第16話 水族館デート?番外編 智樹と夢美の気持ち


私、夢美誠が初めて恋をしたのは小学校の時だった


そういえばあの時は自分の事僕って呼んでたな..

好きだったアニメのキャラクターが僕って言ってたからだっけ?

まぁ覚えてないや


「ほらまた泣き虫の誠がいるぞ!何で女子なのに俺たちと遊びたがるんだろ」


泣き虫の誠..私はそう呼ばれていた

いつも公園で誰にも仲間に入れてもらえなかったから


私の見た目?声?女なのに男の子の格好をしていたから?

思い当たる事はあるけどあの頃の私はただみんなと遊びたかった


ただ私はシール帳よりも人形よりも体を使って遊ぶのが好きだっただけ

だから友達が欲しかった 一緒に走り回って笑い合える友達..


「おい誠!ここは俺たちが使うからどけろよな!」


「ぐす..ご、ごめん!」


「そもそもお前女子だったら他のことで遊べよ!」


(うう..僕はただみんなと遊びたいだけなのに..)


「げっまた泣き出した!」


何で女子だったらダメなんだろう そう考えてた


「ほら!良い加減にしろよ!」


「うわっ..!」


私が当時公園を一番に仕切っていた男子に突き飛ばされた時だった

あの時私を助けてくれたのは知り合いでも何でもない見たこともない男子だった


「おい!」


「だ、誰だよお前!何だよ!」


「さっきから話聞いてたけど別に突き飛ばすことないだろ!

 仲良くすれば良いだろ!」


「だ、だってこいつ..女子なのに..」


「そんなの関係ないだろ!遊びたいやつが遊んだらダメなのか!?」


「うう..もういい!行こう!」


「どっか行った..」


「ふぅ..怖かった..けどもう大丈夫だぞ!!これで遊べるな!」


「あ、ありがとう..君はあんまり見たことないけど..」


「俺たち普段は違う公園で遊んでるんだけど今日は人がいっぱいだったから

 こっちに来てみたんだ!」


「そ、そうなんだ...助けてくれてありがとう それじゃあ..」


そう言って私がその場から出ようとした時だった


「え?君遊ばないの?」


「ぼ、僕友達いないから..」


「何だそんな事か!なら俺たちと遊ぼ!サッカーしよう!」


「え..!?いいの?ぼ、僕 女だよ..」


「何で女だったら一緒に遊んじゃダメなの?関係ないよ!」


「うう.. 」


彼の言葉を聞いた時私は涙が止まらなかった

今までこんな私を受け入れてくれる人なんかいなかったから


「な、なんで泣いてんだよ!どっか痛いのか?」


「痛くないよぉ..う、嬉しくて..」


「嬉しくて泣いてるのか!?というかお前名前なんて言うの?」


「ゆ、夢美誠..」


「夢美誠か!いい名前じゃん!」


「君はさ何で僕を助けてくれたの..?」


「何で助けたって?お前が泣いてたからさ!放って置けないよ!」


「っ..!」


あの時の気持ちは今でも覚えている いやあの時から私の気持ちは始まった


「人っていうのは泣くとさらに辛くなるんだぜ!だから泣いているやつを見ると

 笑わせてあげたくなるんだ!」


そう言って彼は手に持っていたサッカーボールでヘディングを始めた

彼のヘディングは下手っぴだったけど私を元気つけようとしている気がして自然と笑顔になった


「ふふ 何それ!」


「やっと笑ってくれたな!」


「え!?私そんなに笑ってた?」


「夢美!やっぱりそっちの表情の方が絶対可愛いぜ!」


「か、かわかわかわ 可愛い!? 僕が!?」


「そんなに驚くかよ」


これまで可愛いなんて言われた事無かったから酷くパニックになったのを覚えている そして嬉しかった 嬉しすぎて飛んでいきそうだった


「うう..からかうなよ..」


「ごめんごめん!まぁとりあえずサッカーしようぜ!」


「う、うん..でもその前に君の名前は..?」


「俺の名前..?俺は竹下智紀!!よろしくな夢美!」


「うん!智紀!」


あれが私と智紀の初めての出会いだった


それから半年くらい私はいつも放課後智紀達と遊んでいた

楽しくて楽しくてしょうがなかったな..

智紀はあの頃から周りをよく見ていて優しかった

だからこそ会うたび私は智紀に惹かれていったんだ


だけど中学生くらいから私達は急に会わなくなった

そりゃそうだ中学にも入って公園で遊ぶ方がおかしい


結局あの3年間私は一回も智紀に会わなかった

その間に私の見た目も少しずつ女性ぽくなっていって..

呼び方も僕から私になった

小学生の頃のイメージがある人なら分からないくらいイメチェンしたと思う


(智紀..会いたいな..)


あの3年間 私は彼の事を考えていた 今考えると重いな私..

だけど初めて私が好きになった人だ 

会いたいのは当然である


心の中では思ってた


(結局このままお互い忘れちゃうのかな..)


3年間の間に私は色々変わった

だからきっと智紀も色々変わっている..

この気持ちは胸の奥にしまって..新しい出会いを探そう..

高校では新たな出会いを探そう.. そう思っていた


思っていたのにさ.. 本当に私達は腐れ縁というか 何というか..


「○○中学校から来ました 竹下智紀っす

 好きな事はサッカーそれと..ぺ、ペンギン..」


「へー..ペンギンだって 可愛い!! それに竹下君めっちゃかっこいいよね!

