第22話 Dr.謎の少女

「イテテ..クソ..」


「大丈夫か大地!」


「うむ、右手の手首の所切れて血が出てるな..これは保健室に行ったほうが良い」


やっぱり人間無茶をすると無茶した分だけ悪いことが起きてきまうと痛感する

朝は少し余裕を持って学校に来て..朝は智紀達をお祝いして..

今日は良い日になると思ってたのに..


時間は少し遡る


**

「よーし今日は跳び箱のテストをするぞ!順番に並べ」


やけに広いうちの学校の体育館に整列する俺たち奥には女子も同じ様に並んでいる


(くそ..緊張するぜ)


あの地獄のスポーツテストが終わった後の体育では体操をやっていた

それで今日はその中の1つ『跳び箱』のテストなわけなんだが..


(こ、こいつら何でそんなにぴょんぴょん飛べるんだ!?)


うちのテストは飛ぶ前に5段、7段そして10段の中から1つ選んでから飛ぶ

もちろん段数が多いほど成功した時の得点も高いわけだが..


「はぁ...!!とう!!」


(バ、バケモンかよ!!)


「よし熱気..10段成功だな今のお前なら15段くらいいけるんじゃ無いか?」


「フハハハ!!もちろん!何十段だって飛んでやりますよ!!」


怪物クラスの運動神経を持つ男__夏生のやろう..俺の一つ前の順番に10段飛びやがった それにあまりにも余裕の成功 周りのみんなも盛り上がっている


「えっと..じゃあ次は鷹藤だな..」


「は、はい」


「委員長がんばれー!」


「いけー大地!10段だ!」


(くぅ..10段なんて飛んだこと無いしな)


周りの奴らがヤジを入れて来るが俺は練習の時でも10段を成功させた事は無い

ここは安定の7段を飛ぼうかと思っていた だが..


(た、立花さん..何故かこっちを見ている..)


奥にいる立花さんが俺を見ているのだ

俺も男だ当然気になっている人が見ているとなれば格好をつけたくもなる


「うーん..よし 先生!10段でお願いします!!」


「おお鷹藤!頑張れよ!!」


(だ、大丈夫..脳内でイメージは出来ている..)


心の準備ができた俺は助走する

大丈夫俺なら行けるはず!!


「どりゃぁ!!」


**


「ほら一応届書いたから保健室で診てもらえ」


「ありがとうございます..」


結果は見事な失敗 アメイジングにずっこけた上手首を怪我してしまった訳だ


(保健室なんて初めて行くな..)


俺は去年もこの学校に居たが保健室に行くのは今日が初めてだ

迷わない様に向かう


(よし..ここだな)


「失礼しまーす..って」


保健室の中に入った訳だがそこには誰も居なかった


「留守か..?」


とりあえず座って先生を待とうと思い適当に椅子にかける

その時奥の方から声が聞こえたのだ


「先生なら今は居ないっすよ」


「ん..?き、君は?」


「どうもっす」


そこに居たのは1年生だろうか白衣を着た女子がいた


「まぁ先生が来るまで私とお喋りしましょ!」


そう言って俺の前の椅子に座る彼女さっきからやけに距離が近い気がする..


「君もどこか怪我をしたのか?」


先生が来るまでやる事が無いので彼女に質問してみる


「ん?いんやー私はまぁ..サボりっすね」


「サボりかよ」


何か理由があって保健室にいるのかと思ったがどうやらそういう訳じゃ無さそうだ


「えー!だって学校の授業つまらないすもん..」


「だとしてもさ..」


「別に勉強なんかしなくても私にはやる事があるんで..」


「ん?」


そういうと彼女はスマホを取り出してマイチューブを開いたのだ


「最近は調子が良いんすよ とりあえず今日は勝ちなので」


「え?」


何か意味深なことを言いながら検索している彼女

そしてなんと彼女は昨日俺の投稿した動画を見だしたのだ


「な、何で..」


「あれ?先輩も見るんすか?『たかたかチャンネル』」


「え!?ま、まぁ..」


あからさまに動揺する俺..見るも何も俺なんだから それ


「私毎日チェックしてるんすよね..とにかく長年の目標だったので」


(さっきから何なんだ..)


たかたかチャンネルのリスナーなのは別に良い

だがさっきから『勝つ』だの『目標』だの..何かおかしいよな


「き、君の名前は?」


さっきから何もかもが分からない彼女動揺した俺はとりあえず名前を聞いてみる


「ん?私の名前?そういえば私まだ名前言って無かったすね..すんません」


「えっと..私関口灯せきぐちともりって言います

 学年は先輩の一個下の1年すね」


「そう言えば先輩は?」


「俺!?」


「そうっすよ私の名前だけ聞いといて不公平っすよ!」


「お、俺は鷹藤大地..普通の名前だよ」


「えー鷹藤ってカッコいいじゃないすか!

 私なんて関口っすよ!普通すぎてつまらないっす!」


「そ、そうか?」


彼女の言うかっこいいはよく分らんが鷹藤を褒められている事は分かる


「私あんまり苗字と名前が好きじゃ無いから呼ぶならあだ名で呼んで欲しいす!」


「あだ名?なんて呼べば良いんだ?」


「私中学校の頃も保健室に逃げてたんで..

