第19話 意外な共通点
「うーん...さっぱり分からん...」
「ここはこの定理を使って解くんだよ」
「くう..ちゃんと授業聞いとけば良かったな..」
俺は今奏さんの家でテスト勉強をしている
普段授業中は基本寝ているため勉強はさっぱりだ
「そろそろ休憩にしようか ちょっと待っててね」
勉強を始めて約1時間 集中も切れ出してきた頃だ
奏さんはお菓子を持ってきてくれるらしく一回部屋を出た
「ふぅ疲れた..とりあえずここ抑えておけば大丈夫だよ」
「ああ..うん ありがとう..」
今俺が勉強しているのは奏さんの部屋だが落ち着かない
というより奏さんの家が凄すぎて内心驚きっぱなしだ
(入る前からめちゃくちゃ大きくてびっくりしたけど..
内装も何もかもが整っていて..何というか凄い!)
つい語彙力がなくなってしまうが彼女の家は全体から厳かな雰囲気が
漂っている これも彼女のお婆さんが茶道の先生と言うのもあるだろう
ただ俺が集中を切らしているのにはもう一つ理由がある
「もしかして鷹藤君 竹下くんとまことちゃんの事考えてる?」
「..!なんで分かるの!?」
立花さんに思わず考えていた事を当てられて驚いてしまう
「私鷹藤君と出会ってまだ1ヶ月くらいだけど
だんだん鷹藤君の事分かってきたかも..」
「す、凄いな..お見通しって事ね..」
「鷹藤君顔に出やすいからね まぁ私もまことちゃんの事は気になるけど..」
「立花さんも?」
「うん..私にとってまことちゃんもそれに竹下君も大切な友達だから..
2人が仲良く笑い合える様な..そんな風になって欲しいな..」
「立花さん..」
嘘偽りの無い真っ直ぐな眼..これも俺が立花さんに夢中になった一つだ
「あぁぁ...その!勿論鷹藤君も大切な友達だよ..!
『たかたかチャンネル』の事とか..それに料理の事だって!
これまで私が塞ぎ込んできた物を優しく受け入れてくれて..
凄く感謝しているの!」
「た、たちばなさん!?」
思わず彼女に「感謝している」なんて言われたら顔がゆでだこのように
赤くなってしまう..しかしこっちだって立花さんに感謝しているのだ
俺もその気持ちを伝えようと言葉を紡ぐ
「えっと..その..俺も..立花さんにはめちゃくちゃ感謝している..
俺今までは料理の事とかばっかで男子達以外に関わったりする
事が無かったからさ 立花さんと知り合えて..色々な人に会えて
そのありがとう..と思ってい...る」
自分で言ってて告白みたいで恥ずかしくなってくる..
ってあれ?これもしかしてこれ告白だと思われて無いか?
立花さんの顔も同じように赤くなっている
「あああ..えっとその!今のは「友達」として!」
「そ、そうだよね..わ、私も..ごめんね..」
言っててお互い恥ずかしくなってきた..
立花さんには少し申し訳ないと思うが臆病な俺は気持ちを伝えて失敗する事を
怖いと思っている..
だからこそこの気持ちを伝えるのはもう少し後..
その時には包み隠さず全てを伝えようと思う
ガラガラ..
「えっとー..その..」
「か、奏さん!?」
俺と立花さんが少し黙っていると顔を赤くした奏さんがお菓子を持って
部屋に戻ってきた
「もしかして今の会話..聞いてた?」
「仲良しなのはいい事だけど..もうちょっと別のところとかでさ..」
「「す、すみません..」」
あの恥ずかしい会話を聞かれていた事を知り
とてつもなく顔が赤くなる..穴があったら入りたい..
**
「へぇ...このお饅頭色々な魚の形になっているんだね..」
「では頂きます..」
奏さんはそういうと行儀良く口に運んだ
「うん..美味しい!」
「そう?良かった..」
「わざわざ私のために買ってきてくれてありがとうね!」
「いやいや!ゆきちゃんならきっと喜ぶかなって思って」
「それにしても奏さん 凄く上品というか..綺麗な食べ方だね..」
「そ、そう?まぁ小さい頃から先生..いや今はお婆ちゃんだね
おばあちゃんに習っているからついね..」
「奏さんのお婆さん..どんな人なんだろう..」
「確かに..私もお久しぶりにゆきちゃんのおばさんにご挨拶したいかも!」
「そ、そう?だったらちょっと呼んでくるから..ちょっと待っててね」
そういうと彼女はおばさんを呼びに部屋を出た
「立花さんは奏さんのお婆さんには会った事あるの?」
「うん 私は中学校がゆきちゃんとまことちゃんと一緒だったから..
よくゆきちゃんの家に行かせて貰っててね..
それで良くおばさんとも喋っていたの..」
「そうなんだ..おばさんはどんな人なの?」
「うーん..優しい人だよ!美人さんで..それにユーモアがあると言うか..
面白い人だよ!」
「面白い人?」
奏さんに小さい頃から礼儀作法を教えていると言う事は
凄く上品な人のイメージがあった だが面白いというのは
あんまり思い浮かばない..
