第26話 激アツ料理対決っす!①
「では先輩行くっすよ..」
「お、おう..」
そう言うと関口は一呼吸挟んだ後カメラのボタンを押す
「どうもみなさんこんにちゃっす!!
料理界の
「今回は超スペシャルゲストに来てもらったっすよ!!
どうぞぉ!!自己紹介頼むっす!!」
「ど、どどどどどうもーー..」
「ふはは!何緊張してるんすか!」
「き、緊張するって!人のチャンネルなんか出た事ないんだから!」
「もう..あの超人気のたかたかさんが緊張してるところなんて
リスナー諸君!!目に焼き付けておくっすよ!!」
「か、からかうなって!」
「えっと今日やっていくのは..」
**
「ふぅ..とりあえず冒頭撮り終えたっす!
先輩!!もうちょっとテンション上げていかないと!」
「仕方ないだろ..他人とコラボする事なんか初めてなんだからさ!」
関口は関口であのテンションで良く撮影できるなと感心する
普段からテンション高めだがあんなアイドルみたいな声になるとは..
流石料理界のアイドルとでも言うべきか
「せんぱい〜?今変な事考えているっすか?」
「!!べ、別に..!?」
「図星っすよ..!まぁいいっす!そんな態度取れるのも今のうちっす!」
そう言うと関口はカメラのボタンをいきなり押し出した
「ちょっと!いきなりすぎだろ!」
「ゴホンゴホン..じゃあ皆さん!!今日はあの料理系投稿者の王こと!
たかたかさんと料理対決をやっていくっすよ!!」
「今日作る料理はズバリカップケーキっす!!
まあ私の得意料理ですけど!」
「じゃあ早速料理にレッツラ!GO!っす!」
(!?え!もう行くの?)
「えっ?もしかして何も説明とかも無いやつ?」
「あっ確かに作り方の説明忘れてたっす!...まぁでも
たかたかさんくらいになると知らない料理でも初見で..」
「いや作れねぇよ!俺を何だと思ってるんだ!」
さっきから超テンポで進んでいく撮影に少し呆気にとられていたが
流石の俺と言えど何も知らないところから作るってのは不可能だ
「うーん..まぁいいじゃ無いっすか!」
「良くねぇから!」
「うーん...先輩ちょっとしつこいっすね..」
何故かやけに教えたがらない関口..
なんか理由があるのか..?
「流石にこれじゃ勝負にならないって!それに..って..ん?」
ガゴーン!!!
「!!な、何だ!?」
「ひぇっ!!こ、この音は..!」
突如家の奥の方からとてつもない音が聞こえてきた
その刹那関口は顔を青ざめさせながら部屋に置いてあった時計を見る
「4時半...それに今日は火曜日って事は...わ、」
「!?どうしたんだ!?」
やけに焦る関口さっきまでの余裕の表情も無くなっている
「忘れてたー!!」
関口がそう叫んだ途端部屋のドアがガチャリと開く
そしてそこにいたのは..
「パパ!そうだった..今日はパパが休み..」
「何だよ灯いきなり叫んだりして..って君は?」
「ほ、ほんものだ...まじの匠シェフだ..」
そこにいたのは本の中で何回も見た関口匠シェフの姿だった
こうやって料理界の超大物を目の前にして思わず言葉を詰まらせてしまう
「..ってカメラ..そうかそうか撮影中か!」
「は、はい」
「ああこれは自己紹介がまだだったね..
私はそこにいる灯の父の関口匠だ」
「ああ..えっと..」
「お、俺!いや僕は鷹藤大地です!一様これでも料理人っす!」
「そうかそうか!君も料理人なのかこれは同業者だね」
「!!いやいや俺なんかまだプロとして厨房にも入った事ないし..」
「ちょっと2人とも!!何挨拶してるの!」
俺と匠シェフが話していると横にいた関口が面白くなさそうに
話に入ってくる
「ああ..そういえば撮影中だったな..」
「!?先輩忘れてたんすか!?」
「ちょっとシェフとの話に夢中でな..」
「酷いっす!というかパパ!そろそろ戻ってよ!撮影が再開できないから!」
「はいはい..押すなって」
匠シェフは慣れた様に関口に押され自分の部屋に戻されようとする
その様子を側から見ていると匠シェフは慣れた様に落ち着いている
さっき話して思ったがシェフはやけに謙虚で落ち着いている
やっぱりプロとして活躍するにはあのような態度も身につけていかないと
いけないのだろうか..
俺がそんな事思っていると匠シェフが関口に押し出されている途中で
机の上に置いてある材料たちに気がついたのか口を開く
「牛乳に薄力粉、砂糖..サラダ油..もしかしてカップケーキか?」
「え?それだけで分かるんですか?」
「まぁ長年厨房に入っているしある程度材料で何を作るかは分かるよ
っていうかカップケーキって事はまさか..」
「ひぃ..!」
匠シェフの目つきが少し鋭くなると横にいた関口の顔が砂糖の様に真っ白になる
「灯!お前また説明もなしに料理対決させて勝とうとしてただろ!!」
「むぅ..だって..!」
「だっても明後日も無い!いいか?本当に料理が上手い奴はな!
