第15話 水族館デート?③

「うーん..こうなると智紀しか連絡が取れないな..」


現状を説明しよう 今俺と夢美さんは立花さんと智紀と逸れた

そして俺のスマホはバッテリー切れ、立花さんのスマホは色々あって

夢美さんが持っている


「夢美さんは智紀の連絡先知ってる?」


智紀と夢美さんは高1の頃から交流があるみたいなので

智紀の連絡先くらい持っていてもおかしく無い


「えーっと..」


彼女は少し考えてから話し出した


「私知らないんだ..」


「そ、そうなんだ..」


智紀の話になると夢美さんは少しよそよそしくなる

やっぱり俺が知らない間に智紀と夢美さんの間で色々あったのか


「ま、まぁとりあえず連絡できるように

俺のスマホを充電させてもらって良い?」


「うん ほれ」


立花さんには悪いが今は連絡することが一番だ

立花さんのスマホを一回外して俺のスマホを夢美さんのモバイルバッテリーで

充電する


「とりあえずペンギンコーナーに向かう?かすみんたちも多分そこに行くんじゃ無いかな」


立花さん達とは連絡が取れないがレストランで次はペンギンを見に行こうって

相談してたしペンギンコーナーにいる可能性が高いだろう


「そうだね じゃあ行こう..」


俺たちがお土産コーナーから出ようとした時だった


「ちょっと待って!あそこ!」


「え?どうしたの」


夢美さんが奥の柱を指差して言う


「あれって迷子じゃ無い?あの子も私たちみたいに逸れたのかも」


そこに居たのはつばめくらいか..いやもう少し小さい少女だった

家族と別れてしまったのか泣いているようだ


「ひっく..ひっく..パパ..ママ..」


「鷹藤君行こう!まずはあの子を何とかしなきゃ!」


「ちょ、ちょっと!」


夢美さんは少女の方に走って行ってしまった

確かにあんなに小さい子を放っておく事も出来ない


「君大丈夫!?お母さんは!?」


「ぐす..パパもママもどっか行っちゃった..私がわがまま言ったから..」


「わがまま?何かあったの?」


「うん.. ぐす..ぐす.. うう..」


「ちょっと だ、大丈夫!?」


「うぅ..うわーん!」


「ど、どうしよう 泣いちゃった! 鷹藤君!」


俺は泣き出した彼女をどうにかするため色々やってみる だが..


「全然泣き止んでくれない..」


泣き止むどころかさらに酷くなっていく状況


「うーん.. そうだ!」


**


「凄い..!おねぇちゃん!お魚さんキラキラしてる!」


「ふふ そうだね 鷹藤君これはなんて言う魚なの?」


「ゆ、夢美さん俺だって魚について何でも知っているわけじゃ無いんですけど..」


「そりゃそうか まぁとりあえず泣き止んでくれて良かったよ」


俺たちは少女をお土産コーナー近くの水槽コーナーに連れてきた


「昔に妹でも同じような事があってさ..それで思いついたんだ」


実は昔家族で水族館に来た時もつばめと俺が迷子になった事がある

その時も泣いているつばめに水槽の魚を見せた途端泣き止んだんだ


「それで君はお母さん達と逸れちゃったの?」


「う、うん そうなの さっきね..」


「私今日お兄ちゃんと一緒に来たの..

それで私お兄ちゃんと喧嘩しちゃったの..

私はまだお魚さん達見たかったのにお兄ちゃんはペンギンさんを見たいって..」


「お兄ちゃんと喧嘩してたら向こうから急にバァーって人が来て..」


「それで逸れちゃったんだね..」


どうやら話を聞く感じ俺たちがトイレに行っている間に

お土産コーナーあたりに人が集まり少女の家族や

立花さん達はその流れに巻き込まれたみたいだ


屋外のペンギンコーナーに行くにはお土産コーナーのすぐ近くのドアから

出ないといけない それで人が集まったみたいだ


「私のせいだ..私がお兄ちゃんの言う事聞いてたら..」


彼女がまた泣き出しそうになる


「べ、別に君1人のせいって訳じゃないんじゃ無いかな?

 逸れちゃったのもたまたま人が集まっただけだし..」


「ううん..私 お兄ちゃんに酷い事言っちゃったの!

 嫌いって.. 分からずやって!」


彼女は自分のせいで逸れてしまったとばかり思ってしまっている

それに兄を傷つけたのも全部自分のせいって..


「ふふ..」


つい昔の事を思い出して笑ってしまう

昔つばめと喧嘩した時の事を..


「お兄ちゃん?」


俺は少女と目線を合わせるために膝を曲げる


「君は優しいんだね」


「違う..私が..私が..」


「君はさっきお兄ちゃんに酷い事言っちゃったって言ってたけどさ

 そんなこと言われたくらいでお兄ちゃんは君の事嫌いになったりしないよ」


「俺もお兄ちゃんだから分かるんだ」


「そ、そうなの!」


「うん 君よりもう少し年上の妹がいてさ

 俺も昔喧嘩しちゃった事があるんだけど..」


「あの時なんか君が言ったことよりもっと酷い事言われたんだよ

 でも俺は酷いとは思わなかったし嫌いにもならなかったよ」


「どうして?」


「妹を泣かしちゃった自分の方が酷いって思ったんだ

 大切な妹に酷い事言っちゃったから」


「だから悪いの君だけじゃ無い

 君のお兄ちゃんもきっと謝りたいって思っているよ」


「そう、そうなのかな..」


「だから泣かないで良い 泣いたら幸せが逃げちゃうよ?」


「っ..!」


俺がそう言うと少女は何かに気づいたようにグッと手を握った


「私..お兄ちゃんに謝りたい!ごめんねって!仲直りしたい!」


そう言う彼女はもう泣かなかった

先ほどとは違うキリッとした表情になっている


「やっぱり.. 泣いているよりその表情の方が可愛いよ」


「..その表情の方が可愛いか..」


『夢美!やっぱりそっちの表情の方が絶対可愛いぜ!』


「智紀...」


「夢美さん..?」


夢美さんの方を見るとどうやらぼーっとしている


「..!ご、ごめん!ちょっと私も昔の事思い出してさ!き、気にしないでよ!」


「そ、そう..?それなら良いんだけど..」


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一方その頃智紀たちは..


