第17話 水族館デート?④

「...って事があったんだ 俺ほんと馬鹿だよな..」


「一番大事だった夢美を裏切って..本当に夢美の事を思ってるんだったら

 あの告白も断れたはずなのに..」


「竹下君..」


「俺、全部中途半端だよな..今だって俺から断ったはずなのに夢美の事を

 忘れられないんだ..本当は夢美に全部話したいのに..俺は臆病だ..」


「..!」


自分の気持ちを口に出せば出すほど自分を最低に思う

俺だってここのままじゃダメなことくらい分かっている

今付き合っている彼女とだって最近はあまり良好な関係を築けてない


「夢美は悪く無い..全部俺が..」


俺がそう言おうとした時目の前にいた立花さんが聞いた事もない大きな声で俺を呼ぶ


「竹下君!!」


「..!た、立花さん..!?ど、どうして泣いてるんだよ...」


目の前にいる立花さんは大粒の涙を流している


「これ以上..自分で自分を責めないで..自分を責めたって口に出さなきゃ何も変わらないと思う..」


「まことちゃんもきっと竹下君の本当の気持ちを聞きたいんだと思う

 じゃなきゃ竹下君とまた友達として関係を築こうとしないと思う..」


「立花さん...」


「私..これ以上2人の気持ちがすれ違うのを見たく無い..

 まことちゃんにとって竹下君はかけがえのない人だと思うから..」


「かけがえのない人..」


間違いなく俺が夢美と一緒に居たあの1年間はかけがえの無いものだったと思う

立花さんに言われて改めて気がついた


夢美は俺とやり直すため2年生になったあの日、勇気を出して俺に声をかけてくれたんだ..


「俺は...」


自分に言い訳してた『俺が悪い』そう思うだけで何も行動しなかったんだ..

立花さんだってわざわざ俺たちのために泣いてくれている..

きっと夢美だって心の中では泣いていたんだ..

俺はもう間違えたく無い そう思った


「俺は..!」


「夢美に謝りたい..!今までの気持ちを全部 そしてやり直したい!

 きっと自分勝手なことだと思う..元々は俺のエゴで起こった事だし..」


「でももう逃げたく無い!これ以上夢美を..傷つけたく無い...」


「竹下君..!」


「とりあえず今は大地達と合流したい それで..夢美と話してみるよ!」


覚悟が決まった途端胸が熱くなった気がした

これが俺の本当の気持ち..


「うん!そうだね!私..2人の味方だから!」


「ありがとう立花さん..」  


立花さんのおかげで自分の気持ちに正直になれた

とりあえず俺達は夢美達に会うため今回の水族館のメインイベントである

イルカショーの会場に行くことにした


-------- -------- -------- -------- -------- -------- -------- -------- -------- -------- -------- ------------


「...これが私と智紀の過去..」


夢美さんは同じ終わった後悲しそうな表情をしていた

そして少しぎこちなく笑って話す


「私..フラれた後も智紀のこと忘れられなくてさ...

 何とか関係を続けようとしてたんだけど..」


「私..重いよね.. 智紀はもう新しい人と新しい道を行こうとしているのに..」


「夢美さん..」


(あいつ..何やってんだよ..) 


智紀とは中学の頃から知り合って今では親友というか信頼している友達である

だけどこんな話あいつから聞いたことなかった

いや 言えなかったのか..


智紀は周りを気にするがあまり自分のことを塞ぎ込んでしまう事がある

だから今回のことも誰にも相談できなかったのだろう


(俺もあいつの力になりたい..このままじゃ2人にとっても苦しいだけだ..)


「夢美さん..俺やっぱり2人でもう一回話し合った方がいいと思うよ

夢美さんにとっては難しい事かも知れない..せっかく1から友達としての関係に

 戻ったのに..」


「それでも智紀が夢美さんを振ったのには絶対に何か理由があるはずなんだ..

ただ単に好きじゃ無くなったとかそんなんじゃ無いと思う」


「.. 確かに私もずっとモヤモヤしてたんだ..

 何で私を振ったあの時辛そうな表情をしていたのか..」


「やっぱり私も智樹と話がしたい..!でも..」


「確かに友達に戻ったとはいえ一回あんな事があった相手に理由を聞くのは辛いと思う..でも俺だって夢美さんや智紀の力になれる事があるなら協力したい!

