第23話 謎の少女に脅されて①

「...ふぅ こんなもんか」


現在俺はキッチンで昼用の弁当を作っている


今日は何だか塩っ辛い物が食べたい気分だったので明太子スパゲッティを作っていた


ドドドド...


(ん..もうこんな時間か)


上から大きい音で階段を降りてくるのはつばめだ

最近つばめが降りてくる=6時半という認識なので時計を見る必要が無くて助かっている


「おっはよ〜!」


「おはよう 今日も元気だな」


「ねぇねぇ!昨日の動画どうだった!?」


つばめに言われてスマホを取り出す

朝はつばめと一緒に投稿した動画の反響を見るのが日課になっているのだ


「どうかな..昨日のやつあんまり手応えなかったんだが..」


「そうなの?っていうかお兄ちゃん腕の怪我治った?」


「ん?ああこれか!ぐっすり寝たらすっかり治ったよ」


つばめの言う怪我というのは俺が昨日跳び箱で失敗して出来た怪我のことだ


「全く..10段くらいで失敗だなんてお兄ちゃんだらし無いよ!」


「おいおい俺はお前と違って体操も何もやってないシロートなんだよ」


つばめ基準で言われても全く困る

つばめは小さい頃から体操を習っているので跳び箱くらい余裕なのだろう


「むぅ..言ってくれたら私が教えてあげたのに!飛ぶ時とか..こうやって!」


「はいはい」


聞いても無いのに跳び箱のコツを教えてくるつばめを無視してスマホを開く


(今日はどうかな..10万くらい行ってたら良いんだけどな..)


昨日の動画は特別力を入れたわけでは無いがもし行ってたら..くらいの気持ちで見てみる


しかしそこにあった数字に俺は目玉が飛び出そうになった


「よ、ヨンジュウゴマン!?」


ばっちりと45万と書いてあった

もちろんランキングは1位 ありえない数字に驚きを通り越して少し引いている


「何でだ..」


これだから動画投稿というのは分からない

力を入れた時に限って全然みられないのに..


理由を探すべくコメントを見てみる

普段ならコメントはサラッとみる程度だが今回は流石に何かあると思い見てみる..


そして俺は今まで気づいてなかったのだ..昨日不思議の少女が俺につけた印を..


『たかたかさんの腕の絆創膏何!?めっちゃ可愛いんだけど!』


『腕のばんそうこうのマーク..もしかしてドクちゃんのやつか!?』


『もしかして匂わせ!?』 


(腕の絆創膏...あっ..)


青ざめながら腕をみる

そこには昨日『ドクちゃん』こと関口に貼ってもらった絆創膏


別にいっかと剥がすのを放っておいたのが裏目に出た

『ドクちゃんねる』は今の料理界隈で知らない人はいないインフルエンサー

そして俺もそのインフルエンサーの1人..話題にならない訳が無いのだ


(これ今日学校行ったら絶対関口に何か言われるよなぁ..)


今までも何度か身バレの危機があったが今回がダントツでやばい

己の危機感の無さに毎回呆れる..


「お兄ちゃん!凄い人気だね!」


「おっ..そっそうだな..」


そういえばつばめには昨日の詳しいことは話していないのであんまり分かってないのだろう


(まじで学校行きたく無い..)


**


「はぁ..」


「結局こうなるよな..」


俺が居るのはクラスの前

母さんに『理由は聞かず休ませてくれ』と言ってみたが聞いてもらえるはず無く..

憂鬱な気持ちながらドアを開ける


「おはよ..」


俺が挨拶しながら入ると1番最初に目に入ったのが男子グループ

その中の天野が挨拶を返してくれる


「おっす大地!今日は元気ないな」


「やっぱ分かる?色々あってな..」


「分かる分かる!お前顔に出やすいもん」


「やっぱそうか..?って言うお前はやけに機嫌良いな..」


俺と話している間もやけにニヤニヤしている天野..

こいつが機嫌良い時は大体ロクなことにならない


「ふふん..そりゃ朝っぱらからあんなの見たら誰だって笑顔になるぜ!」


「あんなの?何だそれ」


「あれだよあれ!3人だけでも最高に目が潤うってのに..

 今日はもう1人居るんだぜ!」


そう言って天野が指差したのは美少女グループの机..そしてそこには..


「ほらこれ最近人気のグミなんだー!ドクちゃんいる?」


「ああ欲しいです欲しいです!いただきます!」


「相変わらずだな..」


「ふふ..本当に久しぶりだよねこうやって会うの」


(せ、関口..!!)


そこにいたのは立花さんの膝の上に座りながら見事に餌付けされてる関口..

そして夢美さん、奏さんとも楽しそうに話している


「ん?あ!鷹藤君おはよう!」


「立花さん..お、おはよう!」


立花さんが俺に気がついたのか挨拶をしてくる

俺は話を聞く為近づいて行く そして膝の上にいる関口と目が合う


「あ!この子が気になる?この子はね私たちと同じ中学校だった..」


「おはようっす!」


立花さんが俺が分からないと思い関口のことを説明しようとするが

それに関口が被せて俺に挨拶してくる


「あれ?ドクちゃん鷹藤君を知ってるの?」


「まぁ..マブダチっす!」


「いや違うけど..」


マブダチも何も昨日が初対面だ

相変わらず訳のわからないやつだ


「まぁ良いや 先輩」


「ちょーっとお話しがあるんすけど...」


(やっぱりそうだよな..)


目の前の関口からは少し変なオーラが出ている

やっぱりバレたか..今更言い訳しても無駄なので少し席を外して話すことにした


「分かったよ 保健室で良いか?」


「OKっすじゃあ行きますか」


「じゃあかすみん先輩たちまた今度っす!」


「..ちょっと状況が飲み込めて無いんだけど..」


いきなりの事に立花さんたちはみんな困惑している

そりゃそうだ昨日の話は誰にもしてないので俺たちの関係を知っている訳が無い


「まぁまた今度話すっす!じゃあ」


そう言って2人で保健室へと向かう俺たちだった






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