こういう卑怯な手は使わないんだぞ!」
「むぅ...」
(またって事はこいつ..初めてじゃ無いな..)
自由気ままに思える関口も流石の父親には敵わないみたいだ
奴がやけに作り方を教えなかったもの初見の俺を倒したいという
意図があったのだろう
それにしても匠シェフのお叱りによって明らかに関口のテンションも下がっている
ただのお叱りなら俺は何も言えないがこれは一応動画撮影中だ
しかも「ドクちゃんねる」に上がる動画なら尚更このままでは
良く無いだろう
(うーん..このまま俺が関口に教えてもらって勝負するってのも何か
つまらないような...って そうだ!!)
少し考えるといい案を思いついた
しかしこの案は少し失礼というか..恐れ多いが..
「あ、あの!!」
「もの凄く恐縮なんですが..匠シェフ!!」
「ん?どうしたのかな?」
「俺にカップケーキの作り方を教えて頂けませんか!?」
「ほぅ...!」
「えっ」
俺の案というのは匠シェフに教えてもらった俺vs関口の料理対決というものだ
「えーーー!!そりゃ無いっすよ!!ただでさえ大ちゃん先輩料理上手なのに..
パパに教えてもらうなんて..」
当然の如く関口は反対してきた
だが肝心の匠シェフの反応は悪く無い
「なぁドクちゃん..」
「な、なんすか!」
「考えてみろよ..!もしここで匠シェフに教えてもらった俺を倒したら
実質2人を倒したってことになるんじゃ無いのか?」
「え!?..た、確かに..?」
(よし!なんか納得している!これは行けそうだ!)
ここは押しどきだ!このままゴリ押しで関口を納得させれるかもしれない
「このまま無知な俺を倒したとしても本当の俺を倒したってことにはならないんじゃ無いか?」
「うーん..確かに言われてみれば..」
「それにこっちの方が絶対盛り上がる!動画をずっと撮ってきたから
何となく分かる!!」
「うーん!分かった分かったっす!!そんなに熱く言ってこなくても!」
俺の熱弁に負けを認めたのか遂に関口は納得してくれたようだ
「よし!」
「で、でもパパは良いの?」
関口はそう言って匠シェフの方を見る
(あ、そういえばあんまり匠シェフに了承取らず話進めたかも..)
(それに今考えたら失礼だったかも!相手はプロなのに!!)
ただ自身の熱に任せるまま話したせいで大切な許可を貰うステップを
飛ばしたような気がする..俺は恐る恐るシェフの方を見る
だがそこにいたシェフの表情は思ったよりも笑顔で..
「フフ!ハハハ!!良い! 君凄く面白い!」
「た、匠シェフ..!?」
(わ、笑っている!!)
さっきまでの少し引き攣った表情とは異なり笑顔だ
「今まで私に料理を教えて貰おうとした人は沢山いたが..
こんなにストレートに言ってくる人は初めてさ!」
「え、えっと!その失礼に思われたならすみません!
べ、別に舐めているわけじゃ無くて!」
「いいや?別にそんなので怒りはしないさただ..」
「ただ君からいい料理人の匂いがするんだ
それに真っ直ぐなのもグッドだね!」
(まっすぐな目..そういえばこの前奏さんのおばさんも褒めてくれた)
「君の可能性を信じて私もできる限り教えよう!灯良いね?」
「わ、分かったよ!じゃあもうこうなったらパパが審査員で!」
「え?匠シェフが審査員?何でだ?」
「もぅ..悔しいからあんまり言いたく無いけどパパが動画に出た方が
なんか再生数伸びるから丁度良い役なんすよ..」
「け、結局再生数ね..」
いやとは言いつつもしっかりと匠シェフを利用しようとしている感じ
プロ意識(?)みたいなものを感じる
「あーもう..色々ごちゃったから後でカット祭りっすね..
じゃあもう2人とも撮り直すっすよ!」
「えっとよろしくお願いします!匠シェフ!」
「ああえっと鷹藤君で良かったかな?」
「ああ..えっと一応撮影中はたかたかって呼んでください!
一応本名は内緒なので..」
「たかたかって..君!もしかしてあのたかたかチャンネルの!?」
「えっ..ご存知なんですか?」
「勿論勿論!娘のライバルなんだって?」
「まぁ一応..」
関口がカメラをセットしている間に俺は匠シェフと何気ない話をする
そうしてたかたかチャンネルの話になった途端匠シェフが俺の耳元で
ボソボソと話し出す
「その..えっとな..うちの娘何というかすこし生意気なところがあるから..
もし気に入らないことがあったらすぐに言いなよ?」
「フフ..シェフも娘さんには困っているんですね」
「そうなんだよ!灯やつ!最近思春期なのか前より当たりがキツくてさ..
私も色々大変でさ..」
匠シェフ..2人きりになると急にラフというか軽めになるみたいだ..
「ちょっと!そこの2人!何の話してるんすか!」
「あ、やべ」
「ほうら!じゃあ準備できたんでいよいよ調理パートっすよ!」
(撮るまでは大変だったけどなんか楽しみになってきた!)
「3、2、1 スタートっす!」
そうしてまたカメラのボタンが押された
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