「...だめだ 大地のスマホ繋がらない..やっぱ充電切れてんだよ」


「うう...私がまことちゃんにスマホ預けたままにしちゃったから..」


「別に誰が悪いとかじゃ無いよ くぅどうすんだよ..」


今俺と立花さんは2人でペンペンコーナーにいる

と言うのもさっき大地と夢美がトイレに行っている間に

大量の人の流れに巻き込まれちまった..


「お土産コーナーに一回戻ったものの..あいつら居ないし..

 ペンペンコーナーにも来ない..どうしちまったんだ?」


「うう..木下君はまことちゃんの連絡先とか分かる?」


「...いや 知らない..と言うか消したんだ..夢美の連絡先..」


「えっ.. わ、私 また!ごめんね! 本当に..」


立花さんはまずい事を聞いてしまったと思ったのか

さっきのレストランの時の様に謝ってくる


「いや..良いんだ と言うか俺の方こそごめん

 立花さんも大地も俺たちの関係の事言ってないからさ..」


(そりゃそうだよな..2人が困惑するのも..)


俺と夢美の事は大地どころか誰にも話した事が無い

おそらく夢美も..


(だとしても流石に気になるよな..)


きっと立花さんも大地も気にしてくれている..

このまま2人に気を使わせるのも申し訳ない気がする


「えっとさ今からいう事は夢美にも許可とかもらってないけど..

 このまま黙ったままにするのも限界の気がするから話すよ」


「ほ、本当..!? 私絶対人に言わないから!」


「実はさ 俺と夢美があったのは高校が初めてじゃ無いんだ」


「えっ!?そうなの?高校1年生で同じクラスだったからじゃなくて?」


「話せば長くなるんだけど....」


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大地達に話は戻る


「とりあえずここにくれば..」


俺と夢美さんは少女と一緒に水族館の迷子センターに来た


「ふぅ..お兄ちゃん..」


「大丈夫だよ!君くらい可愛かったらお兄ちゃんもメロメロじゃ無い?」


「か、かわ..!」


「そういう反応が可愛い!」



移動中も夢美さんは彼女を気遣って色々話していた

彼女は面倒見が良いみたいだ


「じゃあ2人とも..」


そうして俺たちは迷子センターの中に入って行った

中には少女の家族と思われる人たちがいた


「...はな!!」


「お兄ちゃん!!パパ、ママ!!」


「良かった.. 本当にありがとうございます..」


「いえいえ!普通のことをしたまでですから!」


というか少女の名前は華ちゃんと言うらしい

そういえば聞くの忘れてたな


「お兄ちゃん..私、私..ごめんなさい!」


「なんでだよ!俺の方こそごめん!酷い事言っちゃった!

 俺ずっと心配で心配で..」


どうやら華ちゃん達は仲直り出来たようで良かった


「2人とも!連れてきてくれたお兄さんとお姉さんにお礼を..」


「いやいやお礼だなんて..」


彼女の母親がそう言うと2人がこっちにやってきた


「お兄さん!お姉さん!華を助けてくれてありがとうございます!」


「お兄ちゃん..お姉ちゃん..ありがとう!」


「仲直り出来て良かった 2人とももう喧嘩するなよ?」


「「はーい!!」」


「じゃあそろそろ俺たち行きます」


「じゃあね!お兄ちゃん!お姉ちゃん!」


そうして迷子センターを出た俺たちだった


「ふぅとりあえず見つかって良かったよ..」


「ふふ鷹藤君かっこ良かったよ?」


「かっこいいって..別に普通の事だよ..

ただ泣いている子を放って置けないだけだから..」


「..!!」


『何で助けたって?お前が泣いてたからさ!放って置けないよ!』


「ゆ、夢美さん..!!大丈夫?」


さっきも俺が言ったことに反応して急にぼーっとなっていた

そして今回も..


「いや..あはは その、何と言うかさ..鷹藤君って智紀に似ているよね..

 発言とか色々..」


「と、智紀!?何で今智紀が!?」


俺が智紀に似ているなんて初めて言われた..

そもそも俺と智紀は何もかも反対だ


それに今智紀が出てくるのは何かあるのか..


「そ、そのさ..さっきのレストランの時もだけどさ

 1年生の頃に智樹と何かあったの?聞いて良いか分からないけど..」


俺はつい気になって聞いてしまった..

本当はプライベートの事だからあまり触れない方が良いのだろうが

流石に気になる


「..そうだよね..さっきから私たちの様子..色々おかしいもんね..」


彼女は少し考えるように顔に指を当てる

しばらくして喋り出す


「..うん 鷹藤君にならいっか!色々迷惑かけちゃったし!」


「これから言う事を他の人..っていってもかすみんには私から言うから

 それ以外の人に言わないって約束できる?」


そんなこと決まっている 


「もちろん!」


「えっとね..まずは..」


そう言って彼女は話し始めた..





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