第32話 絶体絶命の鷹藤くん

「な、なぁ..あれ流石にヤバくないか..?」


「ああお前もそう思うよな..?あれ..」


「....あ..ああ..」


「死んでる..!」


 どうも今にでも塵になって消えていきそうな鷹藤です

 今日は月曜日 昨日の夢の様な1日も終わり今日からまた嫌ながらも

 普通の平日が待っているはずだった..


「はぁ..大地お前..」


「智紀..おれ..もぅダメだ..」


 色々な生徒たちが挨拶を交わし1日の始まりを迎えると言う教室の中

 俺は1人完全に燃え尽きている..


「おい流石にお前の様子がヤバすぎて周りも引いてるって..

 一旦外行くぞ」


「あぅ..」


 強引に腕を引っ張られたまま中庭のベンチへ連れ去られる俺だった


「はぁ..マジで何やってんだよ せっかく良い感じだったってのに」


「うう..」


 昨日あの後..


 **

「実は『たかたかちゃんねる』って俺なんだ」


「..え?」


 初めて自分の口から言った事実

 当然の様に立花さんは驚いた様子で口を開けている


「もっと早く..いや出会った時に伝えれば良かった..

 それでも出会ってすぐなのにそんなこと言ったら嫌われるかもって思って..」


「ずっと騙しててごめん でも俺は..!」


 プシュー


 俺がそのまま言葉を伝えようとした時だった


「終点〜〇〇駅〜本日はご搭乗誠にありがとうございました〜」


「え?」


「ごめんね鷹藤くん」


「今日は楽しかった じゃあまた明日」


 電車の扉が開き立花さんは一言俺にそう言った後電車から降りて行った


「ちょっ!ちょっと!まだ話が..!」


 俺が呼び止めようと声を出すけどその声は

 届かなかった


 **

「はぁ..どうしよう..」


「どうしようったって謝るしかないだろうが」


「でもまた避けられる様な事になったら..」


「はぁ..せっかく良い感じに距離も近くなったのに..」


 やっぱり今まで嘘をついていたのが良くなかったのか

 それとも言うタイミングが間違っていたのかもしれない

 もう少し待ってもう少し落ち着いたら..


 でも今更そんな事考えたって今目の前の出来事が変わる訳じゃない

 でもどうすれば良いのか分からない..


 中庭で俺たちが頭を抱えているそんな時だった


「あれ?先輩..?」


「ん..?その声は..関口?」


「おっはーっす!それに..先輩のお友達さん?」


「君は..誠の後輩の子だっけ?前に誠から話を聞いたよ」


「えっ?まこちゃん先輩の彼氏さんって..あなたっすか!

 うわぁ..!話に聞いてた通りイケメンっすね!」


「イケメンって..恥ずかしいわ!」


 あんまり関わりのないと思っていた2人だったが

 そう言えばお互い夢美さん繋がりだからある程度お互い認識していた


「そんなことより..何でいるんだ?」


「何でって..そりゃ飲み物を買いに来たからっすよ

 自販機ここにしかないっすから」


「そういえばそうか..」


 確かに中庭に来る用事っていったらそれくらいしか無かった

 こいつは基本保健室にいるイメージがあるからそれ以外の場所で出会うのは

 少し違和感があるというか..


「それよりも先輩たちが何でここにいるかの方が気になるっすよ」


「そういえば!昨日かすみん先輩と行ったんすよね!?でーと!!」


「ぐっ..!!ぐはっ..!」


「!?せ、先輩!?な、何で急に魂が抜けたみたいな表情になるんすか!」


「ああこいつ実は昨日な..」


 思い出してダメージを受けている俺の代わりに智紀が昨日あった事を説明してくれるのだが..


「えー!先輩!言っちゃったんすか!たかたかちゃんねるの事..!」


「だ、だってさ..立花さんだって色々話してくれた訳だし..

 俺も隠し事とか良くないと思ってさ..!」


「むふー..確かにいつかは絶対に言ったほうが良いとは思いましたけど..

 お互い疲れている帰りの電車の中で言うのはちょっとミスったんじゃないすか?

 もっと喫茶店とか!ゆっくり話せる時に言えば..」


「確かに..それは思った..」


 いくら雰囲気に流されたとは言えいきなり推しのマイチューバーの正体が

 俺だって言われたら誰だって驚くに決まっていたのだ..

 くそっ..もっと早く気がついたら..


「うーん..やっぱりもう一回ちゃんと話したほうが良いっすよ!」


「俺も同感だ..大地には俺らみたいな事になって欲しくないからな..」


「関口..智紀..」


確かにこのまま何も話せないんじゃ次第に溝は深まっていく

一度そうなればきっと後悔するって..きっとそう思った時だった..


キーンコーンカーンコーン


「え?も、もうそんな時間!?」


「ヤバいっす!あとちょっとしかないっすよ!」


俺たちが中庭で話している間にかなりの時間が経過していたのか

気がつけばホームルームを知らせるチャイムが鳴っていた


「と、とりあえず..!急げっ..!」


まだ話は全然終わってないがホームルームに遅刻して担任に怒られるのが

何よりも恐ろしい..


俺たちはあの後結局ダッシュで教室に向かったが間に合うわけもなく

ホームルームも終わりクラスではみんながわいわいと話している間

俺と智紀だけ教室の前で担任にこっぴどく怒られていたのだが..


しかし..


(立花さん..)


「全くお前たちは..朝から遅刻とは..そんなじゃ社会に出たら..って鷹藤!

お前話聞いてるのか!?」


「え?たちば..いやっ!」


「たちばぁ..?何も聞いて無いじゃ無いか!!」


「えっ!?そ、それはその..!」


怒られてるとかそんなのより学校に来ている立花さんの表情のほうが気になった

いつも通りの落ち着いた表情だが少し曇っている様な..

やっぱり立花さんも心残りがあるのかもしれない..


「だ、大地お前..」


「え?」


「鷹藤..!..」


前にいる担任の顔が完全に真っ赤である事に気づいて無かった


「後で職員室に来い!!!!」


あ、これ死ぬやつだわ


果たして生きて立花さんと話すことは出来るのか..?

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