 私狙っちゃおうかな.. って誠ちゃん..どうしたの?」


「と、智紀...」


私の目は智紀しか見てなかった ずっと会いたかった人が目の前にいる

私はその後 すぐに声をかけにいった


「と、智紀!!」


「ん? ってお前..!やっぱり!!」


「夢美だよな!! 久しぶり!まさか同じ高校になるなんてさ!」


「覚えててくれたんだ..あんま変わってないね」


「お前は変わりすぎな 一瞬誰か分かんなかったぜ」


「むぅ..」


「い、!いててて つねるなよ..!」


「智紀の馬鹿!忘れんな!」


3年間あったから色々変わったと思っていた

だけど目の前にいたのはあの頃のままの優しい目をした智紀だった


(良かった..)


それから1年間 私達はクラスの中ではずっと一緒だった


2人で一緒に学級委員長をしたりさ 放課後2人で遊びにいったり

周りからは付き合っていると思われていたらしいけど

特にお互い気にせず仲良くやってた


ただ一緒にいるのが楽しくて心地よかった

それは多分智紀も思っていてくれたと思う


だから1年も終わりの3学期私は智紀に告白したんだ

私は智紀と一緒に居たかったから..

その時の私は絶対に付き合えると疑っていなかった

あんなに仲良くしてたから..


だけどそんな私に告げられたのは認めたくない現実..


「ごめん」


「え?」


「俺さ丁度1週間くらい前に告白されてさ..付き合ったんだ..」


「だから..その..ごめん」


頭が真っ白になるというのはあの時の事をいうと思う

何も考えられなかった..


「そっか..」


「ごめんね私こそ 勘違いしちゃってたのかな はは..」


「ごめん..で、でもそのもし良かったら今までみたいに友達として..」


「友達..」


智紀から言われた「友達」 私は結局それ以上になれなかったみたいだ


「..そうだね 友達として..」


それから結局1年が終わるまで私達は一度も喋らなかった


「はは.. もういっか..」


そして私は智紀の連絡先を消した 毎日毎日くだらない事も話してた思い出でいっぱいのLoinを消した


振られた時の事を思い出したく無かった

だけど私の頭から離れない

あの時の智紀の悲しそうな..何か言いたそうな顔..


「忘れられないよ..」


忘れれるわけがない

でもこれ以上引きずってたってもう無理だと思った


だから2年からはきっと別々になる

そしたら智紀の未練も忘れられる そう思ってたけど..


(本当に..酷いなぁ..)


まさかの2年生も智樹と同じクラスになってしまった


2年生になってクラスに入るとあの智紀がいた

気まずいとは思っている 当然だ


でも私はこれ以上耐えきれなかった 

お互い言いたい事も思うようにいえずに 別れちゃったから..


私はわがままな女だ だから進学1日目の放課後私は智紀を呼び出した


「何だよ..夢美..」


「いきなり呼び出しちゃってごめんね..こうやって話すのも2ヶ月ぶり?」


「..そうだな それで用件は?」


私は本当に酷いと思う 智紀には彼女がいるのに..

それでも私は智紀と一緒に居たかった たとえ恋人は無理でも..


「私達友達にならない?」


「え?」


「このままだとお互いしんどいだけだから..前みたい..とはいかないけど

 普通に話すくらい良いんじゃないかな?」


これが私と智紀の関係だ


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「ごめん」


「え?」


あの時の俺はどんな顔をしていたんだろう


多分酷い顔だったと思う 泣き出しそうな..


いや一番泣きたいのは夢美の方だ..

俺が中途半端だから...


俺、竹下智紀は高校1年生の時まさかの出会いをした 


「どうも!夢美誠です!」


(夢美って..あの夢美だよな!)


誰かは一瞬でわかった 随分変わっていたとはいえ忘れるわけが無かった


それはあっちも一緒だったみたいで夢美を俺を覚えていてくれた


前とはガラリと雰囲気が違うがそれでも俺は久しぶりに会えたからか

嬉しかった 今思えばあの時俺は夢美誠を好きだった


その気持ちは一瞬のものでは無かった

大地達に見つかると恥ずかしいからコソコソだけど俺は夢美と一緒に過ごす事が多かった 一緒にいる度にその居心地の良さを感じていた


本音は言えば俺は夢美と居たかった.. なのに..


「竹下智紀さん 私は貴方が大好きです! だからお付き合いしてください!」


「え..」


俺は夢美に告白される1週間前別の女子に告白された


告白してきた人は同じクラスの子だった

告白された時はびっくりしたが俺の気持ちは決まっていた


「ごめんね 俺別に好きな人が居るんだ だから..」


一緒にいて改めて感じた 俺は夢美が好きだ

だからこそこの子とは付き合えない


俺はしっかりと彼女に伝えた そして彼女もわかってくれると思っていた だが..


「な、なんで!何でですか!」


「え?」


「お、お願いします!何でもしますから!」


「な、何でもって言われても..」


「お、お願いします..私竹下君にフラれたら..もう..」


そういうと彼女は泣きながら俺に縋るように頼んできた


(ど、どうすれば良いんだ..)


彼女はフラれたのが相当ショックだったのか泣き止まない


「お、お願いです..」


「何でそんなに..」


何で彼女がそんなに俺に固執するのかわからなかった

だがこのままといってもらちが開かない

悩んだ末に俺は言ってしまったのだ


「..! もう!分かった!付き合うから!」


泣いている彼女を放っておく事ができず告白を受けてしまった


あの時の俺は1週間ほど付き合ってから俺から振って別れるつもりだった

しかし彼女は彼女で全然了承して貰えず困り切っていた


そんな時だった.. 俺が夢美に告白されたのは


「付き合ってください」


真っ直ぐな目で俺を見つめる夢美 俺はそんな彼女の目を見れなかった


(どうして..今なんだ..)


本当は夢美の告白を受けたかった

だがどうしようもない俺には彼女がいる

本当に辛いが俺はその告白を断るしか無かった


「ごめん」


これがどうしようもない俺の過去だ






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