みんなからドクちゃんって呼ばれてたんす!」


「へー..って!うん?」


その刹那彼女に感じていた違和感が爆発する


「お医者さんみたいだからドクターを文字って

 ドクちゃん!可愛く無いすか!?」


「ま、待てよ!」


「ぽ?」


「君もしかしてだけどさ..マイチューブで動画投稿とかしてる?」


『ドクちゃん』という名前には聞き覚えがある

今朝つばめが言っていたランキング1位の..


「ビンゴ!!そうです!私こそが彗星の如くマイチューブに降臨した

 ドクちゃんねるのドクちゃんなのです!」


(ま、まじかよ..)


ここ最近、世間は狭いなとつくづく感じる

たまたま保健室に行ったらそこにいた子が同業者だったなんて


「っていうか何で関口は料理系チャンネルをやってるんだ?」


彼女が身につけている白衣..それに保健室にいる事もあってどっちかというと

医療系のチャンネルぽさがあるのに..


「むぅ..関口はやめて下さいって!ダイちゃん先輩!」


「ちょっと!何だよその呼び方!」


「大地だからダイちゃんです!可愛いでしょ!」


「どこがだ!」


「えー!じゃあダイさん先輩で..」


「もうそれで良いよ..」


「それで私が料理系をやっている理由ですがズバリ料理の修行の為なんです!」


「修行?」


「実は私のパパがホテルのシェフなんです!だから私もいつかは立派なコックになる為..だからドクちゃんねるとして料理を追求している訳です!」


「だからこそたかたかチャンネルは私のライバルなんです!たとえ誰でも

 私は負けたく無いんす!」


「へ、へぇ..」


バレるとめんどくさいのであまり反応は出来ないが彼女の料理に対する熱は本物だ 喋った時は変わった子だと思っていたが実はしっかりと芯のある子なのかもしれない


「っていうか何で私のチャンネル知ってるんす?もしかしてファンとか?」


「それはその..前にマイチューブで見つけたんだ!最近人気の..」


「へぇ!じゃあチャンネル登録だけよろしくっす!」


「りょ、了解」


俺がドクちゃん..やっぱりこの呼び方恥ずかしいな..関口と喋っているとガラガラと保健室のドアが開く


「ただいまーってドクちゃん!?また勝手に白衣着ちゃって!」


「げっ..ごめんなさーい!」


(こいつ反省してないな)


適当に反応する関口となれた様に会話す保険の先生

どうやら帰ってきた様だ


「ん?ていうかあなたは?何年?」


「2年の鷹藤です」


関口と話していて忘れそうになっていたがそう言えば俺は擦り傷を治してもらう為に来たんだった


「ちょっと見せて..って擦り傷ね!これは消毒して絆創膏貼っときましょう」


そう言って先生は消毒で傷口を拭う

染み込んで痛いが関口がいる前で変な声は出したく無い


「よし!じゃああとは..」


「せんせーい私が代わりにやるっすよ!」


「もうドクちゃん!あなた次の授業は教室に帰るのよ!」


「ほいさー」


(やっぱこいつ適当だな..)


さっきまでは真面目っぽさもあるかと思ったが間違いに思えてきた


「じゃあダイさん失礼ー」


そういうと彼女は俺の手を掴んで傷口を見た


「ん?先輩もしや..料理とかされます?」


「え?何で分かるんだよ」


「へへそりゃ分かりますよぉ!料理人の手ですもんこれ!」


「料理人にとって手は命みたいなもんですからね無理は禁物ですよ先輩!」


「ぐぐぅ..」


関口に正論を言われて少し動揺してしまう


「そんな先輩にはジャジャーン!」


「ん?」


そうすると彼女はポケットから絆創膏を取り出したのだが

その柄はハートとドクロ?なんだこれ


「ドクちゃん特製の絆創膏ですよ!中学の時に好評だったのでいっぱい作ったんすよ!ほれドクちゃんだからドクロです!可愛いでしょ!」


「はいはい可愛い可愛い」


「思ってないくせに!」


適当にあしらうと関口はぷんぷんと頬を膨らませる


「まぁありがとなドクちゃん」


「..!まぁ良いって事よ!です!」


「何だよそれ!」


キンコーンカーンコーン


「むむどうやら授業も終わったみたいっすね」


「そうだなじゃあそろそろ行くわ」


「じゃあまたいつか!ダイさん先輩!」


「おう じゃあありがとうございました」


俺は保健室の先生と関口に軽くお辞儀してから教室に戻る


貼ってもらった絆創膏だが柄がかなり目立って恥ずかしいので絆創膏の部分を押さえて教室に戻る


そして放課後..


家に帰った俺はベットで関口に貼ってもらった絆創膏を見る


(まぁ今日くらいはいっか..)


剥がして普通のやつに変えようとも思ったがこれも何かの縁だと思い

今日くらいは貼ったままでも良いかと思った俺だった







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