そんな事を考えていると足音がし、部屋のドアが開いた
「どうもこんにちは」
「こんにちはおばさん お久しぶりです!」
「あら香澄ちゃん!!しばらく見ない間にべっぴんさんになって..」
「べ、べっぴんさん!?」
「そんな驚かなくても..香澄ちゃんはずっと可愛かったけど!」
「ちょっと!おばさん!恥ずかしいですって!」
(こ、これが奏さんのおばあさん..)
そこにいたのは美しい着物を着た女性だった
立花さんの言うとおりお婆さんには見えないほど美人で
厳かな雰囲気を身に纏った女性だった
「あら?こちらの人は?」
「こ、こんにちは!奏さんと立花さんと同じクラスの鷹藤大地と申します!」
「鷹藤さんね!それにしても由紀が男の人を連れて来るなんてさ..」
「ちょ、ちょっと!私と鷹藤君はそう言う関係じゃないから!」
「あら そうなの?」
「ははは..」
確かに立花さんの言うとおりユーモアのあると言うか..
グイグイ来るような感じではある..
「鷹藤君はね料理がすごく上手なんだよ」
「料理..そうなの!?」
料理という言葉に反応しておばさんは少し嬉しそうな表情になる
「鷹藤君も料理が好きって事はもしかして..」
「料理系のマイチューブとか見るの?『たかたかチャンネル』とか」
「...!!!!」
え?今奏さんのおばさん確かに『たかたかチャンネル』って言ったのか?
信じられないような言葉に思わず耳を疑う
「え...?おばさんももしかして『たかたかチャンネル』のファンなんですか!?」
「た、立花さん!?」
おばさんが『たかたかチャンネル』と言った途端立花さんが目をキラキラさせながら嬉しそうにしている
そういえば最近忘れそうになっていたが立花さんは俺の運営するチャンネルの
ファンだった..
「私も最近流石に衰えてきてね..昔のように時間を使う事が出来なくなっててね
何か良い暇つぶしというか..若者の文化というか..
そういうのが無いか由紀に聞いたらマイチューブを教えて貰ってね..
何気なく見始めたらハマってしまってね!...」
「な、なるほど..私も実は『たかたかチャンネル』にハマってて!
鷹藤君とも実は『たかたかチャンネル』がきっかけで仲良くなったんです!」
この話になった時の立花さんは凄い楽しそうに喋る
まぁそのチャンネル..俺のやつだけど..
立花さんの反応を見ると俺も嬉しくなってしまう
「かすみちゃんも『たかたかチャンネル』見てたんだ..その意外というか..」
取り乱して熱くなる立花さんに奏さんは少々驚きが隠せないようだ
そういえば立花さんは奏さんと夢美さんは料理系とかあんまり見ないって
言ってたっけか
「実は私..かなり好きなんだ..良かったらゆきちゃんも!」
「わ、私は..また見てみるよ..」
おそらくこれは見ないやつだろう
まぁ俺自身怒涛の展開に少し困惑しているがとりあえず奏さんのおばさんとも
仲良くなれそうで良かった
「じゃあ私もお邪魔になるだろしそろそろ行くかね..っておや?」
立花さんとそれから『たかたかチャンネル』について語り合っていた
おばあさんはしばらくすると一旦帰ろうとしていた
だがおばさんは俺たちの机の上に置いてあった饅頭を見てまた喋り出した
「これは饅頭かい?」
「は、はい!この前私たち水族館に行っててそれのお土産なんです!」
「あらあらそういう事はもう少し早く言っておくれよ
和菓子と一緒に頂くお茶が用意されていないじゃ無いか」
「そういえば..確かに..少しお茶が欲しいような..」
「昔から和菓子はお茶と共に楽しむ物なのさ..
少し待っててごらん せっかくだ私が入れてきてあげよう」
「え!おばさんがですか!?」
「なんだいそれは もしや私じゃ不満かい?」
「いや、そういう訳じゃなくて..」
何とお茶の先生であるおばさんが俺らの為にお茶入れてくれるらしい
これは絶好の機会だと思った
「その!もし良かったら僕にお茶を教えて貰えないですか!
昔から興味があって..こんな機会ですので..」
俺が興味を持っているのは料理を作ることだけでは無く
食文化全てである「茶道」も日本の伝統的な文化として昔から興味があった
だからこそこれは学びを深める為の..
俺の目指す「笑顔を与える料理」に近づく為の機会..そう感じた
「なるほど..私から教わりたいと..」
「分かった 由紀のお友達..それも同じ『たかたかチャンネル』を好き同士..
特別だからね.. 」
「あ、ありがとうございます!」
「さぁ..ほら香澄ちゃんも..由紀もだよ!着いてきなさい!」
「え..?私も良いんですか..?」
「勿論だよ..ほら行くよ..」
人生本当に予想のつかない出来事っていうのはあるわけで..
まさか奏さんのおばさんから直々に教えて貰えるとは思ってなかった
(楽しみだ..)
ワクワクを抑えきれないまま俺達はおばさんの部屋へ向かった
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