第28話 2人きりの時間

「鷹藤君!次はあれ!あれ乗ろう!」


「はぁはぁ..も、もう無理..立花さん元気すぎるって..」


俺が関口と一緒に動画を撮影した日から10日経った

学校の中間テストも無事..いや数学は赤点かもしれない

まぁそれでも前にみんなで勉強した甲斐もあってぼちぼちは出来た方だ


「そう?じゃああそこのベンチで休憩しよっか」


「うん..ここのアトラクションどれも激しすぎるよ..」


今俺たちは関口にもらったチケットを使って2人で遊園地に来ているわけだ

立花さんを2人きりで誘うのは緊張したが本人はすぐオッケーしてくれたので

良かったと思う


「私..ここ初めて来たけどみんな面白いね!

 本当はチケットをくれた鷹藤君の友達にもお礼を言いたいくらいだけど..」


「え?いやいや俺から言っておくから!立花さんは心配しなくても大丈夫!」


「そ、そう?」


ふぅ..危ない危ない バレたら面倒だからな..

今回チケットをくれたのは関口である事は立花さんに言っていない

だから俺の友達からもらったということにしているのだ


「あとさもしかして鷹藤君ここにくる事ドクちゃんに言った?」


「え!?な、なんで?」


いきなり立花さんの口からドクちゃんという言葉が出てきて驚いてしまった


「昨日くらいかな急にドクちゃんから『楽しんできてくださいっす!』って

 Loinが来たから...」


「そ、そうなんだ..」


(あいつ..立花さんにあんまり俺の話するなって言っておいたのに..!)


「う、うん..い、一応関口には言っておいたんだ..お土産欲しいってさ..」


俺は咄嗟に嘘をついて話を誤魔化す


「そうなんだ!良かった..ドクちゃんと鷹藤君が仲良しになって!」


「な、仲良しね..」


俺と関口の関係は仲良しなのか..?

結構変な出会い方をしたからこそあまり実感は無い

だが仲は悪くはないだろう 


「そう言えば関口が前に立花さんとは中学の先輩後輩って言ったけど

 結構仲良かったの?」


「うん 私が行ってた中学校は小中一貫の女子校だったんだけど

 ドクちゃんとは小学校の時からよく遊んでたの」


「中高一貫って..結構長い付き合いなんだね」


「私小学校の時ね体が弱くてよく保健室に行っていたんだ」


「え?そうだったんだ」


「うん でねその時によくドクちゃんが私の話し相手になっていてくれたの」


「その頃からあいつはサボりだったのか..」


「確かにドクちゃんよく先生に怒られてたけど..

寂しい思いをしていた私にとってはドクちゃんは凄くキラキラしてたんだ」


「まぁ何か分かる気がするよ 

 人を楽しませる力があるというか..結構周りを見てるからな」


「そうなの!まぁでもドクちゃんって少し言葉が強いというか..

昔から今みたいな感じだからよく勘違いされちゃう所もあるけど

 本当はすっごく優しいの!!」


確かに少し生意気なところはあるが本人がそこまで危険じゃ無いのはこの前感じた しかも俺たちのためにわざわざチケットまで用意してくれたのだ


(これは本当にお土産買って行かなきゃな)


ゴンゴンゴンゴン!


「ん?何だこの音?」


俺たちがベンチで話していると突如ベルのような音が聞こえた

その音の方を見ると..


「わぁ!鷹藤君!!チュッピー君だよ!もふもふで可愛い!!」


そこにはこのテーマーパークのメインマスコットらしいチュッピー君がいた


(可愛い..のか?)


確かにもふもふしてはいるがどこか見たことのあるような感じのキャラクターだ

正直俺には女子の言う可愛いが全く分からん


まぁ立花さんが良いならそれでいっかって感じではある


「鷹藤君!どうやらチュッピー君と一緒に写真が撮れるみたいだよ!

 ほらほら鷹藤君も!」


「え?お、俺は良いよ..俺は2人を撮るからさ..」


立花さんと初めてのツーショット!いやチュッピー君がいるからスリーショットか... それでも俺は昔から写真に映るのが苦手なのだ


本当は立花さんと一緒に写真を撮りたいだが変に映る方が恥ずかしいのでここはパスしようとするが..


「むう..ダメ?」


「!!!」


(ダメだってこんなん..可愛すぎるって..)


「と、撮ります..」


反則的な可愛さでおねだりされて了承しない男なんて居るはずがないだろう

全く俺はちょろい男である


「じゃあ撮りまーす!3..2..1!!ゼロ!」


近くにいたキャストさんにカメラを渡して写真を撮ってもらう

普段動画を撮っているから写真くらい大丈夫だろと思われるかもしれないが

それとこれは話が違う なれないものは慣れない


「..はい!撮れました!お写真は大丈夫ですか?」


そう言って撮ってもらった写真を見る そして..


「ふふっ 鷹藤くん目つぶちゃってる..ふふっ」


「わ、笑わないでよ!」


案の定俺の目はしっかりとつぶられていた

はっきり言って撮り直したい..だがもう一回撮るのも嫌だ


「もう一回撮り直す?」


「か、勘弁してください..」


「ふふっ冗談だよっ わざわざ一緒に撮ってくれてありがとう」


そう言って立花さんはニッコリと笑っている

まぁその顔の立花さんが見れたのならいいだろう


「チュッピー君もありがとうね」


「んでそろそろ行こっか俺も回復してきたし」


「そうだね!私次コーヒーカップ行きたい!」


「またいきなりハードなやつを..」


このテーマパークに来て知ったが実は立花さんかなりの絶叫マニアらしいのだ

それにここにも何度か来たことあるみたいで..

それに比べて俺は絶叫は苦手である


「ははっ 乗ってみるときっと楽しいよ!

 でも私一回お手洗い行ってくるね」


「あぁうん待ってるよ」


(..とりあえずあと3回までなら耐えれる..)


ここに来てからとりあえずジェットコースターに乗ったが既にフラフラである

耐えれるのか..?俺の体..


「..」


そんなことを考えながら俺はさっき撮った写真をもう一回見る


(やっぱり可愛い..)


目に映るのはもちろん立花さん

パッチリとした目に雪のように透き通った肌


俺みたいな男とは釣り合わないほどの美女とこうして2人でデートに

来れているなんて少し前の俺なら信じられないだろう


「...ふふ」


こうして立花さんがいない間にこっそりとさっき撮った写真をスマホの待ち受けに設定する俺だった


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