ったじゃん!

 私は別に何も怒ってないよ?」


いきなりあっちが押しかかってきて思わず顔が赤くなる


何というか.. 今日の立花さんはすごい積極的だ..!


「た、立花さん!? その落ち着いて! その..あ、当たってるから!」


「鷹藤くんはいや..?」


「..!い、いやじゃ無いけど.. ち、近いというか..!今日はいつもより..!」


「..私言ったじゃん『もう隠さない』って..」


「ずっと内緒にしてたけど..私だってこういう事するんだよ..?」


「すっごく恥ずかしいけど.. 鷹藤君にだったたら..」


「えっ..!?」


「鷹藤君は..鷹藤君は私にとって特別だから..」


「鷹藤くんだったら..良いよ?」


「....!!!!」


これは..やばい

やばいなんてもんじゃ無い

明日俺は死ぬのか? それくらいの超展開に流石に脳が追いつかない


これが本当の立花さん..

普段の少し天然で優秀な彼女とは違う一面..


積極的だけど魅力的で...

これは凄い.. 普段とのギャップにやられそうになる


「鷹藤くん..」

「た、立花さん..」


これはダメだ.. 家に来るまではずっとこういう展開になるかもと思っていたのに

いざその時が来ると逃げ出したくなってしまう..!


でも.. でも..


前に智紀が言っていたような気がする

『好きな人との初めてはとてつもなく幸せ』だって..


ついに俺にもその時が来たのかもしれない

だからこそ..頑張れ..!! 勇気を振り絞れっ!! 俺っ!!


グイ


「..!た、鷹藤くんっ!」


俺は腕を彼女の後ろに回し抱きしめる力を強くする


ヤバいくらい恥ずかしい.. きっと顔が真っ赤じゃ済まないだろう


「立花さん..!!俺っ!俺っ!」


そして遂にお互いの唇が重なろうとしていた

あっちも俺も目を瞑っているが互いの呼吸でタイミングを合わせる


「っ!!」


お互いに興奮が最高潮であった これはもう止まらない..!


遂に.. 遂に..!!


その時だった....


ガチャ


「「えっ!?」」


今俺たちは動画の撮影が終わりそのままの流れでリビングに居た..

そして時間は既に6時.. この時間って事は..


「...」


母さんだ 1番最悪なタイミングで母さんが帰ってきやがった


「こ、これは.... その....!!」


「....」


気まずいなんてものじゃ無い

お互い 2人だけの世界に入っていて玄関の音に気が付かなかった


そして母はひたすらの無言..

俺も立花さんも頭が真っ白になって抱きついたままから離れることが出来ない


そしてようやく母が口を開いた


「続けなさい..」


「は? えっ?」


「続けなさい.. 私は良いから.. 空気になるから..」


何を言ってんだこのおばさんは

どこに母親が見ている前でキスをする男女がいるんだよ!!


そしてだ.. このタイミングでもう1人帰ってきたヤツがいる


「たっだいまー! 今日は疲れたよ..」


「つ、つばめ..」


「お兄ちゃ.. って」


「ええ!?!? な、何で!!!」


小学生には刺激が強すぎる この状態..

これはどうすれば..


「み...」


「見るなぁぁぁ!!!」


家中に俺の叫び声が響き渡ったのは言うまでも無いだろう


☆★☆★☆


「立花さん..」

「うん..」


「「これからは人が来そうな場所では止めよう」」


あの後母さんとつばめに説明するのは本当に辛かった..

これに懲りてもう2度と取り乱さないようにと心に誓った俺たちだった


今は立花さんを見送るため駅の前にいる


(どうしてだよぉ!!)


神様よ 何で毎回毎回チャンスが来たと思えばこんな事になるのか

マジで一回くらいは目を瞑っていて欲しい 


「今日はお互い大変だったね...」

「いや本当に..2度と忘れない1日になったよ..」


智紀達に何で言えば良いんだ

『良い感じになった思えば家族に見られて終了』なんて..


「でもこんな事があってもやっぱり鷹藤くんといると楽しいよ!私!

 また鷹藤くんが良かったらたかたかちゃんねるの撮影見せてね!!」


「いやぁ..ちょっとそれは..トラウマになったかも..」


今回の出来事によってリビングが怖くなった

全くもうあんな事は勘弁だ


「ふふっ じゃあ今度は私の家で..」


「えっ?立花さんの家って前にダメって..」


「うん..本当はダメなんだけど今はお父さんが海外に行ってていないから..

 良かったらまた今度来て!」


「ま、マジ!? た、楽しみにしておきます..」


立花さんの家.. どんな所なのか 気になって仕方ない


「じゃあ私!そろそろ行くね!」


「ああ 気をつけてね」


「うん!じゃあまた明日っ!!」


幸せな時間はすぐに終わってしまう

残念だが今日はお別れだ


立花さんが小走りでホームへ向かって走っていく

姿が見えなくなるまで待ってから俺も帰ろうと思っていた

その時だった


「あっ!」


遠くになっていたはずの立花さんがまたまたこっちへと戻ってくる


「えっ!?どうしたの?」


「私..!すっごい大事な事忘れてた!」


彼女はそう言うとカバンからある物を取り出す それは..


「手紙..?」


「うん..! いつか送ろうと思っていた『たかたかさん』へのファンレター!

 でもこんな近くにいたから..直接渡そうかなって!」


「えっ!? 良いの!?」


「少し恥ずかしいから.. 1人の時に見てくれると嬉しいかも!

 じゃあこれで本当にバイバイだね」


「う、うん わざわざありがとう! じゃ、じゃあ..」


ちゅっ


「へ..?」


「お別れのキスも忘れてた..! じゃ、じゃあまた明日ね!!」


そう言い残して立花さんの姿はホームへと消えっていった


「...」


お別れのキスだと....

何だよそれ.. 普段なら絶対にしないような事..


(うぉぉぉお!!!!!! 可愛いいいいい!!!)


ズルじゃないかそんなの!! か、可愛すぎる!!


積極な立花さん..! あまりにも破壊力が高すぎて

さっきから胸の鼓動が加速して止まらない


とくん とくん


これはきっと一目惚れだ

俺は再び立花さんに一目惚れした


こんなの好きになるなって言う方が無理な話である


そして一方その頃立花さんは..


「っ!!!」


(や..)


(やっちゃったぁぁ!!)


あっちはあっちで大胆な行動をとってしまった事が恥ずかしすぎて

駅を爆走しているなんて事は当然俺が知る訳も無いのだった











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