 俺にとっては2人とも友達だから!」


「鷹藤君..!」


夢美さんとも勝手にだが今日1日一緒にいる中で友達という関係になれたと思う

そもそもこうやって遊ぶきっかけをくれたのも立花さんや智紀のおかげだ

だからこそ助けられてばかりじゃ無く自分も力になりたい..そう思った


「そっか..そうだよね.. 鷹藤君に相談できて色々とスッキリした!

 今までこんな事話した事がなかったからさ」


「私..智樹と話してみる! 少し怖いけど.. やってみるよ」


「ありがとう鷹藤君..!」


そう言う彼女の笑顔は今までのような悲しみが含まれた物じゃ無く

正真正銘真っ直ぐな笑顔だった


(良かった..)


俺がとりあえず安心していた時だった

夢美さんのカバンの中が光っている


「ん..何だろ..って そう言えばスマホ!」


夢美さんと話している時は気が付かなかったがそう言えば俺のスマホを夢美さんのモバイルバッテリーで充電したままだった

どうやら充電も回復したようだ

俺はすぐさま智紀に連絡を入れる


大地「すまん智紀!夢美さんのモバイルバッテリーで充電してたスマホが戻った

 今どこにいるんだ?」


智紀からはすぐに返信が来た


智紀「心配してたんだぞ!今はイルカショーの所にいる!

   てかもうすぐ始まるぞ!」


大地「え!?ち、ちょっと待て!」


スマホの時計を見ると時刻は15時28分 イルカショーの始まる2分前だった!


「色々あって忘れてたね..とりあえず今から向かおっか!」


「そ、そうだね 急ごう!」


俺と夢美さんは智紀達と約束していたイルカショーに向かう


**

「はぁはぁ..何とか間に合った!」


なんとか俺たちは1分ほどで会場の中に着く事が出来た

しかし会場は既に人がいっぱいだった

さらに会場にいる人たちはみんな透明な合羽かっぱを身につけている..


「これはまさか..」


「鷹藤君..そのまさかみたいだよ..」


俺たちが何かを察したと思ったら会場でアナウンスが流れ嫌な予感が的中した事を知る


「イルカショーへようこそ!今回のショーは当水族館開館50周年記念!

 会場を光が彩る特別なイルカショーです!

 ご注意として今回のショーはいつもより水しぶきが激しくなる恐れがあります

 当売店では500円にて防水の合羽を販売しております!

 必要な方は売店まで..」


「売店って..こんな人ごみの中どうやって..」


会場内は既に人でたくさんであるその中をかき分けて売店まで行くのはもう無理だ..


「鷹藤君!あそこ!」


俺が困惑していると夢美さんが俺の方をポンポンと叩き指を刺す

その方向を見ると..


「智紀!それに立花さん!」


逸れていた智紀達の姿があった

急いで俺たちは智紀達の所に向かう


「智紀!」


「大地!!お前間に合ったんだな!」


「何とか..それにしてもさっきのアナウンス聞いたか?」


「ああ でも俺達合羽なんて持ってないし..どうすんだこれ..」


俺たちが悩んでいると会場についていた明かりがそっと暗くなった


「もしかしてもう始まるのか!?」


「鷹藤君どうしよう..」


立花さんも不安そうに俺の方を向く

だが混乱している俺たちをよそにショーは始まる


「わぁ..綺麗..」


見ると一面がプラネタリウムのように綺麗な景色が広がっていた

アナウンスによる解説とイルカ達による様々な芸によって会場は次第に盛り上がっていく


その綺麗なショーに見惚れていた俺たちだったがついに最後のアナウンスが流れる


「フィナーレはイルカ達による大ジャンプです!

 水しぶきにご注意を!」


その掛け声に合わせイルカ達は宙を舞い最後の決め技を見せる


会場にいる人たちは皆合羽を用意し水しぶきを防ぐ

だが今の俺たちには防ぐ手段が無い..


その時横にいた智紀と目が合う

智紀の目は覚悟の決まったような目をしていた


(もしかして..)


俺は智紀が何をしようとしたか直感で分かった

智紀は夢美さんを水しぶきから守るつもりなんだ!


そしてイルカが水に着地した途端大量の水が俺たちにかかろうとする

俺はそっと立ち立花さんの前に行った


(間に合え..!!)


バシャン!!


「鷹藤君!?」


「と、智紀..!大丈夫!?」


「はぁはぁ..ハクション!!」


パチパチパチパチと会場には拍手が溢れていた

俺と智紀はそれぞれ夢美さんと立花さんを守るため盾となったのだ


「2人とも..!とりあえず拭かなきゃ!!」


そう言って立花さんはハンカチで拭いてくれる

同じように夢美さんも智紀を拭いている


「あ、ありがとう でも大丈夫!? びしょ濡れだよ..!」


「へーきへーき..は..ハクション!!」


「大丈夫じゃ無いじゃん!」


「うう..で、でも立花さんは濡れなくて良かった..」


「鷹藤君..」


俺は着ていた服もびしょ濡れになってしまったが立花さんに色々と心配されるのも悪く無い..むしろハンカチで拭いてもらえて嬉しい!最高だ!


「と、智紀..何で..」


その横では同じように夢美さんも智紀を拭いていた


「何でって..その謝りたかったから..夢美を守りたかったから!」


「謝りたい..?」


「うん..あの時何も話さず夢美を振っちゃったから..

 それに今まで怖くて..夢美と話すことからも逃げてたんだ..」


「でももう逃げたく無いって..そう思ったら自然と体が動いてたんだ..」


「智紀..」


「だからその夢美..」


「う..ぐす..うう..」


「夢美!?ど、どうしたんだよ..」


見ると夢美さんは泣いているようだやっと本心で智樹と話せるのが嬉しいのだろう


「私..ずっと聞きたかった..知りたかった..嬉しい..」


「夢美..ごめん..本当に俺..」


そうすると夢美さんは智紀にそっと抱きつく


「ゆ、夢美!?そのお前まで濡れちゃうから....!」


「ぐす..いいの..智紀のばかあ..!」


「ゆ、夢美..イテテテ..」


智紀は夢美さんにポカポカと叩かれているがまんざらでも無さそうだ

俺はその光景を見てふと胸が軽くなる


「「よ、良かったぁ..」」


「!?」


まさかの立花さんとハモる


「立花さん..その..知ってたの..?」


「う、うん..さっき竹下君から聞いたの..」


「お、俺もさっき夢見さんから色々聞いたんだ..とりあえず今はそっとしておこう」


それから10分程して我に帰ったのか智樹と夢美さんは顔を赤くしながら離れた


「夢美..その..」


「うん..」


「明日放課後2人でどっか行かないか?そこで全て話したいんだ..」


「智紀...!! うん!」


どうやら話す機会も出来たようで安心だ..


「それにしても鷹藤君も竹下君もこっからどうするの..びしょ濡れだけど..」


「げっ..確かに..」


忘れていたが智紀も俺もびしょ濡れである..どうすれば良いのか..


「ぷっ..それにしてもやっぱり2人って似ているよね..同時に立ち上がってさ..」


「やっぱり?やっぱりって何だよ!」


「いやだね!教えてあげないんだ!」


「夢美このぉ!」


「と、智紀!」


夢美さんの言うやっぱりとはさっきの迷子の時に言っていた俺と智紀は似ていると言う発言だろう しかし智紀は当然知るはずが無いので夢美さんに聞こうと

騒いでいる


「ふふ 2人とも楽しそう..」


「本当にね..良かったよ..」


やっぱり仲良くしている2人が一番だ

色々あったが仲直りできて良かった..


「じゃあさ!びしょ濡れになったから服を買いに4人でショッピングモールに

 行かない? 鷹藤君も私達がオシャレな服選んであげるよ!」


「ゆ、夢美サン!?」


「さんせー 大地の服ダサいしな..」


「ちょっと..!木下君!」


「何だと..智紀!!」


「た、鷹藤君まで!」


本当に色々あったが今日1日で夢美さん、立花さんとも親しくなれた気がする

その後4人で仲良く服を買いに行った俺たちだった..



















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